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Posted by ブクログ
漫画『逃げ上手の若君』が大分前に東京新聞の漫画評欄に載っていたのですが、それまで、北条時行の名前も聞いたことがなく…。
永井路子の『炎環』は面白かったけど、血生臭くて、歴史として本を読むにはどうかなぁ、と及び腰になっていて、結局、鎌倉から室町、戦国は私の中では空白地帯になってました。
ところが、つい『逃げ若』を漫画で読んだりアニメを見てしまったら、(漫画だからだけど)時行が可愛くて爽やかなので、つい実像はどうだったのかと、この『中先代の乱』を手に取ってしまいました。
中先代の乱の時、時行は推定7歳。
破れてのち、南朝の後醍醐天皇に帰順したのが9歳、その後2回の鎌倉入りをしたのち、享年25歳で罪人として処刑されます。
様々な先行研究や太平記など引用しながら、中先代の乱の前後の北条氏と時行を中心に、それに与する武士たち、足利氏側、南朝、北朝の動きや思惑が解説、考察されています。
正直、漫画やアニメのように面白く読める本ではありません(あたりまえ!)。ただ、私のように鎌倉、室町、南北朝ってなんだっけ?みたいな人だと、漫画だといまいち全体の流れの中で時行たちのどうしてこういう行動に繋がったのかが、よく分からない。そこの理解を助けてくれました。
建武の新政下での反乱が多く、北条氏の絡む大きな反乱が、時行一党以外にもあったことや、諏訪頼重と神氏たちと北条氏の関係、どうして時行は後醍醐天皇の側に帰順したのか、など、無知だった私は知ることが多かったです。
鎌倉幕府滅亡の時にすごい数の北条方が自害したのも、びっくりです。誰もが自害する中、時行の伯父の泰家の生き残り術と幕府再興の執念にも驚きました。さらに、中先代の乱の時に諏訪頼重ら大名43名が自害したのですが、誰か分からないように顔の皮剥いでたって…。これが一番の驚愕。人の命とか、尊厳とか、そんなことより、名誉?なのか。
そんな時代に7歳の子供が戦乱に巻き込まれ、そのうち自分の意思で戦に身を投じていく。ほとんど戦いに明け暮れて、20代半ばで処刑されるなんて…。幼稚園卒園して、やっと就職したかってころまでずっと戦。そしてその果ての死。
歴史的には時行の行動が及ぼした影響などいろいろあるだろうけれど、一人の年少者に負わされているものがあまりに重く、過酷に思えて、辛くなってしまった。
ところで、著者の鈴木由美氏は漫画きっかけで北条時行が好きになったそう。研究者あるある、なのかな。
Posted by ブクログ
最後の得宗北条高時自害により鎌倉幕府は滅亡した。その弟泰家は自害を偽装することで、高時の息子時行は幼齢であったことから生き延びた。鎌倉幕府滅亡から足利尊氏離反まで北条残党の反乱は15件程度確認できる。泰家を匿った関東申次西園寺公宗は後醍醐天皇暗殺の嫌疑で処刑された。暗殺計画の黒幕は後醍醐と対立する系統の光厳上皇と考えられる。公宗は泰家・時行と連携していた。
時行は信濃で挙兵し中先代の乱始まる。足利直義ら幕府側に勝利し、鎌倉に入った。直義は鎌倉幕府打倒に功績のある前征夷大将軍護良親王を殺害。これは時行と建武新政で冷遇されていた護良親王が結託し鎌倉幕府が再興されることを恐れた処置である。
尊氏が出陣し乱は鎮圧された。鎌倉選挙はわずか20日だった。時行方の主な大名は顔の皮を剥いで自害していた。それに紛れ時行は逃げ延びた。
中先代とは執権北条氏を先代、足利尊氏を当代とし、その間の代という意味である。時行は短期間鎌倉を占拠したに過ぎないが、正式な政権として人々から認識されていた。
尊氏は後醍醐から解任され、光厳上皇から院宣を賜り打倒後醍醐の大義名分を手に入れた。後醍醐を追い出し光厳の弟を光明天皇として践祚させた。
再度鎌倉で合戦が起きた。首謀者は大夫四郎とされ、これは泰家のことと考えられる。おそらくこの乱で死んだ。
時行は難聴の庇護を受け幕府と転戦したが最後は捕らえられ処刑された。25歳だった。
中先代の乱最大の意義は尊氏が後醍醐から離反するきっかけを作ったことである。
Posted by ブクログ
鎌倉幕府滅亡から2年後。日本史の教科書では一行で終わるような反乱。最後の執権北条高時の遺児時行の闘争。
建武の新政から後醍醐天皇と足利尊氏の争い。その最中に起こる中先代の乱。一行で知識として知っていたが、建武の新政に対する不満を受けてか実は大きな反乱。鎮圧のため東上した尊氏が後に幕府を開くきっかけの一つともなっている。
乱の鎮定後も生き延びる時行。やがて南朝方に属し足利幕府に抵抗する。その20年の戦いにスポットをあてた本書は異例だろう。筆者の執念を強く感じる。
近年売れ行きの良い中公新書の日本史シリーズ。本書も他の著作に劣らず楽しめる一冊でした。
Posted by ブクログ
逃げ若読んで史実を知りたくなったので買ってみた。
素人にもわかる良い論文を読んだ…という印象。膨大な史料を参考に、あらゆる角度からこの年に何が起こっていたのか?を検証されていて、正直分かりづらい点もあったものの全体感を把握するのには問題ないレベル。本文では客観的な立場から淡々と(そう見える)論述されていたが、あとがきで時行への愛がすごくて、ギャップが面白く、また愛があるからこそここまで研究できるんだな…と思った。史料が少ないからこそ明かされて来なかったことも多いはず。それを著者の鈴木さんが表に出していき、今こうして多くの人に「北条時行」の名が知られているのはすごい。
Posted by ブクログ
中先代の乱について、時代背景からその意義に迫る本。
中先代の乱自体は早々に鎮圧されるため、足利尊氏が後醍醐天皇との確執を生むきっかけになったというくらいしか認識していなかった。しかしそこには鎌倉幕府滅亡前から続いていた持明院統と大覚寺統の複雑な権力構造、足利氏に反感を持つ御家人の思惑などさまざまな利害関係が結集したターニングポイントとも言える。
特に北条時行が当初持明院統(北朝)の将軍を立てることで鎌倉幕府の再興を狙い、それが不可能になったことで後醍醐天皇側につく流れは新しい知見となった。
資料があまりにも少ないこの事件ではあるが、丁寧に史料を紐解いていけばここまで推察ができるということが歴史学の苗字であろう。
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