Posted by ブクログ
2016年01月16日
日本エッセイスト・クラブ賞と講談社エッセイ賞を受賞しているエッセイストにして、絵画、音楽、文学、書誌学も手掛けるリンボウ先生が、「知的生活」のノウハウを語ったものである。
リンボウ先生はまず、「知性」とは、外の世界と「主体的に」かつ「客観的認識をもって」交わっていくための「方法」のことであり、「知性...続きを読む」のある人とは、そうした「方法」を身につけていることであるという。換言すれば、たくさんのことを知識として知っているということではなく、学問の方法を身につけているということである。
そして、その「知性」を磨くための方法を、学問、読書、遊びの3つの側面から、ハウツー本的なトーンではなく、エッセイ風に綴っている。
以下は、本書の主題に限らず、私が強く共感した部分である。
◆福沢諭吉の『学問のすゝめ』は、学問について考えるときに「これを読まずして、学問を語るなかれ」と言える名著であり、そこで説かれている通り、社会のあり方の根本は、一人ひとりがどれだけ自分自身の志として勉強をするか、すなわち「私の独立」を為しているかにかかっている。
◆読書というのは、ある一時に、その人にとって意味を持つ、即ち、その人に対して、生きていく力とか慰めとか、何らかの力を与えるものである。
◆本は自分で買って読むべきであり、背表紙のタイトルの存在は、その本を読んだ記憶を常にリマインドしてくれる効果があるし、自分が読んだ本が書棚にたまっていくということは、その人の人生の軌跡なのである。(この点は斎藤孝氏も強調している)
◆人との付き合いで大事なことは、仕事でも遊びでも、全幅の信頼関係に基づいて、「個人」として話ができることである。
リンボウ先生は最後に、「私は、決して一つのところに立ち止まらない。いつも何か新しいこと、自分にとっての未知の大陸へと、志向するんです。・・・そして、その忙しい生活に疲れたら、そっと休もうじゃないか。人里離れた山林に隠れて、あるいは古い友人とくだらぬ話にでも打ち興じて・・・」と語っている。
いまだに取り組むテーマを広げ続けるリンボウ先生の、思考と行動のベースがわかる一冊である。
(2005年9月了)