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Posted by ブクログ
わたしの尽きぬ悩みの一つに「病院が遠くて通うのが大変」というのがあります。持病があり専門医に診てもらう必要があるのですが、住んでいる所は医療過疎地域です。
この小説は、同じく医療過疎問題を抱える伊豆半島が舞台になっていて興味深く読みました。
伊豆半島にある産科救急特化型の医療センターに、入局5年目の医師、北条衛が東京の大学病院から異動でやってきます。前任者から聞く話によると、この病院の医師たちは曲者ぞろい、トップの教授は頑固で絶対的な権力を持っているとのこと。
過疎地域に住むわたしは、病院の少なさや高度な医療を受けるためには遠方まで出向かなければならないことに不安を持っていますが、都落ちしてくる医師もまた、不安を抱えてやってくるんだろうなと思いました。でも、伊豆は観光地です。風光明媚な景勝地であり、地元でとれる食材をいかした美味しい食べ物がたくさんあります。食事の描写が素晴らしく、食べることは生きること、そして、幸せなことだと改めて感じました。
産婦人科は、命が産まれる瞬間に立ち会う「生」の喜びとともに「死」のリスクが隣り合わせにあります。伊豆半島の交通事情により、車の運転が困難な山道を2時間かけて妊婦が運び込まれるケースもあり、緊迫する場面の連続です。命を預かる現場で必要なことは何でしょうか。豊富な知識と高い技術を身に着ける努力は大切だと思います。でも、どんなに力を高めても、人は全知全能の神にはなれません。人として生死をわける危機に向き合う時、瞬時の判断、決断ができる底力は、日常生活の積み重ねの中にあるのではないでしょうか。自然や人といった身の回りの世界と日々関わりつながって、失敗したり傷ついたりしながら信頼を築き学んでいくことで、成長できるのが人間なのでしょう。
過疎地で暮らす不安の中に「あした」の希望を見せてくれる作品でした。
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