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米国を揺るがす「キリスト教ナショナリズム」とは何か?
「宗教化」するトランプ政治。米・イスラエルによるイラン攻撃……。
アメリカは、いま何に突き動かされているのか?
移民・女性・若者へと広がる予想外の浸透。
ヒンドゥー教徒やイスラム教徒までもが支持するという現実――。
宗教学の碩学・森本あんりと、現代アメリカ研究の第一人者・渡辺靖が、建国の理念から現代の混乱まで六章にわたり徹底討議。
神学とフィールドワークという異なる視点が鮮やかに交差し、従来の理解を更新する画期的なアメリカ論を提示する。
信仰・歴史・政治が交錯する大国の内側を読み解く、圧巻の対談!
<目次>
第一章 キリスト教ナショナリズムとは何か
第二章 過激化するキリスト教ナショナリズム
第三章 世俗化する信仰とZ世代
第四章 リバタリアンとの共通点
第五章 イスラエルとの関係
第六章 リベラリズムという容れ物――民主主義の危機と再生
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Posted by ブクログ
著者らの対話形式で進むため、キリスト教ナショナリズムの動向や思想がすっと頭に入ってきた。
なるほどと思ったのは、キリスト教が衰退しているからこそ、福音派を名乗る人々が聖書を好き勝手に解釈し、つまみ食いして自分たちの主張に変えてしまっているという指摘だ。たとえばレビ記19章には入れ墨を禁じる記述がある一方で、同じ章に寄留の外国人を大切にせよという記述もある。しかしこれらは顧みられていない。
さらに本書は、一見相容れないように見えるリバタリアン、福音派、テック長者たちが、なぜ手を結んでいるのかという思想の整理にもなった。国家への不信や既存秩序を壊したいという衝動を共有し、終末を待つのではなく、自ら引き起こそうとしている点で通じ合っているのだという。
本書でも触れられているように、1980年代までは民主党も共和党も中道からやや保守といった位置にあり、イデオロギー対立は今と比べれば牧歌的だった。そのことを改めて思い知らされる。党派を超えて信念を貫いたマケインのような政治家が、今の共和党から再び現れることはあるのだろうか。
著者も指摘しているようにアメリカは自由とグローバリズムを掲げる超大国から、ある種の「普通の国」へと変貌しつつあるのかもしれない。
Posted by ブクログ
アメリカの人口のうち60%がキリスト教徒で、40%がプロテスタント、そのうちの60%が福音派。
グローバル化、リベラルな風潮、リベラルな公教育への不満・不信から、穏健なキリスト教徒の主流派が減り福音派が増えてきた。その中にキリスト教ナショナリズムという過激な動きが出てきた。NAR(New Apostolic Reformation)新使徒的改革運動といわれるクリスチャン右派だ。20世紀には神の祝福が直接現世の成功につながることを約束する繁栄の福音が主流だったが、21世紀になって個人の繫栄ではなく国家のキリスト教化が課題となる。救済されるべきは個人ではなく国家なのだ。キリスト教ナショナリズムは国家がキリスト教を根幹としているので他宗教は認めないという立場だ。
もともとアメリカは、権力と結びついたヨーロッパのキリスト教への反発から、独立当初から政教分離を基本理念としてきた。そのためにかえって信教の自由によりキリスト教の重みが増し、自由に発展することができたのだ。
1878年のモルモン教重婚禁止判決、1963年の学校での朝の祈唱への憲法違反判決などもあり、政教分離がはっきり意識づけられリベラルな風潮が進んできた。
1980年代から福音派が政治的関与を深めていったのは、反宗教としての共産主義がある。さらに経済的な圧迫や治安の原因、そして白人キリスト教徒の国としてのアメリカ性を脅かすものとして移民を捉えているから。
また、宗教へまで口を出す北部の連邦政府への南部の不満もある。福音派は南部に多い。
多数の教徒を抱える福音派の集会は、大駐車場を備えた会場でロックコンサートなども行われるビックエンターメントになっている。
大学はほとんどリベラル一色で、それに反発して、チャーリー・カークは保守的政治団体ターニング・ポイントUSAを作ったが、去年暗殺されてしまった。
一般にも、リベラル疲れと言われるようになり、保守的な古きアメリカの良き夫、良き家庭が求めれると、保守=キリスト教となってしまう。
既に成功を得た移民たちもアメリカ人になり切りたいので福音派を支持し、新しく移民が入ってくることに反対する。
Z世代と言われる若者たちは、SNSなどにより多様な価値観へ目を向け、世俗が進んでいる。
このあと、リバタリアンやピーター・ティールの加速主義などとキリスト教ナショナリズムとの共通点や差異、イスラエル問題を述べている。ユダヤ人が選ばれた民なのは聖書に書いてある通りで、終末の後ユダヤ人たちはキリスト教に改宗するとか。こんなふうに、福音派の人々は聖書の言葉を前後のかかわりなど無視で一部分だけ切り取って、自分の都合のいいように解釈する。主流派の人々は聖書を全体を通してよく読んでいるが、福音派の人々は聖書を読んでいないのだ。
リバタリアンや加速主義者たちは成功した自分たちは神から選ばれた者たちで価値ある自分たちだけが助かればいいのだという呆れた利己主義者たちである。火星への移住とか核シェルターとか、選ばれた者のためである。
著者の森本あんりは、キリスト教は衰退してると言い、市民宗教を取り戻すべきという。トランプやNARなどにはないものだ。経済的に成功した神に選ばれ祝福されているというのではなく、自分たちも罪に塗れていて、相手の罪だけを指弾することはできないというのが市民宗教。
リベラル派にしろ、キリスト教ナショナリズムにしろ、とにかく極端に振り切れてしまうのがアメリカなのかなあ。いや日本以外どこもそうなのかもしれない。大統領選挙の時なども、民主党支持か共和党支持かをはっきりさせないと地域に居づらいというからなあ。八百万の神がいて、多様な価値観を認める日本は特殊か。それを大事にしたいけどなあ。
Posted by ブクログ
宗教学者と現代米国論の学者による対話本は最高に刺激的で脳にビビッとくる。
国の内情に知悉している人の会話はキリスト教ナショナリストと福音派、またリベラリストの相違点と共通点の説明やリバタリアンとの共通点など米国の政治・宗教の正に痒いところに手が届くかのよう。イスラエルを支持するのはユダヤ教徒以上にキリスト教福音派と言われる人たちであり、イスラエルでもそのことは分かっている。反ユダヤ的言動をしているとトランプが批判している人たちにユダヤ系の知識人が多くいるということも興味深い。米国は政教分離をしているのになぜ大統領の就任式で聖書に手を置いて誓約するのか?それは就任する人が信仰の自由を持っている証しであり、イスラム教徒ではコーランに手を置くこともできる。実際にそれが起こっていないだけ!これは驚きだった。フランスの政治学者トクヴィルが米国の政治を見て驚いたという歴史が説得力を持って迫ってくる。
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