Posted by ブクログ
2019年03月10日
順風満帆、挫折知らずで大学生活を終えようと言う時に訪れる最初の挫折が就活。
多くの人が七転八倒するわけですが、この小説では、水越千晴、ほか仲間7人の七転八倒を描いています。
文系の学部(四大の院でない)卒としての就活。
時代背景や、実情などは、文庫の森健の解説が網羅的に親切でわかりやすいです。
僕...続きを読むの場合は、理系の学部卒。卒業研究でやるような実験室の仕事はマスター以上じゃなきゃ仕事としてはありません。が、そんな無理を望まなければ、推薦入学のような就職でした。
小説は、私立のトップの大学をモデルにしていると思います。公立の大学ではだいぶ様子が異なるでしょうし、マスター卒や専門性の高い勉強をしている人たちも異なるでしょう。さらには、大学以外の学校の人の場合はもっとだいぶ違うでしょう。むろん僕のような私立理系とも違います。しかし、とても面白く拝読しました。
ハイライトは、関東テレビの最終面接で失敗し不合格となった後の千晴だと思います。
挫折をどのように乗り越えるのか。人それぞれの性格が反映されるシーンです。
二種類の人がいると思います。
恨みに思い、敵と認識し、戦いを決意する人。
それとは対象的に、自分の課題として認識し、自分でできる対処法を考える人。
この二種類の人間の間には、深くて大きな溝があります。が、僕がそうと気がついたのは、だいぶ歳を取って、近年になってからです。
ちなみに、この小説のヒロイン水越千晴は後者で、失敗の原因を分析し(本人が分析するのではなく、事実が地の文で解説されるのですが)いくつか、学習し、最終的にはほかのものがうらやむような就職先から内定を二つもゲットします。
この逆転劇までの千晴の変化をどう読むか、がこの小説の味わいになると思います。もちろん人それぞれだと思いますが。
今で言えば、少し盛って「この本読みました。」と書いた、失敗のネタについて。
「ずうずうしく適当な感想でもいっておけば合格だったんだろう」
と言う良弘に対し、
「あんなにつまらない本で見栄を張ったわたしが悪いんだし。」
と、自分の中で整理しています。
こういう人と一緒に仕事をしたいな。と僕は思いました。
全ての不具合の原因を他者に求めて、自らは唯我独尊を装い、ハッタリ、口八丁手八丁でうまく泳ぐ人も、
正直に実力で勝負する人も、
就職した後のそれぞれの人生は、それぞれ。うまくいく場合も、失敗する人もそれぞれの場合でいろいろです。一概にどちらが成功し、失敗するとは言えないようです。
ただし、ハッタリが効く人が実績評価も高く、出世する傾向にあるようです。つまり、そこそこ出世した人は皆ハッタリが効く人です。が、評価されなくてもまじめに仕事に取り組んでいる人もいるはずです。(はったりが利くのは、実効性のある仕事をしている人がいるからです。)
このバランスをどう取るかは、もっとえらい経営者層の手腕次第ですので、ぼくらにはなんともすることはできません。それぞれの会社の特徴って、この二種の人間のバランス具合によるところが多いようです。
現場で働く自分としては、千晴のような人と一緒に働けたら気持ちが良いだろうな、と思います。
世の中にはいろんな人がいます。外に出れば七人の敵がいると言いますが、正直に実力で勝負する方向に切り替えた、千晴のような人となら仕事も楽しい、と思いました。