Posted by ブクログ
2013年12月24日
スポーツの品格/桑田真澄・佐山和夫 を読んだ。
この本は、スポーツをめぐる問題の根元である「勝利至上主義」について、桑田真澄さんとスポーツ史研究の第一人者である佐山和夫さんの対談をまとめたものである。
昨今、桑田さんはスポーツの「体罰」について積極的に発言をしており、その考えについて触れておきた...続きを読むいと思い本書を読んだ。
桑田さんは本書で、スポーツ界における体罰はなくすべきであると訴えている。
いくつかの論調のなかで選手育成において体罰は協調性を育むうえでプラスの側面があるというものがある
。体罰は育成に不可欠であるというものだ。しかし、桑田さんは、その点についてもNOと言っている。コーチなどへの恐怖心は技術の向上を阻むという側面である。
P38
だんだんエラーをした選手のほうが萎縮してしまうんですね。ー するとその選手はどうするかというと、打球が飛んできたら、膝をついて体で止めるようになるのです。
また、佐山さんも同様に語る。セカンドキャリアの問題である。
P36
若いときに、指示され、殴られ、怒鳴られて、「やれ」と言われたことしかやらなかった人間に、有意義なセカンドキャリアを見つけられるはずがない。
桑田さんはスポーツの楽しみは、結果とプロセスの二つの両立が大切であると語る。どちらがかけていてもだめなものである。
P14
結果とプロセス。この二つを両立し、この二つの価値をともに追い求めていくことこそが、スポーツの楽しみ、喜び、魅力につながっていくと僕は考えています。
P58
たとえば、少年野球にしても学生野球にしても、どの組織も「育成」という目的を掲げているじゃないですか。それなのに、実際にはどこも超勝利至上主義ですようね。あれがもう、僕は根本的におかしいと思うんです。
P80
この間も、あるトレーナーのところにいたら、子どもが来たんです。明らかにひじが曲がっているから「どうしたの?」と聞くと「明日、試合なんです」と言うんですね。ー「学生時代に、大事な試合なんて一試合もない。いちばん大事なのは、自分の体を守ること」って。
高校野球においては、いきすぎた勝利至上主義によって、球児達の将来を危ぶまれることがないようにするべきだ。具体的には投手は投球制限を課せられるべきであると思う。私たちには、甲子園での連投を熱闘として、もてはやすのではなく、彼らの将来を考える、大人として良識ある態度が求められると考える。
本年、柔道・相撲などの不祥事、また部活動での体罰などあまり好ましくない事件が世間を騒がせた。以前であれば、部外者には口出しできない雰囲気があったのではないか。桑田さんのようなスポーツの第一人者から、このような問題に対してNOという意見を発言されていることは非常に良いことであると思う。