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国際的評価がありながら、刊行する小説はすべてベストセラーになるというまれな作家、村上春樹。デビュー作から最新作までを、巨大な網の目状のアーカイブとして読み解き、作品の魅力と秘密をさぐる。文庫化に際して2作品を増補。
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Posted by ブクログ
村上春樹のもやっとした小説を読み解く評論集。わかったようでわからないのに何故か世界で読まれる村上春樹。小説内のパズルとなぞかけの解説として楽しめた。
村上春樹の小説を紹介しつつ、その魅力を語った本です。なお文庫化に際して、『1Q84』と『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』にかんする章が増補されています。 最初にとりあげられているのは、オウム真理教が引き起こした事件のルポである『アンダーグラウンド』と『約束された場所で』です。著者はこの作...続きを読む品を、村上春樹の「ターニング・ポイント」と位置づけています。『アンダーグラウンド』は、識者による公的な言語で埋めつくされるなかで、かえって孤独になっていく被害者一人ひとりの声に耳を傾けようとする努力として理解されます。また著者は、『約束された場所で』で村上がインタビューをおこなった信者たちの孤独は、語られる前にすでにレディ・メイドの小説のように物語化されてしまっていたのだと述べています。そして、この二つの作品が「合わせ鏡」としての役割を果たすことで、村上はもう一度、日本に暮らす人びとのリアルな日常に触れたいという願望を取り戻したのではないかと論じられています。 本書は、この村上の「ターニング・ポイント」以後の作品解説を第1部、それ以前の作品解説を第2部に置くことで、その違いを際立たせています。そして、この「ターニング・ポイント」をまたいで書き継がれた『ねじまき鳥クロニクル』は、心の迷宮世界への通路である「井戸」を降りていくヴェクトルと、その反対に井戸から抜け出して名も知らぬ人びとの生活する現実へと向かうヴェクトルの交錯を読み取っています。 著者は、「デタッチメント」から「コミットメント」へという、村上作品について言及されることの多い枠組みを踏まえつつも、作品相互のゆるやかなつながりについて、柔軟な立場から読み解こうと試みているのが印象的でした。作品ごとの解説なので、全体を通じての主題が見えにくいのがすこし残念でしたが、なるほど村上作品はそのように読むのかと感心させられたところも少なくなかったように思います。
内容(「BOOK」データベースより) 今や世界中の読者が最新作を待ち望んでいるハルキ作品。繰り返し現れる「闇の力」、「鼠」や「羊男」は何を意味するのか。作品にちりばめられた謎とつながりを読み解けば、もっと深く読むことができる!文庫化に際し、最新長編『1Q84』『多崎つくる~』の項を大幅加筆。
村上春樹の魅力を「象徴・穏喩」として、聖書の世界に似ているとする。そして読者は前後作品に謎解きを求めて読みたくなることから嵌っていく!著者の経験だそうだが、私自身を振返っても実に的確な表現である。春樹が死の翳が漂う孤独な人物を描く例が多く、自殺していく人物も多く出てくるが、春樹自身はそのような人生と...続きを読むは遠かった!不思議な現象である。多く出てくるセックスの場面が性欲のために魂を汚す罪となる、ある倫理と形而上学を常に付与されているとの表現もよく分る。全共闘世代が、若いころの挫折と絶望を重ね合わせて春樹を読むということがそれ故にこそ行われているのだと思う。 アウグスチヌスの「三位一体論」から引用されている(P62)言葉が、春樹の宗教性を援用しているように思える。「われわれを訓練するために、神のことばは、直接に理解できる思想ではなく、心の底で探求し、内奥から引き出すべき神秘を、われわれに提示している。そのようにして神のことばはわれわれに、より情熱的な探究を強いるのである。」 春樹が日本の文壇ジャーナリズムを離れ、海外に移住したという冒険の特異性は今まで気づかなかったこと。
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増補版 村上春樹はくせになる
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清水良典
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