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果てない砂の海を漂流する漂泊船「泥クジラ」。チャクロはその泥クジラの「記録係」であった。
泥クジラの住人の多くが、情念動(サイミア)と呼ばれる不思議な力を使い、そして彼らは短命であるという。
若い仲間の死に何度も傷つきながら、それでも彼らは穏やかで平和に暮らしていた。
しかし、ある日廃墟船に偵察に赴いたチャクロは、衰弱した少女・リコスに出会い、それにより状況は一変する。
泥クジラ以外の世界、そこに住まう人間を見たことがない住人たち。そんな彼らにとって残酷な真実を知るリコス。
外の世界はどうなっているのか、住人の祖先たちはなぜ泥クジラで生活していたのか、そもそも泥クジラとは一体なんなのか…。
すべての謎が明かされ、自分たちが短命である理由を知った住人たちは、新天地を目指し泥クジラの舵を取るのだった。
このお話はタイトル通り、「クジラの子」、すなわち泥クジラで生きる子どもたちを描いています。
「泥クジラ」という聞きなれない場所に住んでいることで、どこか遠いところの話に聞こえますが、彼らは楽しいも悲しいも感じる、感情を持った普通の人間でした。
というのも、外の世界には感情を持たない人間がいたからです。リコスもまたその1人でした。
そんな彼女ですが、チャクロやその仲間と過ごすうちに、自分の感情を取り戻していきます。
そしてクジラの子たちを助けたい、彼らと生きたい、そう願うようになるのです。
しかしそれは決して簡単な道ではなく、何度もクジラの子たちは絶望し、立ち尽くすのでした。
残酷な真実ばかりの世界で、悲しみがあふれる世界で、それでも人間は感情を持つのが正しいのでしょうか。
チャクロは言います。「痛みや苦しみすべてが俺たちの生きてきた記録だ」と。そしてだからこそ忘れることはできないと。
仕事や人間関係で嫌なことがあったとき、悲しくて泣きたいと思ったとき、何度でも読み返したくなる1冊です。
Posted by ブクログ 2015年08月20日
流されるままに砂上を漂い、自らの呪われた運命も知らず、穏やかに日々を暮らして来たクジラの子ら。帝国の襲撃を退け、泥クジラの航行能力を手に入れた彼らは海の牢獄を乗り越え、新しい世界へと旅立つ。
外界がもたらす知識や力は彼らを幸福にするどころか、混乱を招くものの方が多いみたいです。ヌースを滅ぼす力は帝国...続きを読む
Posted by ブクログ 2015年08月09日
シリーズとして言えば、仕込みの巻になるだろうか。終盤に明らかにされた泥クジラの真相は衝撃的ではあるが、それと同じくらいに重要だろう仕込みがいくつか見られる。
物語として言えば、泥クジラが舵を得た事実が最も大事だろう。次へと展開していくための羽を得た形だ。新たな物語が展開されていくことが容易に想像...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年08月26日
帝国の戦艦スキロスと戦い突撃隊によってヌースを破壊し危機を乗り越えた泥クジラの住民たち。多くの犠牲を払いながらも未来へ向けて進み出した中、未知の国の船が接近していた。
多くの犠牲を払った前回と比べ今回は比較的穏やかな場面が多かった。だが、アモンロギアのロハリトとの接触場面は正直どうかと思う。和やかな...続きを読む
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