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果てない砂の海を漂流する漂泊船「泥クジラ」。チャクロはその泥クジラの「記録係」であった。
泥クジラの住人の多くが、情念動(サイミア)と呼ばれる不思議な力を使い、そして彼らは短命であるという。
若い仲間の死に何度も傷つきながら、それでも彼らは穏やかで平和に暮らしていた。
しかし、ある日廃墟船に偵察に赴いたチャクロは、衰弱した少女・リコスに出会い、それにより状況は一変する。
泥クジラ以外の世界、そこに住まう人間を見たことがない住人たち。そんな彼らにとって残酷な真実を知るリコス。
外の世界はどうなっているのか、住人の祖先たちはなぜ泥クジラで生活していたのか、そもそも泥クジラとは一体なんなのか…。
すべての謎が明かされ、自分たちが短命である理由を知った住人たちは、新天地を目指し泥クジラの舵を取るのだった。
このお話はタイトル通り、「クジラの子」、すなわち泥クジラで生きる子どもたちを描いています。
「泥クジラ」という聞きなれない場所に住んでいることで、どこか遠いところの話に聞こえますが、彼らは楽しいも悲しいも感じる、感情を持った普通の人間でした。
というのも、外の世界には感情を持たない人間がいたからです。リコスもまたその1人でした。
そんな彼女ですが、チャクロやその仲間と過ごすうちに、自分の感情を取り戻していきます。
そしてクジラの子たちを助けたい、彼らと生きたい、そう願うようになるのです。
しかしそれは決して簡単な道ではなく、何度もクジラの子たちは絶望し、立ち尽くすのでした。
残酷な真実ばかりの世界で、悲しみがあふれる世界で、それでも人間は感情を持つのが正しいのでしょうか。
チャクロは言います。「痛みや苦しみすべてが俺たちの生きてきた記録だ」と。そしてだからこそ忘れることはできないと。
仕事や人間関係で嫌なことがあったとき、悲しくて泣きたいと思ったとき、何度でも読み返したくなる1冊です。
Posted by ブクログ 2017年08月24日
文明崩壊後の砂漠を渡る「泥クジラ」なる巨船上に共同体を築いて暮らす民。
情念動を操る短命な超能力者「印」と、その指導者的立場である僅か一割の「無印」…
この設定だけでSFファンならときめくはず。加えて泥クジラの風俗や文化や生態系がとてもよく練られている。冠婚葬祭の習俗や食、衣類や詠読みに至るまで、過...続きを読む
Posted by ブクログ 2015年07月31日
ファンタジー、それもディストピア物でのハイファンタジー作品である。スローペースで世界観を伝えるような内容で一巻は展開されているが、終盤に急展開を迎える。作り上げた焼き物をバリーンしてしまうかのような急展開である。
個人的には、ここまで描き込まれたハイファンタジーを(漫画という形式で)初めて見かけ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年07月29日
砂の海の中を漂う巨大な船、通称“泥クジラ”。そこで暮らすチャクロはある日、廃墟船を発見し始めて外の人と出会う。その出会いは今までの暮らしを変えていくことになる。
幻想的な雰囲気と柔らかなタッチの絵、優しい世界で短命だけど、穏やかな暮らしを送る人たち。この設定で一体どういう話が展開されていくんだろとの...続きを読む
ファンタジックなテイストの絵柄に反して、なかなかヘビーなストーリーでした。独特の世界観があって惹き込まれます。退廃的な雰囲気があって、少し風の谷のナウシカに通じるものがある。
Posted by ブクログ 2020年11月21日
泥クジラの人々と外の世界の少女との穏やかな交流……から一転、4話で話が急展開して1巻終わり。
正直、3話までの流れがずっと続くなら「絵は綺麗だけど先は気にならないかな」って思ってた。
けどあの4話……ここから泥クジラの人々はどう巻き返すのか。どんな謎が隠されてるのか。
気になるのでこの先も読むの確...続きを読む
ファンタジーもので、閉鎖的な空間で生きていた主人公たちが物語が進むにつれて自分の置かれた状況が解き明かされていきます。
設定が作り込まれていて、キャラクターたちも心情が伝わってくる描き方をされていると思います。
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