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Posted by ブクログ
老人と、その息子の嫁が、プラトニックな恋をする
といったような話
老人は、かつて好きだった女(義理の姉)の面影を嫁に重ねており
嫁は嫁で、ファザコンの気を老人に向けているらしい
子供たちは、それぞれ夫婦生活に問題を抱えている
兄の修一は外に女を作っており
また妹の房子は夫と別居して
二人の孫と共に実家に帰ってきている
老いたりとはいえ、まだ現役で働いている老人は
どうしても房子夫婦の問題に手が回せず
修一夫婦のことばかりに気をとられてしまうのだが
それはあるいは要するに
実の娘より嫁の菊子が可愛いから依怙贔屓してるだけ
なのかもしれない
そんな自分に老醜を感じて、嫌な気持になることはあっても
老人がその姿勢を変えることはなかった
そうこうするうち
房子の夫である相原が、よその女と心中事件をおこして
新聞に載ってしまう
さらには、修一の不倫相手が妊娠したとの情報を知らされて
老人は重苦しい不安にとらわれる
一家の大黒柱として
なにもかも独りで抱え込もうとしすぎるようでもある
しかし、友人に頼まれて高額の能面を引き取ったりするぐらいには
経済的余裕もあるのだ
それなのに、追い込まれる感じになってしまうのはなぜだろうか
せっかく戦争の時代を切り抜けたというのに
生き延びた罪悪感から
退廃と不幸の道へと突き進んでいく若者たちのありさまが
恐ろしいのかもしれない
だが裏を返せば
それは民主主義的に自立していく個人の群れの姿でもあった
だからとばかりも言い切れないが
問題に一区切りがついたころ
老人は、ファミリーロマンスからの脱却として
菊子にも自立を促していくのだった
つまり親と息子夫婦で世帯を分けようというわけだ
それは、プライバシー筒抜けの日本家屋から
若い夫婦を解放したい(されたい)という思いであると同時に
「山の音」を聞いてしまった老人にとっては
ひとつの死に支度でもあった
縁起でもない
Posted by ブクログ
古き悪き日本。
恐らくそのせいで、
次の世代は欧米志向で自由に憧れたのでしょう。
そして続く現代の親世代は、その反動で冷静に。
主人公はおじいちゃん。
共感するには早過ぎかと思ったが、
女性は男性より早く盛りの過ぎたのを実感するものである。
30も過ぎればちやほやされなくなるし、
体力もあっという間に落ちる。
老年とはこんなものか、と
想像するには意外と難くなかった。
生々しく赤裸々に書かれた主人公の感情や執着が、期限切れの酸っぱさのまとわりつくほろ苦さ。
少し癖になる。
美味ではないが、晩酌のアテには向いている。
菊子だけが花だ。
丁寧に描写されているのに、
私の中に具体的な顔立ちが見えていないのが不思議だ。
ただ爽やかでまだ可愛らしさの残る、
好ましい女性像はしっかりと浮かんでいる。
読者がそれぞれに、
自分好みの美人顔を当てられる描き方になっていたのだろうか?面白い。
目の前の出来事に老年の記憶の断片や、
いつまでも忘れられない紅葉や義姉を散りばめた彼なりの思いを見せながら、
日常は過ぎ季節が巡る。
筆で色を重ねていくうちに、
引いていた輪郭もぼやけて陰影ができ、
色味は暗くなっていく反面、
味わいは深まる油絵のような作品だと感じた。
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