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Posted by ブクログ
うみねこ島で医者をしているナギヒコは、カレハ熱が流行しているので助けて欲しいというサンゴロウの頼みを聞き共に船で出発した。行き先は無人島とされている貝がら島だったが、そこにはうみねこ族とは宿敵関係にあるやまねこ族が隠れ住んでいたのだった。
種族の歴史的軋轢などを描き、なかなかハードな内容を含んでいます。しかしそれを判り易い文章と、クールなサンゴロウとお人好しのナギヒコのキャラクターの掛け合いによって読み易くまとめられています。シリーズを通して書かれている謎や伏線もチラホラ見えており、続きを読むのも楽しみです。
また鈴木まもるによる挿絵がカッコいいんですよね。
Posted by ブクログ
『キララの海へ』に引き続き、サンゴロウとナギヒコが話の中心である。
今回サンゴロウは、ナギヒコに頼みごとをする。
医者であるナギヒコに往診を頼むのは普通といえば普通なのだが、
まずもって、サンゴロウの方からナギヒコにものを頼むのが珍しかった。
そして、往診のために用意するようにと頼んだのがカレハ熱の薬をたくさんと予防ワクチンだった。
その行き先は、船で一日。
カレハ熱は、うみねこ島ではこわい病気ではない。
うみねこ族の子どもは、うまれてまもないうちに予防ワクチンをうけるからだ。
一体行き先はどこなのか?
黒ねこサンゴロウシリーズは、語り手がさりげなく毎回変わる。
『旅のはじまり』では、
ケンが語り手で、ケンが自分のことを「ぼく」と言っていた。
『キララの海へ』は、サンゴロウが語り手で、「おれ」で話が進んだ。
今回は、ナギヒコが語り手で、「わたし」が話を進めていく。
そして、毎回の語り手が心の中で、あるいは対話の中で、印象的な言葉を紡いでいく。
『キララの海へ』は、サンゴロウが語り手なので、海や船の描写が多かったが、
本書はナギヒコが見るサンゴロウがおもしろい。
正論を言うサンゴロウに、「おまえねえ、ただしいことばっかりいうなよ。
世の中って、そんなにただしくできていないんだよ。」と言ってみたり、
サンゴロウの船であるマリン号を見ながら、「たぶん、船は、船長ににるんだ」と思ってみたり。
ふたりのやりとりも微笑ましい。
サンゴロウとナギヒコは、キャラクターは異なるが、
心地よい友情関係を築いていることがわかるのだ。
主人公が自分語りをしているときよりも、
他者が主人公を語っているときのほうが、主人公の姿がよく見える場合もある。
自分のことは案外わからないし、当たり前に思うところは語らずに飛ばしたりもする。
他者にはそれは当たり前ではないから、しっかり描写する。
主人公の内面描写が出なくても、かえって様子が詳しかったりもするのだ。
語り手が多様という手法はシリーズを続ける上で
飽きさせないひとつの方法と見ることもできる。
行った先で、サンゴロウとナギヒコが体験したこと、それは、ここでは多くは語らないでおく。
ナギヒコは、正論ばかり言うサンゴロウに対して、世の中はそんなにただしくできてないと言うような
社会にもまれて生きてきたタイプだったが、ここでは、「患者は患者だ。どこの島だって、関係ない」という思いで、
「病気をなおすのが、わたしの医者としてのつとめだ」という思いで、対処していく。
ナギヒコは医者として、サンゴロウは船乗りとして、ただすべきことをしたのだ。
ナギヒコが語るサンゴロウもカッコ良いのだが、
ナギヒコ自身も、サンゴロウの影響で、
そして、この経験の中で、その個性が引き出されていく。
本書では、うみねこ島に記憶喪失で流れ着いた頃のサンゴロウのこともナギヒコの回想で出てくる。
そして、物語の後半で、ナギヒコは、サンゴロウのルーツに向き合わざるを得なくなる状況に追い込まれる。
こうして少しずつサンゴロウの謎を解くための情報が読者の前に示されていくのだ。
本シリーズは1冊1冊の冒険のエピソードがおもしろいだけでなく、
社会的なことを考えさせるテーマ性も持っている。
また、サンゴロウのルーツという大いなる謎がシリーズを貫く大きな物語として存在し、
それが全体としてのおもしろさと深みを与えているのだ。
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