澤西祐典の作品一覧
「澤西祐典」の「芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「澤西祐典」の「芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
Twitterで見かけて面白そうだったので書店で購入。
英米作家の短編&エッセイ22作品+芥川の翻訳と短編が2作品。シリアスとコメディが混ざり合いとても良い。
「張り合う幽霊」が一番好き!!
←本人に憑いている幽霊とお屋敷に憑いている幽霊がケンカしちゃうお話。オチも可愛くて大好き。著者ブランダー・マシューズの小説が邦訳されているのはこれが初めてらしい。世界には私が好きなタイプのお話がたくさんあるんだろうなぁ。
あとは機械の進化を描く「機械時代のダーウィン」や→
ウィチ通りの場所で議論になり殺人に発展してしまう「ウィチ通りはどこにあった」、ロマン・ノワールの先駆け的作品らしい「ささやかな忠義の行い」なんかも楽しい。
ラストに載っている芥川龍之介氏の「馬の脚」も大人のお伽話としてとても楽しい。
こういう本に出会えるからTwitterはやめられない。
Posted by ブクログ
近代文学が好きで怪談が好きなので、芥川龍之介選の怪異小説アンソロジーとなったらそりゃもう面白いだろうと手に取った。近代以前の作品ばかりだがどれもドキドキしながら読める、エンタメ性の高い短編集だった。
特に好きだったのは巨人の心の変化に胸を打たれる教訓的な『身勝手な巨人』、ヨーロッパの昔話らしい雰囲気の『ショーニーン』、『藪の中』の着想元と言われる『月明かりの道』。
本の感想からはそれるが、興味を惹かれるうえ短くてすんなり読める話の連続だったので、昨今のネット依存で鈍っている集中力のリハビリにものすごく寄与してくれた。短編集って読書の練習に向いてる。
Posted by ブクログ
大正13~14年にかけて芥川龍之介が編んだ、
旧制高校の英語の副読本全8巻51篇は、
当時の現代文学が選ばれていた。
その作品の中から怪異・幻想譚22篇を抽出し、
豪華な訳者陣によって翻訳されたアンソロジー。
・はじめに――柴田元幸
I The Modern Series of English Literatureより
II 芥川龍之介作品より
・おわりに――澤西祐典
附 芥川龍之介による全巻の序文と収録作品一覧
22の作品は怪異と幻想小説の他、エッセイ、民話、
童話調、戯曲、リアリズム作風も選ばれている。
ヴィクトリア朝時代の名残りに世紀末の頽廃、
アイルランド文芸復興運動、第一次世界大戦の影響、
ロマン・ロワールのの先駆など。そしてそれらは、
当時の短編小説の名手たちによる作品群。
オスカー・ワイルド、ダンセイニ卿、E・A・ポー、
R・L・スティーブンソン、アンブローズ・ビアス、
M・R・ジェイムズ、サミュエル・バトラー、H・G・ウェルズ、
アルジャーノン・ブラックウッド、W・B・イェーツなどの
著名作家に日本では無名の作家たち。既読もあるが、
多くは初邦訳という瑞々しさと芥川の怪奇趣味が窺える。
また、芥川の作品への影響を与えたものもある。
特に気に入ったのは、
ブランダー・マシューズ「張りあう幽霊」
H・G・ウェルズ「林檎」
アルジャーノン・ブラックウッド「スランバブル嬢と閉所恐怖症」
ステイシー・オーモニエ「ウィチ通りはどこにあった」
そして芥川翻訳のW・B・イェーツ「春の心臓」
芥川作品の「馬の脚」
芥川の英米文学への深い読解力を計り知り得る作品群が
大いに愉しめて、満足です。
出来れば全8巻を和訳して欲しいです。
キプリング、ギッシング、ハーディ、バーナード・ショー、
チェスタートン、O・ヘンリー、E・F・ベンソンなどの
作品も読んでみたいです。
Posted by ブクログ
芥川龍之介が1924~25年(大正13~14年)にかけて旧制高校生の英語学習用に編集した英米文学のアンソロジー
"The Modern Series of English Literature" 全8巻51編から22編を精選して、澤西祐典氏と柴田元幸氏他10名が日本語訳をした。
まず芥川にこういう「学習教材」のような作品があるということを知らなかった。古今東西の文学に精通している芥川のセレクションであるから、間違いはない。
また、それらを精鋭の翻訳者による現代の日本語で読めることが素晴らしいではないか。2018年に単行本が出ていた(不覚にもチェックしていなかった!)が、今回の文庫化は大変うれしい。
いまから100年ほど前の英米モダン文学アンソロジーであるが、芥川の好みが色濃く反映していて、まずは日本語のタイトルからわかるように怪奇・幻想を扱った作品が多い。ポーやビアス、ワイルド、ウェルズなど絶対に外せない大御所が入っているのはもちろん、ステイシー・オーモニエやアクメッド・アブダラーなど(自分は)聞いたこともない作家の名作も選ばれている。
以下いくつか印象に残った作品についての感想と引用。
ポーの「天邪鬼」は先送りと遅延の不幸についてのエッセイだ。時間に支配された近代人のこうした「不幸」は、20世紀のカフカのテーマにもつながっている。
ブランダー・マシューズの「張り合う幽霊」は、幽霊譚ではありながら、読者を怖がらせるのではなく楽しませる趣のユーモア小説。ここで結末を言ったらネタバレになってしまうので言わないが、笑ってしまうこと間違いなしである。
セント・ジョン・G・アーヴィンの「劇評家たち」は短い風刺劇であるが、当時の劇評家たちをうまく皮肉っていて痛快である。
サミュエル・バトラー「機械時代のダーウィン」は、現代に直接通じる真理を突いている。「時代が下るにつれ、人類は自らが機械よりも劣等の種となったことを覚るでありましょう。力で劣り、みずからをみずからで律するという倫理的特質においても劣る人類は、誰よりも善にして賢なる人といえどもおよそ及びもつかぬ宝鑑として機械を敬し奉ることになるでしょう。有害な激情も、嫉妬も、強欲も、はたまた不純な欲望も、光輝に満ちたこれらの生き物の穏当なる力を妨げることはありません。機械は罪や恥や悲しみとも無縁です。その精神は永遠の平静を保ち、欲を知らぬ魂の充足に守られているがゆえに、後悔にかき乱されることがないのであります。野心に苦しめられることもない。他者から感謝されずとも、一瞬たりとて不安になりはしない。良心の呵責、いつまでもかなわぬ希望、疎外の苦痛、統治者の傲慢、名もなき人々の忍耐の徳に報いない世間の冷たさ――そうしたものは、機械たちにはまったく知られぬままでありましょう。」(pp.224~225) 上の引用内の「機械」を「AI」という言葉に置き換えてみるなら、バトラーの言説がそのまま現代にも通用することがわかる。
アルジャーノン・ブラックウッドは、アーサー・マッケン、M・R・ジェイムズと並んでイギリス怪奇小説の三大巨匠と言われる大家だが、ここに収められた「スランバブル嬢と閉所恐怖症」もまた現代の神経症を予告するような作品である。スランバブルという、一年に一度の旅行をこの上ない楽しみとしている初老の独身者が出くわした災難。恐怖小説を読む愉しみを存分に引き出してくれる。
オーモニエの「ウィチ通りはどこにあった?」は、怪異・幻想とはちょっと違うユーモア小説(人間の思い込みという「幻想」を描いたともいえるが)。これもまた現代の「分断社会」に対する風刺になりえる。
ドロシー・イーストン「刈取り機」も怪異・幻想譚というよりはプロレタリア文学に近いものではないだろうか。芥川の現役時代の日本でも勢力を増していた労働者の文学だ。
アクメッド・アブダラーの「ささやかな忠義の行い」は、このアンソロジーの中でも一二を争って惹き込まれた作品。作者は経歴不詳のアフガニスタン生まれのアメリカ作家らしいが、中国系移民のノワールな世界を描いて迫真的である。これも怪異・幻想というよりは「リアリズム」だろう。
最後に特別編的に付け加えられた芥川作品の「馬の脚」も面白かった。
芥川ファンにも、怪奇幻想小説好きにも、また英米の小説愛好家にも、願ってもないinterestingかつexcitingなアンソロジーが(再)登場した!