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町を歩くチンドン屋のシゲさんが吹くサキソフォンの音色に惹かれ、彼についていった僕。シゲさんは僕に、“あきらめないこと”の大切さを教えてくれた。ある日、町で殺人事件が起きて……(「天の川の預かりもの」より)。その他、アクの強い両親のもと犬を飼い始めた少年、柔道部での上下関係に揉まれる少年……大人の世界の理不尽にさらされながらもひたむきに生きる、ピュアな彼らの成長を描く。昭和の香り漂う懐かしい時代の風景から予想外の展開が待ち受ける、書き下ろしの連作小説(解説・池上冬樹)
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Posted by ブクログ
井上陽水の名曲と同じタイトルを持つ本作。深水黎一郎という作家の芸風の広さは、承知していたつもりだったが、なるほどこれは意外だった。 全3編中、最後の「鎧袖一触の春」が全体の約半分を占める。この聞き慣れない四字熟語が入った中編こそ、本作のメインに違いないが、最初の2編があってこそ、クライマックス...続きを読むが盛り上がる。本作は、順に読んでこそ意味がある。 「天の川の預かりもの」。僕はチンドン屋を見たことがないが、昭和世代として、つい冒険したくなる少年の心理は、よくわかる。「ひょうろぎ野郎とめろず犬」。昔は大抵の家庭がこんな感じだったな。言葉遣いが多少汚くても、根底には愛情がある。何だかいい話だなと思ったら、最後に唖然…。 いよいよメインへ。裏表紙で触れている通り、柔道をテーマにした青春ものである。かつてのスポ根アニメのような乗りだが、柔道に限らず、スポーツに打ち込んだ経験がある人は、頷けるだろう。我々くらいの世代だと、まだ水を飲むなと言われていたと思う。僕自身は運動オンチで、こういう理不尽を経験していないのだが。 全国制覇を狙う巨漢揃いの強豪校に、軽量だけのメンバーで挑む。いかにも漫画的な構図だが、手に汗握る迫真の描写はどうだ。深水さんは、柔道にも造詣が深いのか。危険と隣り合わせで、実際に稽古中の事故も聞く、柔道という競技。圧倒的体格差にひるまず、どうしてここまで体を張れるのか。 それにしても思うのが、柔道の五輪代表選手たちの過酷さである。格技としての柔道と、競技としてのJUDOの違いは、昔から言われていたが、日本代表選手は、その両立が求められ、なおかつ金メダルしか期待されていない。それでも、多くの柔道選手が、1階級に1人だけの五輪代表枠を目指すのだ。 昭和と現在では、部活動やスポーツのあり方も変化している。現在では給水は常識である。変えるべきところは変えるとしても、不変の部分もある。平成生まれの読者でも、感じるものはあるはずだ。
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