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Posted by ブクログ
“「俺は風景が好きなんです」
唖然としたように口を開けて全員が見守る中、俺は続ける。
「田舎の町並みとか都会のビル群とか、あんまり好みに偏りは無いんですけど。あ、どちらかと言うと山が好きですよ。森がある、川がある、そこに生態系がある。まぁ、海も捨てがたいですし都市はやっぱり人間が作ったものとはいえそれはそれで風情があるんですけど。――でも、『丘研』って文字を見たときにハッとしたんです。俺はこの街で、少なくとも『丘』と呼べるものに出会っていない!それなのに丘の研究って、もしかしたら俺の見たことが無い風景画まだまだこの世にはあるんじゃないかって感動したんです!」
中々クサい台詞を口に出してみた。それでもまったく誇張の入ってない俺の率直な理由である。まぁ、これをそこまで一般的な趣味だと声高に主張するほど俺は身勝手ではない。これだけ風景について語れば、相手の反応は大体が二種類、避けるか逃げるかだ。
だが、相手の反応は俺の予想を大きく外れる。
この代表、目尻に涙を浮かべていた。
「――素晴らしい!」
「おおお、よく分からんがいいこと言ったぞ新入生!」
出島先輩がガッツポーズをしながら立ち上がる。沈丁花先輩は俺の両手を勢いよくとると、緩やかに力を込めて握った。
「これほどまでに熱意のある新入生がかつていただろうか!?いや、私以外にない!そうとも、ここではきっと君にしか出来ない活動がある。我々は君のような人材をまさに必要としていたんだ。……そうか、うん。嬉しい、私は嬉しいぞ新入生!君のような人材を手元に配下として置くことが出来ることを私は感謝する。私自身の幸運に対して!」
俺に向けられた沈丁花先輩のそれは、なんとも輝きに満ちた顔だった。お世辞や打算であるとか、そういったものを一切含まないで、純粋に俺を必要としてくれている人間のその視線。
それを一身に受けて入部を取り消す奴がいるんだろうか、――そんなことは想像もできない。”
狂ってる。
狂気的愉快犯。
内容がすごいのなんの。
無茶苦茶で強引で陰湿で面白くて。
荒唐無稽ではなくて、ちゃんと筋が通ってて。
『普通』って何?当たり前って何?
色々と考えさせられもする。
一転二転して新たな一面を覘かせたり。
そして登場人物がまた揃いも揃って個性的にして破壊的。
青色君が結構気に入った。
丘研さいこー。
シリーズ刊行ぜひとも。
“「ほほぅ……」江西陀の目が怪しく輝く。「まぁ、篠塚さんも一応は生物ッスからね。咲丘のような風景にしか欲情できない変態よりは、健全でいいんじゃないッスか?」
「待て、激しい語弊があるぞ、それは。俺は風景に興奮しても欲情はしねぇ」
江西陀は如何なる手段を講じても、俺を変態にしたいらしい。
「なるほどなるほど。ちなみに、咲丘は雄大な山脈と広大な平原ではどちらが興奮するんスか?」
「馬鹿野郎!どれも等しく美しい風景じゃないか!」
「つまり、代表でも萩先輩でもアリということッスね。ふむふむ、見境も無いとはいやはや」
「――誘導尋問、だと!?」
これまで知らなかった、江西陀の恐るべき知性に愕然とする。
「おのれ、江西陀のくせに生意気な……。畜生!今まで隠していたのに、これじゃ俺がどんなおっぱいでも興奮できるとカミングアウトしてしまったようなもんじゃないか!」
部室の空気が凍りつく音がした。
「なぁ、もしかしてそれって胸の話だったのか?」出島先輩が首を傾げる。
「いやいや、風景の話ッスよ。どこをどう解釈したのか、咲丘が勝手に自爆しただけッス」
「……なんだと!?俺を嵌めたな江西陀!」
俺は辺りを見回す。
代表が冷ややかな視線を送り、萩先輩が顔を真っ赤にして俯いていた。
なんてこった、これじゃまるでセクハラ発言を堂々と口にする変態野郎みたいじゃないか。”
Posted by ブクログ
神楽咲高校に入学した咲丘は、「丘研」の入部案内を見てこれこそ風景をこよなく愛する自分のための部活だと部室へと向かう。しかし丘研とはオカルト研究会だったのだ。
何度も飛び降り自殺を繰り返す男、ツチノコ獲得作戦、切り裂きジャックとの対決。都市伝説に丘研が挑む。
変わった活動をする部活動に集まる、変わった人たちの物語。そう言うとよくあるパターンに思えます。
しかし世界征服を唱える代表の沈丁花桜をはじめ、丘研のメンバーの変わり具合はかなり思い切っています。性格はもとより個々人が抱える過去や特質も、そこまで思い切った設定が必要かと思わせるものとなっています。
そのインパクトだけで物語を展開させる豪腕に圧倒されます。インパクトの強さで読者を無理矢理納得させるのです。
そのインパクトがあるが故に、人を支配する方法などの思い切ったロジックにも納得させられるのです。それこそがオカルトの正体かもしれません。
このパターンだと語り手の主人公は「無個性」という個性を与えられて、無味無臭でインパクトを受け止める人になりがちです。風景が好きという一風変わった嗜好を与えられつつ受け身の主人公と思わせた咲丘は、物語終盤にこれまた思い切ったインパクトを見せます。
こうなると勢いだけに思うのですが、それを凌駕するものもあるのです。あまりにも突飛なキャラクターたちが集まった物語なのですが、それぞれの人物は自分が決めたものに対して真っ直ぐに進んでいるのです。たとえ世界から認められないことであろうとも。
だから代表は「美しい世界を取り戻そう」と語りかけるのです。
Posted by ブクログ
一般的な集合体から疎外された者が、自分という個を徹底的に貫き通す。周りが何と言おうと関係無し。自分を取り巻く世界が気に入らなければ、自分が世界を支配してしまえば良い。丘ルトロジックの登場人物達はそういう人たちが高校の部活レベルを越えた課外活動において世界を支配していく物語だ。この作品で語れる「支配する」ということは対象それ自体の情報を徹底的に知り尽くすことである。
よくある学園ものと思いきや、中盤になるにつれ、物語は暗く、それでいてコミカルに、そして中二病よろしく主人公達が狂い始める抜きどころもある!(ここ大事!笑)読みづらい文体ではあったが、ライトノベルの枠組みをまた大きく拡げてくれた作品であることには間違い無し!
面白いから是非読んで下さい。
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