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スイスで友人と病院経営をはじめたディック。ニコルとの関係はおだやかに見えるが、ローズマリーの出現以後、何かが決定的に変わっていた。ニコルの父の危篤、ディックを襲う疲弊とアルコール中毒、ローズマリーとの再会、そしてニコルの病からの目覚め――運命が結んだはずの二人の絆が崩れゆく様は、荒漠とした哀しみを湛えずにはいられない。賛否両論を浴びながらなお世界中のフィツジェラルド読者に最も愛される作品。
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Posted by ブクログ
フィッツジェラルドの儚い願いを託された一作。書くということで彼は浄化を求め、慰めを受けたかったに違いない。ディック博士のようなあっけない幕引きを望んで夢みて、物語に託した。
失われていってしまったものへの哀惜。だけど、それはどこまでも自分だけのもので、誰に知らせることもできない。ただ、笑って波風立てぬよう過ごしていくより他ない。またしてもギャッツビーが現れる。優雅や気品さというものは、そうやって作り上げていくものだ。
彼の文体がどこか断片的でとりとめのないように感じられるのは、思い出を壊したくなくて、バラバラに壊してしまった、そんな彼のやさしさゆえなのだと思う。子どもの大切にしまっておいた花や草・虫が、大切にするあまり色褪せて萎びてしまったのに似ている。そして、そんな残り滓なんていらないと、すべて粉々に砕いてしまいたくなる。
彼にとっての慰めは、酒による酩酊と、書くということによってしか見いだせなかった。そんな彼を受け入れてくれるのは夜の闇のやわらかさだけだった。存在をくっきり浮き立たせる眩しい光より、存在が溶けて広がる闇を愛した、孤独な輝き。だが人生は虚構のようにはできていなかった。
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小説・文芸
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