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「掏摸」という言葉は、「獏」の文字に似ているからか、まるで動物の名前のように見える。この小説は、生活のための掏摸ではなく、掏摸という行為そのものに生きる男の話だ。無意識に取り、変装資金のために取り、愛する人が死んだ悲しさで手当り次第に取る。これはいわば「掏摸」という動物ではないか。
まず興味を惹かれるのは、華麗なる掏摸の技術の数々。標的探しから証拠隠滅まで、ルポルタージュのように闇の世界が描かれる。一般市民は身近に潜む危険にぞっとし、思わず財布の所在を確認してしまうだろう。
また、感情を排除した淡々とした描写が、読者を物語の深みへ引きずり込んでいく。財布を抜き取る手先の微細な緊張まで伝わってきて、その手を相手につかまれた瞬間は本当に身の毛がよだった。主人公の行いは、善か悪かで言えば間違いなく悪である。それでも読み進めるうち、彼のミッションの成功を我がことのように手に汗握って祈るようになってしまう。もちろん、自分の財布は鞄の底へ押し込みながらだけれど。
Posted by ブクログ 2024年02月17日
「悪に染まりたいなら、善を絶対に忘れないこと」
演技の世界では悪役を(いかにも悪いやつ)として演じることで、そいつの「悪さ」が矮小化されちゃうという現象がままあります。
「俺は悪いんだぞ」と露骨に見せてくる人ほど「悪」としての深みはない。結果としての悪はあっても、「悪であろう」と演技すると、それ...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年07月24日
めちゃめちゃ好きだった。なにが良かったのかと聞かれるとうまく言語化できないのだけど。作中のテンションと私のテンションがシンクロするくらい合ってたのかなぁ。スーッと世界に入り込み、また作品がスーッと私の中に入ってくるようだった。
終始アンニュイであり、終始スリリング。生を諦めてるのか執着してるのか。不...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年06月10日
全編を通して、緊張感が続く、スリリングな作品です。
職業「掏摸」。その技術は、芸術的でさえあるのに、彼が所属できる社会はない。闇社会にも彼の居場所はない。
集団を拒否して、人生の暗がりを生きてきた報いか。それでも仲間を想う瞬間はあり、知り合った子供の行く末を憂う。
圧倒的な威圧感を持つ闇社会の住人、...続きを読む
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