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教育はしばしば失敗するし、学校は本質的に退屈である。にもかかわらず、学校や教育は世界を広げてくれる――。教育の目的から、学校の役割、道徳教育やAI社会まで、広い視点と多様な角度からとらえなおす。
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Posted by ブクログ
学校の役割について初学者向けに考察したスタンダードな本。世界の縮図として、教育機関として、社会階級の合理的説明として、シグナリングとしてなど学校の役割について様々な面から軽く触れ、次に読み進めるべき良本も複数挙げている。
全てに同意する訳ではないが、社会の中での学校の役割やその範囲と責任などに問いを立て、筆者なりの意見が展開される。二項対立的な論点がたいへん読みやすく、考えさせられる。
学校教育が何をしているのか、学校教育ができることは何なのかを明らかにしている。経験では学びきれない知を扱っていることを、現代の学校教育は忘れている。 日本の子どもに対する教育はほとんど家庭と学校によって行われている。特に、学校は(現状)唯一の教育機関であるから、最大かつ際限なく教育活動を拡張させてき...続きを読むた。一部の教師による「すごい授業」「すごい指導」は再現できないものが蓄積されてきた。 「私は『教育(education)』を定義するとき、『教育とは、誰かが意図的に、他者の学習を組織化しようとすることである』という定義を与えています。」(p18) 「もう一つ、他者という点で重要なのは、教育する側にいる自分が望ましいとか必要だとか思うものを、他者、つまり被教育者がそのように取ってくれるとは限らないということです。」(p22) 「教育の定義の三つ目のポイントは、被教育者の学習を『組織化しようとする』です。もって回った言い方になっていますが、『しようとする』なのです。だから、失敗するかもしれません。でも成功するか失敗するかにかかわらず、それは教育だと考えます。」(p24) 「教育の難しさのポイントの一つは、教育をしても学習が発生しないことがあるし、逆に、教育なしでも学習は発生するということです。」(p26) 「学校教育の影響力は限定的だということです。」(p32) 「第一に、学級という他から切り離された空間に、子どもたちを囲い込むことで、他の社会化エージェントの影響を遮断します。……第二に、教師—生徒という上下関係のある役割構造によって、それぞれのふるまい方を決めてしまいます。……第三に、学級という制度は、時間と場所とメンバーを固定して、継続的に教育的な相互行為が可能になるように作動します。……第四に、教師と他の生徒とのコミュニケーションは、自分に何が欠けていて、何を学ばなければいけないのかを生徒に確認させます。……第五に、成績評価(記録でもあり選別でもある)を通じて、長期的な参加を個々の生徒に動機づけます。……最後に、建物や教師の確保、カリキュラムなどの『補助的装置』が、持続的な教育作用を支えています。」(p35-36) 「もう一つの補足は、そういう制度的仕掛けに対して、違和感や嫌悪感を抱いたり、つらさを感じたりする、一部の子どもがいるということです。」(p37) 「教師たちはしばしば、学校教育の限定的な影響力をもっと高めようとさまざまな手を打っていきます。……一つには、学校でのあらゆる活動を『教育化』しようとしたり、その結果、過度な統制が生じたりする、ということです。……学校の外の、他の社会化エージェントを抑圧したり取り締まったりして、子どもの身の回りの環境を『教育的』なもので満たしてしまいたいという衝動を、しばしば大人は持っています。」(p38-40) 「目的は、意図して『こういうことをやろう』『やるべきだ』ということです。昨日とは、何かの作用が生じる、生じているということです。」(p52) 「それはともかく、この条文で私が注目したいのは、『平和で民主的な国家及び社会の形成者』という部分です。……いわば、『一人ひとりが未来の新しい社会を作り出していく主人公のような存在になること』が目指されているのです。」(p55) 「教師は『教育の目的』を見失わないようにしながら、教えていることの意義や面白さを、自分では明確に意識しながら教えるべきだと思うのです。……もう一つには、『勉強の仕方をいろいろ工夫させる、考えさせる』ということを、学習指導の際のポイントの一つとして、もっと重視していけばいいと思うのです。」(p75) 「学校で教えられる知は、子どもの日常生活を超えた知だからこそ重要だということです。ただし、そうであるがゆえに、その内容は子どもにとってなじみにくいものだ、ということも説明します。」(p87) (以前は親のもとで育ち、親と同じ仕事をして生きればよかったが、)「社会が発展して複雑になり、子どもたちが親とは異なる生き方をするようになっていくと、『提示』だけでは不十分になっていきます。……『この結果、おとなが自らの生活を生きて見せる『提示』とは別に、社会的・歴史的文化のうち、経験によっては子どもが到達し難い部分を何らかの仕方で彼らに知らせてやるという課題が生じる。』……学校は、この世界がどうなっているかということを、言葉や記号を使って子どもたちにk学ばせる役割を果たすというのです。」(p88-89) 「日常の生活世界での経験では学べないものが、『カリキュラム化された知』として学校で学べます。……重要なのは、それによって、子どもたちはより広い世界に出ていくことが可能になるということです。」(p96) 「いずれにせよ、多くの子どもたちに『勉強がつまらない』というふうに映るのは、学校の知の本質です。つまらないと思った人は多いと思いますが、学校はそういうものです。身近な日常経験とは切り離されたものを教わっているので仕方がありません。」(p100) 「経験は狭いし、経験し続けることでこの世の中のいろいろなことを学べるほど人生は長くない、ということです。」(p101) (道徳について)「一つは、『あなたはどう生きるか』という、個人的な生き方やふるまいに関する主題ばかりが大半を占めていて、その結果、社会や世界で起きている複雑な出来事についてきちんとした善悪を判断できるようになる、という視点が十分でないと思うのです。」(p130) (バウマンの説について)「道徳が問題になるときの焦点は精神的な『距離』だというのです。精神的な距離が遠くなると道徳的無関心が生じる。」(p138) 「『人類が作り上げてきたよりすぐれた知的財産』をすべての子どもにできる限り多く学ばせるというのが、学校教育として望ましいことになります。」(p163) (個別最適化の学びについて)「一つには、みんなで一緒に共同で学ぶことそれ自体の意義が失われかねないということです。学習の孤立化です。……どの子も自分の学力に見合った学習ができるということが語られますが、家庭環境の差の影響を増幅させることになります。」(p172) 「もちろん、先生の中には、上手に工夫した教え方で、この世界の真理や真実に目を開かせてくれて、驚きや感動に満ちた授業をしてくれる先生もいるかもしれません。でも、カリキュラムはギッチギチだし、先生は忙しいし、何よりも教師からの思いが生徒に伝わるとは限らないから、全国の学校のすべての授業が驚きと感動にあふれることは、とても期待できません。」(p213) 「学校が提供するのは、せいぜい『仮のアイデンティティ』です。『勉強がよくできてほめられる私』とか、『志望校入学に向けて頑張っている私』といったアイデンティティは当面の学校生活を充実したものにしれくれます。……しかし、これらはいずれも、学校を卒業した後まで続いていくものではありません。」(p217) 「学校は『世界を集約した知』だというお話をしましたが(第3章)、その知は網羅的で、しかも概括的なものにすぎないから、そのまま何か特定のものについての関心や問題意識を与えてくれるわけではありません。」(p219)
たいへんな良書。教育と学校について、丁寧に書かれた本。学生はもちろん、親の立場でも読んで得られるものが多そうな本。 学校や教育について、その基本をこのように学べる本はなかなかないし、きちんと出典が丁寧に書かれていて気になるトピックを掘れるのが良い。 道徳の章で饒舌になるのが笑ってしまったのと、AIの...続きを読む章がちょっと飛躍が感じられる点はひとこと添えておく。ただ、AIの章に関しては、自分が専門に近いから違和感を感じやすいだけかもしれないけれど。 大変良い本である一方、本質的な本なので、これを読むような生徒/学生は教員からすると相手したくないだろうなという気はする。
各章がしっかり分かれていて、テーマがハッキリしていて分かりやすかった。教育は身近なものなのに、じっくり考えたことが無かったので新鮮だった。
学校は社会に出るまでに知識や技能を身に付ける場所であり、社会に出るまでの狭い廊下である。退屈であるが、大切である。
友人で、とっても頭がいいのに、まったく勉強をしなかったため、学校の成績が冴えなかった男がいるのですが、この本を読んで、その友人のことを思い出しました。 「学校は、子どもの興味の有無とは関係なく、将来、仕事をする上で必要になる知識を満遍なく教えるところであるため、興味をもてない項目について、子どもは退...続きを読む屈になりがちである」という趣旨のことが、この本には書かれていまして、上記の友人の、勉強への取り組みについて、すごく納得できました。 学校教育は、誰もが触れることになる、とっても身近なものですが、実は、その目的については、明確に理解できていない人もいると思います。 そういう人にこそ、この本はおすすめです。 ちなみに、広田先生の本については、以前からずっと「読まなきゃ」と思っていたのですが、広田先生の本を読んだのは、この本が初めて。 いいタイミングでいい本に出合えたと思います。
とても納得できる内容でした。特に道徳教育についての第4章で「『社会を変える』という視点が弱い」というのは強く感じます。最近の子どもがおとなしいのは、このような教育を受けてきたからか、あるいは、社会の風潮がそうさせているのか、どちらもなのか。 学校という装置によって子どもたちのアイデンティティーは未確...続きを読む定なままにされてしまっているからこそ、自分が何をやったらいいのかわからないという事態が生まれてしまう、学校は長い廊下、など、学校という場について、うまく説明されている本です。 また、「個別最適化」を追求していくと差異化の増大ということ自体が善になる、というのは、たしかにそうかも知れないと思いました。
タイトルに惹かれて気楽に読み始めた。 話し言葉で書かれているため、読みやすいかと思いきや、辞書を片手に読みすすめ、かなり深い内容でした。 読み進めてみて、タイトル通り学校は大切だということが、より一層感じられた。 子どもたちにどれだけ興味を持たせることが出来る先生がいるかは?(個人の感想) 作者...続きを読むは若者に向けて、期待を込めてこの一冊を書いている。 悲観しすぎないで、こんな根拠もあるし未来は明るい、ただし自分は何が出来るか、自分と自分の周りの狭い世界だけで考えるのではなく、「善き世界の倫理」を心に持って、世界をよりよくしていって下さい。というメッセージが伝わりました。
わかりやすく解く学校の役割 学校関係者であるが、かなり勉強になった。近年、学校に求められる社会的な役割が多くなってきている。そんな昨今の教育事情をコメニウスの考え(教員採用試験ぶりに聞いた)や、教育基本法、日本国憲法等を根拠に教育学的・社会学的な用語を使用して本来の学校の意義を整理していく。(「社...続きを読む会化エージェント」「教育の目的」「教育の作用」「学習」「教育」「学校の知」etc)タイトルにある学校の退屈さの理由も、明快に説明される。後半はAIと教育の関わりや若者への期待で締め括られる。
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学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか
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広田照幸
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