矢貫隆の作品一覧
「矢貫隆」の「いつも鏡を見てる」「自殺──生き残りの証言」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
著者はあとがきを「タクシー運転手の物語を書きたかったわけではない。」と言い切って書き始めています。しかし、ノンフィクションかフィクションかわからないままつぶやかれる登場するタクシー運転手たちのモノローグはそれぞれに極私的な人生の物語になっています。それはスコセッシの映画「タクシードライバー」のようです。それぞれが時代の流れの中で翻弄される葉っぱのようなディテールの積み重ねで語られています。ザ・ナターシャ・セブンとか阪神のペナントレース競り負けとか加賀まりこ出産とか夏目雅子死去とか…そうして日本のデ・ニーロたちの小さな思い出が日本の昭和、平成、そして令和の物語に編み上げられています。自分のタクシーの思い出の瘡蓋もだいぶ引っ剥がされました。変わったタクシードライバーいっぱい出会ったなぁ。題名のように「いつも鏡を見ている」というようにルームミラーには時代が写っていたと思います。タクシー車内は時代の缶詰かもしれませんね。このコロナ禍でも「地球タクシー」とか「あのとき、タクシーに乗って~緊急事態宣言の東京~」とかタクシー目線の番組増えているような気もします。
Posted by ブクログ
実際に何社かでタクシー運転手を務めたノンフィクション作家による東京のタクシー論。実体験に基づいた意見には説得力があり、タクシー運転手の実感を理解することができた。面白く興味深い内容が多かった。
「決められた労働時間をオーバーし、休憩もそこそこに走り回って達成した65万円という水揚げ。それでもらった給料は、税金・社会保険等を差し引く前の総額で39万1404円」p35
「履いているのは、値段がチープなら性能も怖ろしくチープなタクシータイヤだ。グリップ力を筆頭に、直進性や排水性といった性能を犠牲にしてのコスト最優先。そんなタイヤで首都高のきついコーナーやら東名道をぶっ飛ばすなんて、とてもじゃないが怖くてできやしない」p44
「深夜は稼ぎ時ではあるけれど、それ以上に、客探しに苦労する時間帯でもある。タクシーの数が多すぎて、六本木も赤坂も新宿も、すべての繁華街の路肩が空車のタクシーで埋まる」p47
「タクシー輸送人員:1989年 5億8400万人、2008年 3億9700万人、2009年 3億6447万人に減っている」p51
「東京で日車営収がもっとも多かったのは規制緩和の7年前、初乗り運賃がまだ650円だった1995年の5万9750円である。(2002年に4万円台になり、それからは限りなく3万円台に近い4万円台を保つのが精一杯という状況に陥っていく)」p56
「隔勤の一般的な労働時間は、合計3時間の休憩時間を含めればおよそ18時間」p70
Posted by ブクログ
身近な公共交通機関であるタクシーの運転手としての潜入ルポである。もっとも、著者は学生時代にタクシー運転手のアルバイトをしたことがあり、ズブの素人とは少しばかりわけが異なるようだが、運転手でなければ分からないことや、ライターならではの法令・統計の理解に基づく解説がうまく噛み合っており、面白かった。
もっとも、乗せたお客の変わったエピソードや運転手の役得・悲哀ばかりを期待すると期待はずれになる。冒頭から3割くらいは、この手の話も多く語られるが、タクシー運転手になるための苦労、運転手の収入、あるいは、規制緩和がタクシー業界にもたらした競争激化など規制と経済の話も多く語られる。著者が運転手の収入面やタクシーの安全・安心の観点から、参入規制や強制減車など規制強化に好意的な点には賛同できないが、全体として、バランスよく面白い本になっている。もっとも、東京の地理に詳しくない人には、面白みが半減するかもしれないが。