Posted by ブクログ
2012年01月08日
日本や世界経済を予測した本が巷に出回っていますが、それを読んでも「付け焼刃的」な知識が得られていないと感じる最大の原因は、その著者の結論を導き出した前提条件や考え方が理解出来ていない事にあると思います。
それを解説することは、ある意味で解説者としてのノウハウを開示することにも繋がるので、それに触...続きを読むれられることは少無いと私は思っています。その中で、この本のタイトルに含まれる「経済予測脳」という言葉を私のアンテナが捉えました。
中原氏の提唱する、いま起きている出来事を、歴史学・経済学・心理学・哲学の4つの視点から見てみることの重要性(p82)は私に取っては新鮮でした、特に後者の心理学(欲望、エゴ)・哲学(西洋史はキリスト教、日本史は怨霊信仰)の観点はより根本にかかわる重要な概念だと思いました。
筆者が最後で、より高いレベルを身につけるには、理系学問(生物、物理、化学、数学)や人類学等も必要と述べていました(p268)、バランスのとれた知識が重要だということでしょうか。
以下は気になったポイントです。
・米バブルが崩壊したのは、その過熱ぶりを警戒したFRBが2004年以降、利下げから利上げに転換したのが遅すぎたのが原因、2006年に5.25%まで政策金利が上がって米穀住宅価格が下落した(p35)
・FRBバーナンキ議長は、2008年4月に、「ベア・スターンズと同様の破綻が起きることは想定していない」と発言したがリーマン倒産(同年9月)となった(p50)
・マクロ経済学の教科書通りに金融政策を実施した日本(政策金利:無担保コール翌日物レート」を0.15%、量的金融緩和)は、景気が回復しない状況が10年以上続いた(p67)
・歴史から学べることは、「時代や場所が違っても、同じ状況と条件がそろえば歴史は繰り返す」ということ、拡大しようとする根本は、「人間の欲望」である(p77、95)
・今起きている出来事を、史学・経済学・心理学・哲学の4つの視点から見てみることが大切(p82)
・ローマ帝国の衰退の原因は、1)ゲルマン人に国を囲まれて新たな領土獲得が困難、2)戦争奴隷を獲得できずに経済基盤の農業衰退、である(p102)
・農業生産が立ちいかなくなって崩壊に追い込まれたローマ帝国のように、国際巨大資本も「国際分業体制」というビジネスモデルの限界にあと10~20年で到達しようとしている(p103)
・西洋史を研究する上で、常にキリスト教の影響を考慮すべきなのと同様に、日本史を解明するには、怨霊信仰の影響を考える必要がある(p114)
・バブル発生から拡大までのプロセスとして、1)需給の不均衡、2)投機家による買い、3)一般投資家らによる買い、の3段階がある(p142)
・人間は、利益が出る場合にリスク回避的な行動を好み、損失が出る場合にリスク指向的行動を好むと言われている(p158)
・知の「OS」とは、哲学のこと(p166)
・「構造と力:浅田氏」とであったことが、哲学を学ぶ出発点となった、この本により、「人間はお金に縛られ続ける限り自由になれない」ということを学んだ(p168、177)
・ボーダーレス化によって、米国経済が地球規模で膨張した姿が、現在の世界経済であるという本質を理解したので、デカップリング論はあり得ないと予想した(p185)
・米国住宅市場では、販売件数の80~90%が中古住宅なので中古住宅の販売件数が米国経済と深い関係がある(p189)
・パソコン業界がネットブックにより価格下落となったように、自動車業界も同じような状況になると予測できる(p211)
・新聞を読むメリットは、1)世の中の流れを大局的につかめる、2)自分にとって関心のない記事にも目を通せる、である(p215)
・今後の世界経済の流れは、1)米国依存の経済発展の限界、2)金融から環境主導の経済、である(p239)
・欧州が温暖化ガス削減に取り組んでいるのは、欧州が育てた(2005年開始)排出権取引制度の存続がかかっているから(p241)
・ドイツの大手銀行では、5カ国(ギリシア、ポルトガル、スペイン、アイルランド、イタリア)への与信残高はGDPの20%、フランスの場合は同30%であり危険水準(p245)
・日本のハイテク企業が韓国企業に苦戦しているのは、為替相場と法人税率にもよる、2009年最高益のサムスン電子も、ウオン相場が円相場並に高かったら赤字の可能性あり(p254)