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Posted by ブクログ
矛盾に満ちた自己との闘いの記録、というべきか。男に主体性を奪われた自分と、それに肯定的な自分が同居している、矛盾に満ち満ちた自己の内面。普通なら自己の一貫性を保ちつつ社会に適応していくが、中村うさぎ、そして東電OLは、肥大化していく「隠蔽した自己」と意識的にせよ無意識にせよ、付き合わずにはいれなかったのだろう。
思うに、男は自分を否定されることに女以上に怯えている。社会的地位、それに付随するプライド、権威、男としての価値…それらを失いたくないが故に「逆ギレ他罰(p116)」して自己正当化に走る(男女の世界だけではなく、会社などの組織でも起こりそうなことだ)。中村うさぎは本書を女たちに読んでほしいというが、そんな思考停止に陥った男性こそ読むべきだろう。無論、理解のキャパシティがあるかは別問題ではあるが。
Posted by ブクログ
色もの、キワモノと侮ったら大怪我します。
「私」という病とは、「病んでいる私」なんかじゃなくて、全ての女性存在(オカマ含む)の根源的苦悩のことを「やまい」と称しているふかい深い一冊である。
証拠に一部引用します。
「私は、女たちが好きだ。たったひとりで頑張って働く女も、主婦という孤独な立場で必死に踏ん張っている女も、道に迷ってへたり込み絶望している女も、泳ぎ続けてないと死んでしまう魚みたいに暴走し続ける女も、すべての女が私だから。私は、私を救いたいのよ。だから、彼女たちに向かって語り続けるのよ」
デリヘル嬢としてほんとうに十人ばかりの男の客の相手をしてみた彼女のことを、北野武はそこまでやったら「作家のやることじゃねえ」と言ったそうだが、タケシさんともあろう人が読みもしないで批判するのは止めてもらいたいものだ。
金めあてのホストからしか相手にしてもらえなくなった口惜しさから始まって、こちらの拒絶にもかかわらず若かった頃の自分を勝手に欲望のはけ口にしやがった、痴漢野郎やセクハラおやじへの怨念。女であることの苦悩とおんなとして認められなくなってしまったことの口惜しさ。見ず知らずの男たちの欲望に応えて金を払わせるという、傍目には暴挙に見える挑戦に走ったのは、その精神分裂的とさえいえる自己内の懊悩であっただろう。それは、一人中村うさぎの懊悩に止まらず、全ての女性存在が内包する矛盾する深層心理でもある。だからこそ、東電OL事件の被害者女性について、類例のない徹底的に透徹した、それこそ彼女以外では絶対に書き得ない一文で本書は締めくくられている。そしてまた、中村うさぎが身を挺した暴挙を通して告発した、コンプレックスと差別意識とは、女の敵であるだけではない。彼女が意図したフェミニズムの枠を超えて、男にとっても仇であるのだ。
自らの深すぎる苦悩から始まって、全女性の深層の矛盾を突き、男女の枠さえ超えた根源的な人間の醜ささえ抉る。こういうのを「作家」の営為と言わずして、他になんと言えるだろうか。
中村うさぎは、作家に他ならず『私という病』は名著である。声を大にして私はそういう。
Posted by ブクログ
作家、中村うさぎが新宿は歌舞伎町にある熟女ヘルスにて実際にデリヘル嬢として働いた経験を通して描き出される女としての相反する欲望。読み終えたあとに深くて暗い闇のそこを除き見たような感覚が致しました。
ずっと読もう読もうと思って、ツイッター上でも筆者本人に読むと約束して結局読むのが遅くなってしまいました。
「どうして私は、女であることを、おおらかに正々堂々と楽しめないのか」―
という疑問の果てに彼女がたどり着いた場所は、新宿歌舞伎町のとある熟女ヘルス。
そこでデリヘル嬢「叶恭子」として三日間働き、ここで感じたことと、
「自分はなぜ、女としての性を楽しむことができないのか?」
という自らのみをえぐるような考察と、最後のほうに出てくる東電OLについての考察が記されていて、読んだあとに女性の深遠を覗き見たような気がして「なるほどなぁ」と思うのと、彼女の男に対する考察があまりにも鋭かったので、そこについてはウーンと考え込んでいる自分がいました。
あとがきにもありますが作家の永江朗さんにインタビューを受けたときに
「うさぎさん、この本を読んで思ったんですが、それじゃあ男はどうすればいいんですか」
という質問を本人にしたくなりました。いや、実際にはできるのですが、彼女から返ってくる答えはおそらくこうだと思います。
「さぁね、そんなの自分で考えたら?」
と言う答えが確実に帰ってくるので女性というものについてじっくり考えてみることにします。
そして、彼女が東電OLについて書いているのは彼女ならではの切り口で、彼女が派手な化粧をしていたのは「コスプレ」なんだと。別な自分になることで夜の街に街娼として立って、行きずりの男と大胆なことができたのではないかと。それについてはなるほどなぁと思いました。僕も彼女のことを大学時代に知って以来、個人的にずっと追い続けているものなので。
男にとっては耳の痛い話がてんこ盛りですが、「女」という向こう岸の存在を少しでも理解するためには読んでいて損はない文献だと思います。
Posted by ブクログ
壮絶。壮絶すぎてすぐに感想が書けなかった。中村うさぎが自分の女性としての価値を確認したくてデリヘル嬢として風俗店で働くところから始まる。単なる風俗体験記ではなく、そこで見つめた自分のはらわたまで引きずり出して著述している。作家とはこうまで曝け出すのか、と戦慄すら覚えた。性的強者であった女性が加齢などのさまざまな理由から性的弱者になっていくという分析・視点には説得力があり、それを受け入れたくない様を赤裸々に教えてくれてる。読んでいて心が痛くなる。マチズモに関する考察や指摘も沢山含まれていて今の俺の興味に相応しい一冊でもあったと思う。どんな文脈で出てきたのか忘れたが、「大人になるとは親を人間だと認めること」と言うのも強く共感するし、大変印象深い。まさかラストで東電OLが出てくるとは思わなかったけど、あくまで彼女の想像の範囲とわかってはいるが、男側からはとても想像がつかない破滅願望とも呼べるような露悪の持つ優越感などの魅力についても深い洞察があった。凄まじい本だった。
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