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「すべて自分が悪い」というふうに自分の存在を否定することで、世界の合理性を獲得する。この感覚を、自責感といいます。臨床心理学では、自責の問題はほとんど扱われてきませんでした。この本では当事者の言葉を辞書として、自責感だけでなく、母と娘、共依存、育児といったものにまつわる問題を考えていきます。講座の語り口を活かした、やさしい一冊です。
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Posted by ブクログ
とんでもなく読みやすくて面白かった。自己肯定感に対して新視点を得た感じ。家族って難しいな。親になったのでもっと学びたい。この方の他の本も読みたい。
著者の考え方、いいと思う。 「母の愛」「あなたのために」という呪いの言葉を否定している。 母と娘の関係。 父と息子のことは西洋の心理学者もよく語るが、母と娘はあまり語られないとも。 女同士の母と娘。 母をそういう位置づけに追いやったのは明治時代。 窮屈な規範に押し込んだ。 その亡霊はいまだ生きて...続きを読むいて、母はこうあるべし、家庭はこうあるべし、と縛る。 ミソジニーは男だけのもの、ではなく、女が女を蔑視する。「あんたは女なんだから」と。 工業化時代にはそれが効率が良かった。男が工場で朝から晩まで働き、女は子を育て家庭を守る。 そんな時代はとうに過ぎた。 なのに明治時代の仕組みを懐かしむ輩が多数いる。というか日本の真ん中にいる。 だから世界から取り残される。それに気づかない。 この新書はある意味その警鐘でもあろう。 あげく子は、自分がいるから母が不幸になる、などと思い込む。 自立させなくては! 「自己肯定感」という言葉も著者は嫌う。「人に迷惑をかけない」も。 言葉に責任を持つ、クレバーな方だ。 まえがき 第1章 母はまだ重い 1 「母と娘」の時代の幕開け 精神分析のなかの女/フェミニスト・カウンセリング/アダルト・チルドレン/被害という概念の広がり/『母が重くてたまらない』へ 2 母と娘のいま 母娘問題のはじまり/毒母、毒親という言葉/母の老い/自分の限界は甘く見積もる/亡くなった親 3 母を俯瞰する 定義にこめたもの/母親の三大原因説/謝罪になっていない謝罪/母と娘は和解できない 4 グループの力 解釈を一切しない/母親研究/言いっぱなし・聞きっぱなし/生育歴が母親研究になる/母を俯瞰する/不均衡な力関係の表れ方/母が怖くなくなるような状態を目指す 第2章 共依存を読みとく 1 共依存とシステム家族論 当事者の言葉/アルコール依存症の治療現場から/システム家族論の登場/システム家族論の影響 2 支配としての共依存 共依存の発展/従来の共依存理解の限界/依存ではなく支配/「あなたのために」が不幸のはじまり/言葉が現実をつくる/母の愛のいかがわしさ/被害者権力/パターナリズム 3 母と娘の共依存 母のケアが力を奪う/あなたがいないと生きていけない/女性と共依存/共依存的な人にどう対処するか/共依存的になってしまうとき/被害者は無力化されているのではない/権力は状況の定義権/支配の根幹 4 複雑化したトラウマ 苦しみと鈍感さ/ありふれている共依存/支配性を自覚する 第3章 母への罪悪感と自責感 1 近代と母性愛 母と娘に関する3冊/罪悪感の正体/つくられた家族像/母性愛のふたつの柱 2 母のミソジニー 精神分析にとって女とは何か/阿闍世コンプレックス/受け継がれる母性信仰/ミソジニー 3 母性愛と罪悪感・自責感 反出生主義/虐待の影響としての自責感/母性愛なんてものはない 4 第三者の介入 最良の第三者は、父であるべき/キーワードの整理 第4章 逆算の育児 1 子どもとは何か アルコール依存症とフェミニズムの合流/年代のはじめの孤立/ACの親のように、じゃない育児/子どもという存在 2 親の言葉による支配 親の暴言/自立という言葉/人に迷惑をかけずに生きることはできない/家族と差別/加害と被害をひっくり返す/普遍的な価値を利用する支配 3 幸せでいる義務 抑圧移譲/強迫的なケア/子どもの前では幸せでいる義務がある/閉ざされた家族/幸せなふりをする 4 とりかえしはつく 子どもの恐怖/子ども以外の存在から支えられること/子どもが許せない気持ち/とりかえしがつかないことはない 第5章 なぜ人は自分を責めてしまうのか 1 自責感と規範の関係 規範を取り込む/規範の一貫性 2 「すべて自分が悪い」という合理性 感情を抱けない/子どもの文脈/たったひとつの合理性 3 根源的受動性 子どもは責任ゼロで生まれてくる/孤独感は高級な感覚/虐待の罪 4 自責感のあらわれ 自傷はサバイバル/アディクション/接触障害/性的な問題/反転する自責感/家族と正義/あなたは悪くない 5 これからの旅へ グループの意味/ヴィクティム・ジャーニー あとがき 索引
なぜ人は自責思考に陥るのか。その根幹は、自分が悪いと思い込むことで世界を理解しようとする心にある、と著者はいう。 たとえば、虐待される子どもやDVに遭う嫁や旦那が相手を庇うのはなぜか。それは文脈のない攻撃に耐えられないからだ。どうにか理屈をつけなければ、自分を保てない。これは、親と子の関係にも言え...続きを読むるという。 親子というのは、一筋縄ではいかない。昨今では毒親や親ガチャという言葉があるが(この言葉自体ですべてを括るのは私は他者依存すぎるから好きではない)、子は親を許すべきであり、自立して親孝行するのが立派だと言われる一方で、親は子を守るべきであるという世間の"常識"に私たちは、生まれた時から雁字搦めにされている。 つまり、生まれた時から私たちは、自責思考を持つように社会に育てられてきたのだ。 今の時代は、他責思考を勧める投稿がSNSで散見されて、それはそれでどうかと思うが、関係性に囚われて固定された視野から世界を眺めるのではなく、他者との距離はそこそこに世界と自分とのバランスをとっていけたらいいんじゃないだろうか。 ま、それが一番難しいんだけどね。愛というものは尊いけど、それ故に関係性を複雑にするもの。
自己肯定感という言葉自体を忌み嫌う作者。確かに自己肯定感という言葉に縛られて自分を自分で上げようとするドツボに嵌まって苦しむ人はいると思う。これは目から鱗だった。
親になったので、どうしたら自分の子が健やかにのびのびと育っていけるかなーと思い、参考にしたくて買いました。ケアすることの危うさなんて考えたことがなかったので驚いた。ケアと支配は表裏一体。子どもに対して支配的な言動を無意識のうちにとっていないか気をつけなければと思った。特に「あなたのために」「あなたの...続きを読むためを思って」は要注意、今のところ言ったことはないけどこれからも言わないように気をつけよう。 子は責任ゼロで我が家に生まれてきてくれたのだ、わたしは幸せでいる(または幸せなふりをする)ことで、親としての義務を全うしたいと思った! もっと理解を深めたいので他の本も読んでみたい。
まさかアダルトチルドレンや娘母問題が出発点の新書とは思わなかった。 タイトルにもなっている最後の自責感の章素晴らしかった。「すべて自分が悪いと責める」ことは理不尽な世の中(本書では家族)を合理的に捉えるために生み出されたものだと言われた。 188ページの「自分を徹底して否定することで、世の中が説明で...続きを読むきる。世の中はそれなりに合理的なんだ、なぜなら自分が悪いから。」という文章に衝撃を受けた。 自分自身物事に論理性を求める。しかし世の中は不合理で論理的ではない。これは仕方ないことだと思う。これを認めない限りは自分を卑下し続けることになるのではないかと気付かされた。 すぐ自分を責めることを「自己肯定感が低い」ことを原因と考える節があるが、著者のあとがきにはそんな問題の立て方では「出口がない」と言われる。自分だけを見て、自分で自分を操作することは不可能で他者との関わりあいの中で解決するしかない。ハッとした。 恐らく自分の自己肯定感が低いのは中学のあの合理性のない生活のせいだろう。 読んで良かった。
自責感があるなと思ってこの本を手に取った。母を重いと思ったこともあるし、母からの呪縛は今も続いているように思う。自分では気づかなかった「生きづらさ」があったんだなということに気づかされた。他者がいたことで、幸いにも私は自分が好きだ。言葉にならない感覚をこれからも大事にしていきたいと思う。
母子関係をテーマに描かれているが、父親や友人といった関係においても似た状況を起きていると思う。 身近な人間との関係に疲れている人にはおすすめ。 親切にしてもらっているのに、思ったことを言いづらい相手との間には、本書で指摘しているようなことがあるのかもしれない。 ★★★ 「あなたがいないと私は生きて...続きを読むいけない」と言われたほうは、もう無上の喜びなんです。「たいしたことがない私」が、一人の人間にとってかけがいのない存在になる。 ★★★ 権力は状況の定義権 ★★★★★ 罪悪感は、自分の外部にある規範にそむいていることから生じる ★★★★★ 自分を責めるとは、自分にすべての責任があるという感覚で、裏返せば「みんな自分のせい」という、非合理的万能感にも通じるもの ★★★★★ 虐待的環境を生きるということは、自分の存在を否定することで、世界の合理性を獲得すること ★★★★★ 「自分には何の責任もない」それが承認されることで、はじめて「自分の人生は自分が主体なんだ」と、そういう自分を受け入れられるようになる ★★★★ 孤独とは高級な感覚 ★★★★ 自傷はある意味でマインドフルネス。いま・ここを感じられる ★★★★ 自分を責めてきた人たちは、正義に敏感。間違ったことを許せない。あなたを責めるのは間違っているから、となりやすい ★★★★★ ごみ溜めみたいな自分の経験が、グループの人たちの涙になる ★★★★★ この世でもっとも悲惨で、もっとも残酷な話が、仲間の希望になる ★★★★ 自分と類似した経験をもつ他者が必要
依存症臨床から共依存に論究し、母と娘の関係について、早くから論考してきた著者の考えにようやく時代が追いついてきた。アルコール依存問題に戦争トラウマが絡んでいることがどうどうと言えるようになったり、精神分析とフェミニズムの関係やなど、世界では2.30年前から言われている事が、わが国では、当たり前になっ...続きを読むてきた、私自身の中ではあるが。最後に著者は講演の方が本より面白いと言われているそうだが、確かに講演は脱線だらけで面白いが、本も熱い思いがこもり面白い。本書は両方をミックスした書である。
臨床心理、とくに精神医学、精神分析を専門とする著者である。しかし分析よりも仲間との語り合い(言いっ放し)が治療に効果があるとしている。DVや他のものがあり、共依存については意味を間違っていると手厳しい。 あとがきで、自己肯定感は嫌いであると書いてあったので、本文でもそれを解説する部分があるかと期待...続きを読むを持って読んだが、自己肯定感に言及した部分はなかった。
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