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平安の都は荒れ果てていた。親に名前もつけてもらえず、一生消えぬ傷痕を背負ったイチにとって、盗みも人を殺(あや)めるのも生き延びる手段だった。そこに聞える空也上人の念仏。反発しながらも上人に従うイチは、ある時瀕死の遊女(あそびめ)を救う。初めて感じる人のぬくもり、娘との平穏な時。だがそこに現れたのは……。悪夢、慟哭、人生の再生。地べたに生きる人々を描く著者の傑作。京都文学賞受賞作。(解説・細谷正充)
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Posted by ブクログ
夜勤明けにいっきに読みました。 歴史の教科書に、サラッと書いてある悲田院。 ほかにも、山椒大夫でだまされ、さらわれた親子を思い出すマムシ屋敷。 などの脇役も十分に濃い。
松下隆一『羅城門に啼く』新潮文庫。 京都文学賞受賞作。 何というストーリーと結末なのだろうか。世の諸行無常を見事に表現した佳作である。 舞台となった荒れ果てた平安の都は現代日本の大都会とも重なるところがある。私腹を肥やす政治家や一部の悪党たちが暗躍し、今の時代を謳歌する現代の日本。災害と感染症...続きを読むに苦しみ貧富の格差は広がり、賃金も上がらず、物価上昇は止まらず、いつの間にか世界経済にも大きく遅れを取ったことにやっと気付いた愚かな日本。松下隆一の描いた平安の都は、そんな現代の日本を嘲笑うかのようだ。 舞台は荒れ果てた平安の都。都大路には骸が転がり、雅な生活を楽しむ貴族たちと飢えと疫病に苦しむ多くの民との貧富の格差は激しかった。 19歳のヤマと17歳のクマの3人で人を殺め、盗みを働きながら生き延びる19歳のイチ。イチは親に名前も付けてもらえぬままに捨てられ、人に買われて奴婢となり、その時、左眼に焼きごてを当てられ、一生消えない傷を負っていた。 ある日、イチはヤマとクマの3人で油商人の屋敷を襲い、主人とその妻を殺め、その娘の左耳を切り落とした。しかし、3人は追手に捕まり、まさにその首を斬られようとしていた。凶行をイチとクマのせいにして、罪を免れたヤマ。初めにクマの首が刎ねられ、次はイチの番という絶体絶命のは危機を救ったのは空也という名の上人だった。 イチは上人の元に留まり、反発しながらも都に放置された骸を拾い、弔う日々を過ごす。そんな中、イチは死に掛けた遊女を救う。まるで上人に導かれるようにイチの人生はこれまでと真逆な方向に進んでいく。 本体価格550円 ★★★★★
★3の上。 これはいいな。 さすがはみんみんさんのお勧め作家さん。 ことぶきジローさんのレビューも大変参考になりました。 m(__)m 流行り病や治安の悪化で人がごろごろと死んでゆく平安の都。 そこで二人の仲間と獣のように生きるは元孤児で奴婢だった片目の醜い男。齢十九。 親は知らず、売られて奴婢...続きを読むになったときも名前すらなく、憐れんだ奴婢の女たちにイチと名付けられた。 腹が減れば奪い、気が向けば殺し、欲しくなれば犯す。 あるとき屋敷の押し込みに失敗し、ついに捕らえられたイチは……。 舞台はあまり馴染みのない平安時代ですが何も難しいことはなく、スッと物語の中に入っていけます。 検非違使ってのは警察みたいなもん。奴婢ってのは奴隷だなぐらいの知識で平気。 宗教は嫌いだが、これはいい使い方。 なむあみだぶつ。 悪党でも赦されて極楽浄土へ行けるという都合の良い念仏。 なむあみだぶつ。 心に湧いてくるものを塗りつぶすように唱え続ける。 それでいっぱいにしないと頭と心がどうにかなりそうだから。 求めるな。与えるのや。 悪党として生きてしまった、そう生きざるを得なかった男の物語がわずか200ページに凝縮されています。 生きるのは、ただそれだけで辛い。 安全な時代に生まれ、安穏と暮らす我が身にもブッスリ突き刺さる良作でした。 さあて。 タイトルの羅城門。 自分は学がないもんで、は? 羅生門じゃないのー? なんて思ってしまったが、実はこっちが正解らしい。 もともとは羅城門。 有名な羅生門は芥川のおっさんの創作物であり、今昔物語の羅城門から着想を得たらしい。 ふむう。 創作を本物と思い、本物を偽物と感じるなんて、名が広まるって凄いな。 有名な方を真実と思いがち。 羅城門(事実) ↓ 羅城門(今昔物語) ↓ 羅生門(芥川龍之介、映画) ↓ 羅城門(今作) おかえり羅城門。 で、さらにおまけ。 本作作者さん。雲霧仁左衛門などの脚本家でもあるらしい。 なるほど読みやすいしエンタメ風味で難しくない。 本作で京都文学賞受賞。 ちょっと調べてみたら賞に文字制限があった。 2万8千字以上16万字以内。 400字詰めの原稿用紙だと400枚以内か。 本にしたら200ちょいくらい? それでか。 ずいぶんと遊びがない真っ直ぐなストーリーだなと思ったら制限があったんだなー。 なるほど、なるほど。
これは、かなりきつい作品だ‼️心が晴れる場面がほとんどないし、主人公が救われる兆しが感じられない。最後の赤ん坊の成長には、一縷の望みはあるけれど、彼女が真実を知った時の愁嘆場が予想されて、気が塞ぐ。読んでしまったものは仕方ないから、受け止めなければ。
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