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Posted by ブクログ
入院生活の長かったこどもの頃、病院のベッドで
「願いをひとつだけ叶えよう」的な童話を読むたび、私だったら?と考えました。
「丈夫な子になれますように」にしたいけど、丈夫になったとしても
ある日突然事故とかで死んじゃったらいやだし、
結婚した人が実はものすごく意地悪な人だったりしたら困るしなぁ。。。
そこで思いついたのが、「幸せになれますように」!
うん、これはいい♪ だって何がどうあっても、幸せになれるんだもの♪
今考えると、体が弱っていたとはいえ、なんてものぐさなこどもだったことでしょう。
本を片手にほくほくしている小さな私に、「コラコラ!」と
デコピン(ちょっと手加減した、70%威力ダウンの)をくらわせたくなってしまいます。
『真夜中のパン屋さん』で人気沸騰の大沼紀子さんが、
坊ちゃん文学賞大賞を受賞した『ゆくとしくるとし』が収められた、この短編集。
もう一作の『僕らのパレード』で描かれる幸せのかたちが、素晴らしいのです!
「タンポポのわたぼうしを一度で吹き飛ばせたら、幸せになれる」
という、4人目のお父さん「よんちゃん」の言葉を信じ、無邪気に生きるサム。
娘にセピア、息子にはTRFが好きだったから、サム、とミーハーな名前をつけ
(韓流にはまった挙句、末息子の名前には「ペ」か「ヨン」か「ジュン」の
どれがいい?と言う始末。。。「ペ」はないでしょうにねぇ。。。)
ひっきりなしに新しいお父さんを連れてくるお母さんを恨みもせず
ある日突然ひと言も喋らなくなったお姉ちゃんのことも
喋らなくても、大好きなお姉ちゃんに変わりはないと受け入れ
自分は頭がいいし運動もできるけど、普通に優しいっていうのが出来ない
と悩む、反抗期真っ盛りの優等生紺野くんを、拙い言葉で慰め
東京で心を壊して故郷に戻り、方向感覚をすべて失って
家と自分を青い糸で繋いでいないと、近所へも出かけられないアヤエの
パン作りを手伝いながら、さりげなく外へと連れ出して。
周りのみんなをおおらかな優しさで救ったサムが
純粋なあまり心の森に閉じ込めていた、受け入れがたい悲劇の記憶を甦らせ
闇に沈みそうになったとき、「糸に繋がれた女の子」だったアヤエが差し伸べた手と
そのあとに続くささやかな幸せのパレードに、心が温められます。
世の中には平等なんてなくて、マイノリティーは排除されがちで、
小さな偏見、小さな悪意に満ちているけれど、それでも世界は回っている。
自分のところに幸せがあっても、それでも誰かのために、
幸せのわたぼうしを探して、吹き飛ばそうとする人がいる。
ハードルを上げ過ぎずに、目の前にある小さな幸せをそっと抱きしめ
身近にいる大切なひとの幸せのために、それがわたぼうしを飛ばすことでも、
初詣で配られる小さな干支の置物を、二度並びしてもらってくることでも
何かできることがある、それがまた幸せなことなのだと
気づかせてくれる、隠れた名作です。おすすめです!
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