矢貫隆のレビュー一覧
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著者はあとがきを「タクシー運転手の物語を書きたかったわけではない。」と言い切って書き始めています。しかし、ノンフィクションかフィクションかわからないままつぶやかれる登場するタクシー運転手たちのモノローグはそれぞれに極私的な人生の物語になっています。それはスコセッシの映画「タクシードライバー」のようです。それぞれが時代の流れの中で翻弄される葉っぱのようなディテールの積み重ねで語られています。ザ・ナターシャ・セブンとか阪神のペナントレース競り負けとか加賀まりこ出産とか夏目雅子死去とか…そうして日本のデ・ニーロたちの小さな思い出が日本の昭和、平成、そして令和の物語に編み上げられています。自分のタクシ
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実際に何社かでタクシー運転手を務めたノンフィクション作家による東京のタクシー論。実体験に基づいた意見には説得力があり、タクシー運転手の実感を理解することができた。面白く興味深い内容が多かった。
「決められた労働時間をオーバーし、休憩もそこそこに走り回って達成した65万円という水揚げ。それでもらった給料は、税金・社会保険等を差し引く前の総額で39万1404円」p35
「履いているのは、値段がチープなら性能も怖ろしくチープなタクシータイヤだ。グリップ力を筆頭に、直進性や排水性といった性能を犠牲にしてのコスト最優先。そんなタイヤで首都高のきついコーナーやら東名道をぶっ飛ばすなんて、とてもじゃないが -
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身近な公共交通機関であるタクシーの運転手としての潜入ルポである。もっとも、著者は学生時代にタクシー運転手のアルバイトをしたことがあり、ズブの素人とは少しばかりわけが異なるようだが、運転手でなければ分からないことや、ライターならではの法令・統計の理解に基づく解説がうまく噛み合っており、面白かった。
もっとも、乗せたお客の変わったエピソードや運転手の役得・悲哀ばかりを期待すると期待はずれになる。冒頭から3割くらいは、この手の話も多く語られるが、タクシー運転手になるための苦労、運転手の収入、あるいは、規制緩和がタクシー業界にもたらした競争激化など規制と経済の話も多く語られる。著者が運転手の収入面やタ -
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ノンフィクションライターが東京のタクシー運転手に就職。運転手の悲喜こもごもとタクシー業界の内幕を描いた潜入ルポ。
タクシー運転手になりたい人には必見の貴重な情報満載。運転手になるための「地理試験」なるものから、日常の売上、会社に納めるべき運転手負担などなど。・・・あまりにニッチすぎる情報か?
それはともかく、現在のタクシー業界のことだ。不況により乗車数は減少しているのに、規制緩和によってタクシー業界に参入する企業は増加。その結果、タクシー数は増えるが、空車ばかり。客の利便性よりも運転手の雇用維持を考えれば、規制による「減車」はやはり必要だろう。減反をした農家に補助金を与えるようなことをタク -
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タクシーの運転手さんがきびしいということはなんとなく知っていた。よくタクシーの運転手さんの愚痴をきいたりしていたからか。私の場合、仕事が深夜に及ぶと、いつもお世話になっている個人のタクシーにお願いしている。法人のタクシーはやっぱりこわい。タイヤもシートも今一つだし、乗り心地も悪く、かつ、知っている人だと間違いなく我が家の前まで連れて行ってくれるが(寝ていることが多いから)、慣れていないタクシーだと、どこに連れて行かれるかわからない。また、個人の場合、料金交渉をして乗る場合が多いが、法人だとそうもいかない。タクシーの運転手さんの50%が60才以上だそうだ。なりたがらないのがよくわかり、その苦労が
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1973年から現在に至るまでの異なる時代にタクシーを走らせた運転手たちの生きざまを通して当時の世相をあぶり出すノンフィクション。
73年のオイルショックにおける石油高騰に拍車をかけた売り惜しみ、トイレットペーパーや洗剤の買いだめ、バブル期の05年、「居酒屋タクシー」と呼ばれ霞ヶ関の役人と特別な関係を築いた個人タクシーがあったこと、07年、農協の誘いのままに新規の作物栽培に手を出し失敗して借金を重ねた挙げ句、タクシー運転手になった男の話などがドラマティックに綴られている。
うまくいくときは月100万円以上も稼ぐがリーマンショックや規制緩和など、世の景気や流れに翻弄される業界の様子を自らもタクシー -
Posted by ブクログ
著者自らが「タクシードライバー」になってみて、その業界を説いた一冊。タクシー業界は昨今の景気低迷と共に下降傾向になりつつあるが、実態は他の業界も変わらないであろう。ただ、規制緩和と共にドライバーの負担が大きいのは避けれないが。
不景気により、新たに職を探す人でこの「タクシードライバー」を選択する人も増えているが、意外に面接で落とされる事があると言う。その理由は、本書を読んでみると納得できる。
また、ドライバーのモラルの部分も追求してある章は、お客側からの切実な部分が書かれており、業界全体の意識向上が早急に必要と感じる。
全てのドライバーが悪い訳ではなく、中にはちゃんとした人も居るのは事実