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「種明かしをするわけにはいかないので、ここではただ、この本を書いているあいだ、感じやすい(sensitiveである)とはどういうことかについてたくさん考えていた、とだけいっておきましょう」――エイミー・ベンダー
9歳の誕生日、母がはりきって作ってくれたレモンケーキを一切れ食べた瞬間、ローズは説明のつかない奇妙な味を感じた。不在、飢え、渦、空しさ。それは認めたくない母の感情、母の内側にあるもの。
以来、食べるとそれを作った人の感情がたちまち分かる能力を得たローズ。魔法のような、けれど恐ろしくもあるその才能を誰にも言うことなく――中学生の兄ジョゼフとそのただ一人の友人、ジョージを除いて――ローズは成長してゆく。母の秘密に気づき、父の無関心さを知り、兄が世界から遠ざかってゆくような危うさを感じながら。
やがて兄の失踪をきっかけに、ローズは自分の忌々しい才能の秘密を知ることになる。家族を結び付ける、予想外の、世界が揺らいでしまうような秘密を。
生のひりつくような痛みと美しさを描く、愛と喪失と希望の物語。
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Posted by ブクログ
エイミー・ベンダーは、はっとするような言葉で読者を引き寄せたりしない。訥々と単純な言葉を重ねてゆく。けれどもその言葉の組み合わせが穏やかではないので、とても非日常的な物語が展開する。しかしそれもよくよく眺めてみれば、誰にでもある小さな違和感を少しだけ別の出来事のように描いてみせるだけなのだ。決して大袈裟に言ったりしないだけで。
sensitiveとtoo sensitiveの間のどこに線を引けばよいのか、という問い掛けが日本の読者に向けた作家の文章の中に出て来る。恐らくその疑問に対する物語であることが本書の全てであり、結果として、自分を取り巻く世界に対して生まれて初めて抱いた違和感が、実はまだ身体の中に記憶として残っていることを、読み進める内に気付かされることになる。もちろん本書の主人公のように、皆その違和感を、例えばピーマンが食べられるようになるように飲み込み、気にしないようにすることを覚えてゆく。それがsensibleであると、自分を取り巻く社会が要求していることに従うことを受け入れるのだ。たとえそれを善しとしなくとも。
違和感に共感するという自家撞着。けれども鬼束ちひろの言葉に耳を傾けたり、エイミー・ベンダーの文章に身を寄せたりする人がいるという事は、それが誰にでもある違和感だと言うことを示している。岡崎京子の言葉にあるように『ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね』。あるいは、忘れたフリをしてしまうね。
Posted by ブクログ
面白かったです。エイミー・ベンダーの本を読むのは久しぶりでした。
料理を食べると、作った人の感情が解ってしまう力を持つローズが哀しくも、でも料理に携わって生きていこうとする光を感じました。
彼女の家族もつらくて…ローズの兄のジョゼフは世界を手離して、椅子になってしまうのでしょうか。そこがよくわからなかったのですが、この作者さんらしい不思議さでした。
空気を読む、とかのレベルでなく、人の感情が解ってしまうというのは大変な能力です…人の秘密や、知りたく無いことまで知ってしまう、というのは悲劇です。
それでも絶望せず、最後は進む道を獲得するローズが眩しかったです。ローズの能力を知っている、ジョゼフの友人のジョージが良い人だったというのもありますが、ローズ自身の力も大きいのではないかと思いました。
アメリカの料理は美味しそうだというより大柄だなと思っていたのですが、ローズが働くカフェの料理は優しく美味しそうでした。
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