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作品一覧 2023/08/18更新 イギリスと日本 その教育と経済 試し読み フォロー 近代社会の経済理論 値引きあり 試し読み フォロー 産業連関論入門 値引きあり 試し読み フォロー 資本主義経済の変動理論(現代経済学叢書) 値引きあり 試し読み フォロー なぜ日本は没落するか 試し読み フォロー 1~5件目 / 5件<<<1・・・・・・・・・>>> 森嶋通夫の作品をすべて見る
ユーザーレビュー イギリスと日本 その教育と経済 森嶋通夫 836 森嶋通夫 1923年大阪府生まれ。1946年京都大学経済学部卒業。大阪大学教授、エセックス大学教授、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)教授を歴任。1976年文化勲章受章。2004年7月逝去。大阪大学名誉教授。LSE名誉教授。イギリス学士院会員。著書に『イギリスと日本』 『続イ...続きを読むギリスと日本』 『政治家の条件』 『思想としての近代経済学』(以上、岩波新書)ほか多数。 事実、英国は日光の非常に乏しい国でありまして、ビタミンDの不足のために、「くる病」が非常に多い。ですから、「くる病」をもって英国病というのは、きわめて穏当であるかと思います。しかし、ここで「くる病」の話をすることは、経済の話を期待して、せっかく来られた皆さんに失礼でございますから、何とか経済的なイギリス病とは何かというようなことについてお話して、ご満足いただければ、拍手喝采でお帰り願いたいと存じます。 日本の皆さんは「イギリスにはティー・タイムがある。午前にも午後にもティー・タイムがあるから、仕事の能率があがらない」とよく言いますが、イタリーやスペインのシエスタほどではないにしても、ティー・タイムは日本人にとっては、実にいらいらするものです。けれどもその間の時間的ロスは、大学の職員の場合、午前午後合せて長くて一時間、短ければ三、四〇分ですから、「よく遊び、よく働け」という原則をふみはずさない程度ならば、ティー・タイムの制度は生産性の向上にプラスするともマイナスであるとも決しかねます。 その後、そのレクチャラーは抜擢されまして三十二歳の若さでマンチェスター大学の教授になりました。イギリスの大学で、その年で教授になるというのは稀有のことです。炭坑夫の子が一転して、エリートになったのです。もう一人私が知っている若い教授は、フィッシュ・アンド・チップスの店の子どもでありますが、フィッシュ・アンド・チップスというのは日本でいえば、おそらくうどん屋に該当するでしょうか。本人にさえ力があれば、イギリスでは、うどん屋の子や炭坑夫の子が大学教授になるのに、何の障害もありません。 ところで通常の人間の場合、その人が感じる満足度は、その人の持っている物の数量だけでなく、他人(たとえばライバル)が持っている物の数量にも依存するものですが、イギリス人は特別で、彼らは他人が何を持っていようと動じません。ひたすら自分の感じる満足は自分の持っている物の数量だけに依存すると信じて、他人の持ち物には無関心であります。たとえば、偽物のワニ皮のハンドバッグをもってパーティに行ったら、友人が本物を持って来た場合、目がくらくらとする娘さんがいるでしょうが──そうして私はそういう娘を可愛いく思いますが──、イングリッシュ・ガール(とくにインテリ階級のイギリスの娘)は、そんな場合、すぐネバー・マインドとあきらめてしまうのです。したがって、よし他人の持ち物に影響されたとしても、その効果はすぐ消失してしまいます。そしてイギリス人は、自分がそうだから他人もそうだろうと思います。こうして全員がそれぞれの効用関数の独立性と、相互間の無影響性をみとめますと、お互いにお節介はしなくなります。 日本の最初の憲法である十七条憲法第一条において聖徳太子が、「和を以て貴しとなす」といわれたのは、このように考えれば、彼の単なる思いつきや、偶然ではありません。和は大和魂の根幹であります。ところで大切なのは、その次であります。和が一番貴い徳性であるといっても、和とは何であるかがはっきりしていなければ、「Xを以て貴しとなす」といったのと、何らかわりがありません。聖徳太子は大変賢明な人でしたから、その点をよく心得ていて、他の条文で和とは何であるかよく説明しています。すなわち「和」とは兄弟や友人と仲良くする、それから親や目上の人のいうことをよく聞く、さらに多数派(マジョリティ)の意見に従うことであると説いています。したがって、上の人の命令に服従し、多数派に対して従順なのが大和魂の持主であり、そうでない人は下船してもらう。このようにして日本は、国内の平和、治安を保とうとしたのです。 パブリック・スクールはアメリカでは公立校を意味しますが、イギリスでは逆に私立校のことをいいます。いかにイギリス人が天の邪鬼でも、パブリック・スクールを私立校と訳するのは、意訳がすぎますから、おそらく公衆学校と訳すべきでないかと思います。昔はお金持の子弟は学校などに行かずに、各家庭で個人教育を受けていましたが、それほど金持でない家庭の子どもは、そのような教育を受けることができませんので、集団教育で我慢しなければなりません。こうして集団教育すなわち公衆のための学校教育がはじまったのですが、このような教育は近代国家になるはるか以前のことですから、当然のこととして、公衆学校は公立でなく、私立でありました。このような公衆学校は時代がたつにしたがって、歴史のある立派な学校になりましたから、公衆学校すなわちパブリック・スクールと言えば、歴史のある立派な学校のことを意味するようになりました。これらの学校は、その財政的基礎もしっかりしていますから、国家の援助を受けなくても、独立(インデペンデント)に経営していくことができます。 当然のこととして、誰しも子どもをパブリック・スクールにやりたがりますが、経済的な理由その他で子どもを志望校にやれなくても、イギリス人は決して絶望したりしません。彼らは、ある意味では、学校など何処を卒業しても同じことだと思っています。どの学校を出ても大した違いはないと考えています。おそらくイギリス人は、日本人が有名私立高校や東大に固執しているのを理解することができないでしょう。「どの学校を出ても同じだ。学校はきめ手でも何でもない」という意味では、イギリスには学校差はありません。しかしながら、別の意味ではイギリスにも学校差があります。「学校差はなくて学校差がある」という矛盾した命題を後ほど説明したいと思いますが、それに先立って準備として、まず国家検定試験制度について説明しておきましょう。 このような大学は決して楽園ではありません。したがって若い人も勉強が好きでない限り、大学に行きたがりません。彼らはつまらない思いで三年間大学に行くよりも、その分だけ早く、職場に飛び出して、実績をつくっておいた方が、ずっとかしこい生き方だと考えます。その上に、イギリスでは十六歳で義務教育がおわれば、親も子どもも一人前になったと考えます。子どもはお金の上でも、親に頼らなくなり、大学へは親のお金でなく、奨学金で行こうとします。 私は昔、高木貞治(数学者)の随筆を読みましたとき、「遊びでも本気にならなければ面白くない」という言葉を読んで非常に感銘を受けました。駆け足の百メートル競走や、タックルのないラグビーが面白いはずがありません。同じように大学生活も本気で生活しなければ、面白くないにきまっています。いまの学生が大学生活が面白くないというのは、本気で勉強していないからだと思います。 Posted by ブクログ なぜ日本は没落するか 森嶋通夫 この本のはしがきは一九九九年一月六日の日付です。 そこで森嶋さんは、日本は今危険な状態にある。日本はどうなるかと誰もがいぶかっている。わたしも本書で、照準を次の世紀の中央時点―二〇五〇年―に合わせて、そのときの暴落しているかどうかを考えることにした。 そのためには、まずなぜこんな国になったのかが明ら...続きを読むかにされねばならない。それと予測が本書の問題である。 と記載されています。 この本で森嶋さんが心配して予測をした2050年よりもはるかに早い現在の二〇二二年の時点で、もうすでに日本の没落、日本人の衰退が顕著になってしまっています。 現実を見ることは悲惨である。彼等の人生、そのためには、現在の彼らのでてきた背景をもう少し深く観察する必要がある。 現在の日本はいたるところの部門で精神的に崩壊している。こういう人に「頑張れ」と言っても無理である。彼等でも再起可能なように環境を変えて、彼らを力づけてやることが、まず第一に重要である。 没落した国民は、発言力が弱くなり、世界史はその国民を無視ないし置き去りにして前進していく。 歴史への貢献度は非常に低くなってしまうから、そんな国民は一流国民と見られることはない。 停滞が続けば、せいぜいよくて、人々が過分の物質的生活を享楽して時を潰すだけの国に終わってしまう。 道徳の退廃は思想的危機である。 日本では性的なモラルが他国より桁外れに退廃しているとみてよいであろう。 日本は卑屈なまでに忠実な敗戦国 徳川末期に欧米の使節団が日本にきて日本人に下した採点は、文化的にも経済的にも程度は高いが、政治的には無能であるということが現代でも同じ。 国民は無気力であり、国民が無気力だから政治は悪いままなのだ。 こういう状態は、今後50年近くは確実に続くであろう。そのことから私たちが引き出さねばならない結論は、残念ながら日本の没落である。 このままでは私たちの子供や孫や曾孫たちがあまりにも可哀想だ。 無気力な「土台」が続く限り、日本は没落を止めることができないだろう 非弱く自信のない構造の下では、日本は蟻地獄を脱出する力を持たず、土台は動かず、日本の苦悩は長く続くしかない。 日本に今必要としているのは記憶力に優れた知識量の多い、いわゆる博学の人ではなく、自分で問題を作り、それを解きほぐすための論理を考え出す能力を持った人である。 「アジア共同体」ができないようなら日本は孤立、衰退することになるだろ。かって繁栄し、衰退したローマ帝国やスペインのように。 負けた場合、なぜ負けたかをだれしも考える。反省してまた挑戦し、また負ける。負けた人はその原因を、間違った事実―日本人だから―に帰着させてしまう。 そうするとその人は一転して門戸を閉ざして鎖国派に転じる。そういう人は、外国の悪い点を一々摘発して、外国憎の悪夢を膨らませていく。 そして日本が正しかった事実にばかりに眼を向けて、日本はこのようにいつでも正しいのだと主張する。 しかしなにが「正しい」のかの判断も一定不変ではない。 読み終わった後で、どのページか探せなかったのですが、この本のどこかに記載されていた、「多くの日本人は善人だけれども、力の弱い人」であり、私はそういう人が大嫌いだと、厳しく書かれています。 言われてみれば、そういう人達というのは考えてみると、要するに人間としては「赤ん坊」や「子供」と同じようなわけです。 つまり大多数の日本人達というのは、人間としてはたとえ善人だとしても、「赤ん坊」や「子ども」と同じように、「力の弱い」「力のない」人間達なのだということを思わざるをえませんました。 悲惨で惨めな現在の日本人の置かれている境遇を直視していき、いま現在と将来の日本と日本人に明るい見通しがなくとも、日本人同士が力を合わせていき、一人でも多くの日本人達が「力の強い人」に成長をしていく以外にはないわけです。 Posted by ブクログ イギリスと日本 その教育と経済 森嶋通夫 ロンドン大学教授が、イギリスと日本を対比しながら、英国病、イギリスの中等教育・大学、新日本列島改造について語る。経済企画庁、日本経済研究センター、関西経済連合会での講演を基に。著者の経験に基づいた感想。理論書ではない。 Posted by ブクログ なぜ日本は没落するか 森嶋通夫 1999年に2050年を予測してなぜそのときにこのままだと日本が没落し、また没落しないための希望について書かれているが、2050年をまたず、現在の状況はこの本で予想されている状況に大変似通っている。 現在の日本の停滞ぶり、あるいは没落への坂を下り始めた状況の原因が何であるかを知りたい人はこうして文庫...続きを読むとしても出たので手に取ってみるべきだろう。 Posted by ブクログ イギリスと日本 その教育と経済 森嶋通夫 すっごく上品な本! 著者がいいのでしょうね。 岩波の記念フェアにも含まれるはずです。 内容としては教育なのでそこまで興味なかったんですけど、 吸い込まれるように読めました。 さすが岩波書店。 Posted by ブクログ 森嶋通夫のレビューをもっと見る