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Posted by ブクログ
Chapter 3に出てくる理系のスエマツさんのレポートに、吹き出しました。森博嗣の本を読んでいて、くすっと笑ったり、ほほうと唸らされたり、ああと悶えたりすることは多々あっても、げらげら笑うことは少ないので、貴重な体験をさせていただきました。ああ、面白かった。なんなら、今でも思い出してにやけてしまいます。
楽しそうにこれまでの既存をばきばきと破壊、再構築していく森博嗣の本のあとに、筒井康隆の解説が入ってくるのがにくい。筒井康隆があまりふざけていないのも、これまたにくい。
粋な本です。
奇をてらった(などというと、また誤解を生みそうですが)森の中に、きらきらと輝く木が数本あって、それを意図的に見せてくれる。そんな印象を受けました。本当は、その輝く木を自分自身で見つけられれば良いのでしょうけど、森博嗣の優しさで、ガイドされているのかなとも思います。こっちだよと連れていかれて、しばしその美しさに息を呑み、その感動を伝えようと振り返ると、もういない。ひとりぼっちにされたのに、さみしくはない。
これから、彼はどこへ向かうのでしょうか。そして、向かった先の風景を、またこうして少しだけ見せてくれるのでしょうか。
Posted by ブクログ
単行本が出版された時に、手に取って迷った末に買わなかったこの本『実験的経験 Experimental experience』が、文庫版で出たので購入。
本のジャンルを設定することに意味を感じなくなる本で、読めば読むほどタイトルの意味が身にしみる。
人に勧めるかと言ったら・・・勧めないけども、読んで楽しめたのは間違いない。
逆説的に提示される文章の構造や小説の形態の定義みたいなものを確認できた。
こんだけ縛られた条件で小説を読んでいたんだと痛感。
あとね、回収されない駄洒落があるんだけども、もしかしたら回収可能かもと思うと面白い。
ちりばめられた駄洒落の解釈が今後もネットで話題になるかもしれない(一部ファンの間で)。
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【内容(「BOOK」データベースより)】
小説であり、小説でない。ミステリィでもエッセィでも詩でもない。創作の可能性を無限に広げる、奇才・森博嗣の新たな境地がここにある。究極の読書体験が味わえる話題作、待望の文庫化!
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【著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)】
森/博嗣
1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学の工学部助教授の傍ら1996年、『すべてがFになる』(講談社文庫)で第1回メフィスト賞を受賞し、衝撃デビュー
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Posted by ブクログ
「周辺というのは、近くという意味じゃありませんか?」
「地球の周辺にある衛星といえば?」
「月です」
「三十八万キロも離れているのに、周辺じゃないですか。だったら、地球上のどこでもロンドンの周辺になりませんか。嘘ではないでしょう?」
「あの辛い体験を彼女はすっかり忘れることができたって言うだろ」
「それ、忘れてないでしょう? 忘れたなら、辛いなんてわからないじゃん」
「あ、変だな。そうだよなぁ。忘れることができたなんて言うのは、つまり忘れてないからだよな」
「僕、思うんですけど、小説って、読んで何かを得たり、読んで心に残すものなんでしょうか? それって、教科書とか聖書みたいですね。」
『社会では、今回の事故で原発反対に回った方が多いことは知っています。それは、感情的には当然そうなるでしょう。しかし、今まで賛成して推進してきたものが、完全とはいえないまでも今までよりは安全になるのですから、私には今さら反対する理由が見つかりません。原発の安全性は、明らかに過去よりも将来の方が高いのですからね。この評価のどこが間違っているでしょうか?』
『こんな長閑な生活が続いているのは、いったい誰のおかげでしょうか。誰に感謝すれば良いでしょう? 少なくとも神様のおかげではありませんね。神様ならば、もっと救うべき人たちが沢山いるでしょうから。』
『エネルギィというのは、すなわち「価値」である。否、価値というものが、つまりエネルギィによって生産されるものだ、といった方がわかりやすい。もう少し単純な表現を試みるならば、エネルギィというのは金と交換ができる。それが「価値」だという意味、あるいは証拠である。』
『僕は長生きをしたいなんて思っていない。大病を早期発見したいなんて思わないのである。病気になったら死ねば良いではないか。苦しさは同じだろう。
生きていて痛くない間に、楽しもうと思っている。そういう生き方をしているのである。』
「あれだけの事故を起こしたのだから、原子力発電はもういらないという意見が多いと思います。先生はどのようにお考えでしょうか?」
「迷っています。でも、沢山の人が亡くなるような大事故が起きても、誰も鉄道を廃止しろとはいいませんね。どうしてでしょうか?」
「それは、鉄道がなくなったらもの凄く不便なのとになるからではないでしょうか」
「原発がなくなるとかなり不便になりますよ。地球温暖化の対策はどうするつもりでしょうか? この話は簡単には結論は出せないと思います」
「ある人物はある人物に対して、いつも同じ口調で、同じ代名詞を使わなければならないとか、そういう校閲みたいな、TVのディレクタみたいな、わかりやすい単純観念を捨てましょう。リアリティとは、すなわち複雑差でもあるのです」
「読解力という言葉も、よく使われますけれど、あれも不思議な表現ですね」
「漢字や平仮名の列を読んで、それを頭の中で言葉に展開できる、という意味だと思われます。当たり前のことですね。さて、『内容がない』と並んで有効な表現として、『言いたいことがわからない』もなかなか使い勝手が良いので、皆さん、もし作品が気に入らなかったときには、是非使ってみましょう」
「先生、『書いてあることがわからない』では駄目でしょうか?」
「いえ、いけません。それでは自分が馬鹿に見えます。あくまでも、作家の表現力が不足していることにしなければなりません。これは感想文の鉄則です」
『読者は、いつもと違う作品、自分が期待してなかった作風に出会うと、「この作家、どうしたの?」という言葉を発する。それに対する答は簡単だ、「自分の思うとおりにしたかっただけです。あなたの気持ちなどとは無関係に」。』
『どんな突飛な創作よりも、人間の思考、そして感覚はさらにはるかに突飛です。文字にすることわ言葉にすることで、既に大半の発想は失われ、輝きは鈍化します。皆さんが読まされているのは、死んだ発想なのです。創作者は、発想を殺して、文字にするのですから。
しかし、生きていたときの輝きを、どうか思い描いて下さい。死体を見ても、破壊された街を見ても、生きていたとき、活気があったときに思いを寄せることはできるはずです。土に埋まった化石や土器の欠片からも、原始の生態や太古の歴史を顧みることができるように。感性とは、この「想像」によって磨かれるし、その感性によってしか、創作の輝きを見ることはできないでしょう。』
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