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Posted by ブクログ
先日、吉川洋『日本-没落か再生か』という今の時代を考えるうえでとても参考になる本を読んだ。
その本の冒頭に、「森嶋通夫の日本没落論」のタイトルで、この本を紹介しているが、その内容が非常に手厳しい。
特に戦後の教育批判については、ここまで言うかと思うほど厳しいが、真実でもある。一体どんな本だろうと読んでみたいと思い手にとった。
この本が書かれたのは1990年末。このままどと日本は没落すると、2050年の日本を予測するが、驚くほど現在の日本がおかれた状況を見事に予見している。
精神の荒廃、金融の荒廃、産業の荒廃、教育の荒廃と論ずるが、このうち特に、教育の荒廃が手厳しいと感じた。
「戦後教育は、誰をも贔屓したり特に貶めたりしないよに、完全に無差別の原理に則って行われたことを指摘しておかねばばらばい。全ての価値判断は排除さてたが、そういう時代が続いた結果、日本人は価値判断を行う能力を失ってしまった。教育とは知識を詰め込むことだと考えられ、生徒たちは、なんでも丸暗記するのは巧みになったが、理論的思考は不得手で、したがって意思決定力もすっかり弱くなった。」
この本が書かれた当時、大学生であった僕は耳が痛い。
今の時代、こんなにもズバッと舌鋒鋭く日本の未来を予見する経済学者はいるのだろうか。
因みにこの本は、岩波現代文庫で2010年に発行され、2026年で17刷。まだまだ世に広く読まれるべき本だと思う。
Posted by ブクログ
なかなか耳が痛い内容だなというのがまずは最初の感想です。筆者は100年以上前に生まれたザ戦前の人だなという考え方というところはありますが、改めてこういった方が書いた本を読むと読書っていいなという風に思える。普段であれば古い考え方だと一蹴してしまうところだけれど、戦前は戦前でしっかりとした考え方をしているし、そしていかに自分の考え方は今の教育によってできているのかということを痛感した。現代人に対する筆者の捉え方は現代人からみても確かになと思えるところがあり、それが数十年変わっていない。そして今後も当面変わらないのだろうという感覚がある。
大学、エリート思想に関する考え方は私も同じようなことを考えたことがあり、通ずるものがあった。一方アジア共同体やイギリスに関する捉え方は違和感があった。今の中国とうまくやっていけるという感覚は簡単には持てないし、帝国主義の各国は皆反省すべきでイギリス賞賛は若干違和感がある。本書では考え、議論して、行動することを推奨しており筆者への批評も望むところなのだろうと思う。
今後の日本を考える上でぜひ一読の価値ありです。
Posted by ブクログ
2050年に日本はどうなっているかを予見した書籍。
森嶋氏は没落すると考え、それを防ぐために東北アジア共同体を作ればよいと提案する。政治的イノベーションを起こさないと駄目だと。
考えさせられる点が多多あったが、政策立案者にこそ読んで欲しい書籍だった。
大学の3、4年での専門教育を1、2年で行い、3、4年で教養教育を行う。1、2年を修了した者にも、4年の教養教育まで終えた者にも同じ学士の資格を与えて、大学教育の短縮化を図るなど興味深い提案もあった。
本格的な大学は日本には5校もあれば良いとも言っている。
本当に知的に成長するのは、10代後半までだとも言っている。
評者は自分が学者として身を立てられなかったのは、不毛な10代後半を過ごしたせいかという気がして悲しかった。
Posted by ブクログ
まず驚くのは、出版された年が今から20年以上も前にもかかわらず、現状の日本社会の問題点を的確にあぶり出したところだ。著者の森嶋通夫は、社会の土台として、人間の存在が重要だと繰り返し説くが、なかでも教育を注視する。ここを適切に修正しないと、長期的に見て日本は衰退を免れないという。
森嶋は、現代の大人たち(この場合、戦後教育を受けた大人たちを指す)が知識の丸暗記に長けている一方で、価値判断や論理的思考が欠けていると批判する。また、戦後教育の影響で、日本社会には社会的信条や倫理的規範、すなわちエートスが頽廃していると批判する。それが抽象的な、超越的なものに対する義務感や責任感の欠如、倫理上の価値や理想などの抽象的な考えへの無関心を招くという。詰め込み教育の批判は、ゆとり教育が招いた結果を見ると疑問を呈してしまうが、エートスについては今の日本の問題の本質を捉えている。すぐに役立つことや効率が重視される一方で、先ほどあげた抽象的なもの、たとえば哲学や宗教が軽視される現状を見ると、同意せざるをえない。
それだけではない。森嶋は人間の労働を担う機械やコンピュータの利用に警鐘を鳴らす。それは、機械の導入によって、人間が機械に従属する立場となり、疎外感を招くためである。これは、今後普及されるであろうAIに対する弊害という見方もできる。
ここまで、日本が衰退する要因を見てきたが、森嶋は批判するだけだなく、衰退を少しでも防ぐための案を出す。それが、本書の後半で言及される「東北アジア共同体案」である。これは、日本と価値観の近い中国や韓国などと連携することであり、これが日本の没落を防ぐ唯一の救済案だと主張する。そのためには、戦前で悪化した隣国の関係を清算しなければならないと結論づけて本書は終了するが、昨今の国内政治や国際情勢から見て、この案の実現は難しいだろう。
Posted by ブクログ
最初の印象は、生臭い「徒然草」のようだったのだが、読み進むうちに、かなり熱を孕んだ遺言のようなものに見えてきた。
50年後の社会は、現在の小学生が官僚トップに、中学生が財界トップに、大学生が政界のドンになることを想像すれば、どの程度の社会になるのか見える・・・これは結構キビシイ見方であり、「いつの世も若者は頼りない」ということに過ぎないのかもしれないが、精神も金融も産業も教育も、このままでは荒廃していくという森嶋先生の警告は、感覚として頷いてしまう人が多いだろう。
解決の方策として、欧州共同体ならぬ東洋共同体を提言する。アメリカはいざとなると日本ではなく中国を取るであろうという洞察は、イギリス仕込みの素直な解釈であろう。そうなる前に日本としての打ち手は?というのが難問だ。安倍さんに聞かせたい話ではないか。うなずける点もあるが、。中国や韓国との間に日本が問題意識を共有できることができるかは疑問。
あと、英語をよく使う人の文章によくあるように、明快で大ぶりな文章。
Posted by ブクログ
あの森嶋先生が90年代末に書いた2050年を見すえた書。
正直、読後感は悪い。
森嶋先生自身、「経済学、社会学、教育学、歴史学など取り混ぜた社会科学領域での一種の学際的研究-私がかつて交響学的社会科学と呼んだもの-」を歯に衣着せぬ語り口で、日本の没落を論証している。
人口の分裂、精神・産業・金融・教育の荒廃、、、
教育の荒廃についての具体的提案ついて、大学進学率を12-15%に押さえるとか、大学と専門部を分けるということは過激に見えて実はそのくらいしないと没落は防げない状況なのかもしれない。
また、「唯一の救済策」として提案されている「東北アジア共同体」構想を提案するには今のタイミングは最悪と言える。
森嶋先生が「没落論」で無視しているという天災地変として東日本大震災が起こった。このことが日本を日本人を変える「外生的要因」になるのかどうか。
Posted by ブクログ
この本のはしがきは一九九九年一月六日の日付です。
そこで森嶋さんは、日本は今危険な状態にある。日本はどうなるかと誰もがいぶかっている。わたしも本書で、照準を次の世紀の中央時点―二〇五〇年―に合わせて、そのときの暴落しているかどうかを考えることにした。
そのためには、まずなぜこんな国になったのかが明らかにされねばならない。それと予測が本書の問題である。
と記載されています。
この本で森嶋さんが心配して予測をした2050年よりもはるかに早い現在の二〇二二年の時点で、もうすでに日本の没落、日本人の衰退が顕著になってしまっています。
現実を見ることは悲惨である。彼等の人生、そのためには、現在の彼らのでてきた背景をもう少し深く観察する必要がある。
現在の日本はいたるところの部門で精神的に崩壊している。こういう人に「頑張れ」と言っても無理である。彼等でも再起可能なように環境を変えて、彼らを力づけてやることが、まず第一に重要である。
没落した国民は、発言力が弱くなり、世界史はその国民を無視ないし置き去りにして前進していく。
歴史への貢献度は非常に低くなってしまうから、そんな国民は一流国民と見られることはない。
停滞が続けば、せいぜいよくて、人々が過分の物質的生活を享楽して時を潰すだけの国に終わってしまう。
道徳の退廃は思想的危機である。
日本では性的なモラルが他国より桁外れに退廃しているとみてよいであろう。
日本は卑屈なまでに忠実な敗戦国
徳川末期に欧米の使節団が日本にきて日本人に下した採点は、文化的にも経済的にも程度は高いが、政治的には無能であるということが現代でも同じ。
国民は無気力であり、国民が無気力だから政治は悪いままなのだ。
こういう状態は、今後50年近くは確実に続くであろう。そのことから私たちが引き出さねばならない結論は、残念ながら日本の没落である。
このままでは私たちの子供や孫や曾孫たちがあまりにも可哀想だ。
無気力な「土台」が続く限り、日本は没落を止めることができないだろう
非弱く自信のない構造の下では、日本は蟻地獄を脱出する力を持たず、土台は動かず、日本の苦悩は長く続くしかない。
日本に今必要としているのは記憶力に優れた知識量の多い、いわゆる博学の人ではなく、自分で問題を作り、それを解きほぐすための論理を考え出す能力を持った人である。
「アジア共同体」ができないようなら日本は孤立、衰退することになるだろ。かって繁栄し、衰退したローマ帝国やスペインのように。
負けた場合、なぜ負けたかをだれしも考える。反省してまた挑戦し、また負ける。負けた人はその原因を、間違った事実―日本人だから―に帰着させてしまう。
そうするとその人は一転して門戸を閉ざして鎖国派に転じる。そういう人は、外国の悪い点を一々摘発して、外国憎の悪夢を膨らませていく。
そして日本が正しかった事実にばかりに眼を向けて、日本はこのようにいつでも正しいのだと主張する。
しかしなにが「正しい」のかの判断も一定不変ではない。
読み終わった後で、どのページか探せなかったのですが、この本のどこかに記載されていた、「多くの日本人は善人だけれども、力の弱い人」であり、私はそういう人が大嫌いだと、厳しく書かれています。
言われてみれば、そういう人達というのは考えてみると、要するに人間としては「赤ん坊」や「子供」と同じようなわけです。
つまり大多数の日本人達というのは、人間としてはたとえ善人だとしても、「赤ん坊」や「子ども」と同じように、「力の弱い」「力のない」人間達なのだということを思わざるをえませんました。
悲惨で惨めな現在の日本人の置かれている境遇を直視していき、いま現在と将来の日本と日本人に明るい見通しがなくとも、日本人同士が力を合わせていき、一人でも多くの日本人達が「力の強い人」に成長をしていく以外にはないわけです。
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