掏摸

掏摸

495円 (税込)

2pt

東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎、かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」――運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは……。その男、悪を超えた悪――絶対悪VS天才スリ師の戦いが、いま、始まる!!

...続きを読む

掏摸 のユーザーレビュー

「掏摸」という言葉は、「獏」の文字に似ているからか、まるで動物の名前のように見える。この小説は、生活のための掏摸ではなく、掏摸という行為そのものに生きる男の話だ。無意識に取り、変装資金のために取り、愛する人が死んだ悲しさで手当り次第に取る。これはいわば「掏摸」という動物ではないか。
まず興味を惹かれるのは、華麗なる掏摸の技術の数々。標的探しから証拠隠滅まで、ルポルタージュのように闇の世界が描かれる。一般市民は身近に潜む危険にぞっとし、思わず財布の所在を確認してしまうだろう。
また、感情を排除した淡々とした描写が、読者を物語の深みへ引きずり込んでいく。財布を抜き取る手先の微細な緊張まで伝わってきて、その手を相手につかまれた瞬間は本当に身の毛がよだった。主人公の行いは、善か悪かで言えば間違いなく悪である。それでも読み進めるうち、彼のミッションの成功を我がことのように手に汗握って祈るようになってしまう。もちろん、自分の財布は鞄の底へ押し込みながらだけれど。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

    Posted by ブクログ 2024年04月08日

    光が目に入って仕方ないなら、それとは反対へ降りていけばいい。
    眩しすぎるものに直面した時に思わず目を背けてしまう反射を意図的に行う強さを痛いほど感じた。

    0

    Posted by ブクログ 2024年02月17日

    「悪に染まりたいなら、善を絶対に忘れないこと」

    演技の世界では悪役を(いかにも悪いやつ)として演じることで、そいつの「悪さ」が矮小化されちゃうという現象がままあります。

    「俺は悪いんだぞ」と露骨に見せてくる人ほど「悪」としての深みはない。結果としての悪はあっても、「悪であろう」と演技すると、それ...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2024年01月26日

    最初から最後まで面白かった
    最後はどんな着地するのか全く予想できなかった
    ちょっと最後だけ期待はずれだったけど姉妹作品で、その後のキャラクター達が描かれてるみたいなので納得
    台詞もオシャレでセンスがある。

    0

    Posted by ブクログ 2023年08月11日

    何度でも言うけど、中村文則さんは狂った人間を魅力的に描写するのがうますぎる。

    狂った雰囲気が漂っているページは、捲る手がほんとに早くなるし止まらなくなる。

    0

    Posted by ブクログ 2023年07月24日

    めちゃめちゃ好きだった。なにが良かったのかと聞かれるとうまく言語化できないのだけど。作中のテンションと私のテンションがシンクロするくらい合ってたのかなぁ。スーッと世界に入り込み、また作品がスーッと私の中に入ってくるようだった。
    終始アンニュイであり、終始スリリング。生を諦めてるのか執着してるのか。不...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2023年07月06日

    「運命」について考えさせられる。巨悪(権力)によって描かれたシナリオ通りに物事が進んでいるとしたら。この喜びも悲しみも計画されたものだったら…。主人公をいつも見ている「塔」は何者なのか。
     ※異なる本の評価を書き込んでいました。

    0

    Posted by ブクログ 2023年11月11日

    好きだなぁ、なんともいえない不条理な感じ。深さはないけど濃さを感じる文体がお気に入り。陰鬱さの中に一条の光が差し込むだけで十分なのでは。

    0

    Posted by ブクログ 2023年06月10日

    全編を通して、緊張感が続く、スリリングな作品です。
    職業「掏摸」。その技術は、芸術的でさえあるのに、彼が所属できる社会はない。闇社会にも彼の居場所はない。
    集団を拒否して、人生の暗がりを生きてきた報いか。それでも仲間を想う瞬間はあり、知り合った子供の行く末を憂う。
    圧倒的な威圧感を持つ闇社会の住人、...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2023年06月12日

    読書の森へ入るきっかけが中村文則氏。
    読みやすかった。
    中村文則氏オススメで、スリから読むと入りやすい。との記事を参考に。ありがたい。

    0

    Posted by ブクログ 2023年05月24日

    見返すとか、抗うとか、這いだすとか、そんな立派な志しなんてなくてもいいから、「死なずにいよう」とだけ、若い人たちには思っていてほしい。諦念や絶望の先にも、全うするだけの人生の意味はちゃんと残されているから!

    0

掏摸 の詳細情報

閲覧環境

注意事項あり
  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア
  • 【閲覧できない環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

この本をチェックした人は、こんな本もチェックしています

河出文庫 の最新刊

無料で読める 小説

小説 ランキング

中村文則 のこれもおすすめ

掏摸 に関連する特集・キャンペーン

同じジャンルの本を探す