久栖博季の作品一覧
「久栖博季」の「ウミガメを砕く」「貝殻航路」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
「久栖博季」の「ウミガメを砕く」「貝殻航路」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
『貝殻航路』久栖博季
私は生まれも育ちも札幌だけれど、
釧路や根室には子どもの頃から何度も足を運んできた。
同じ北海道とはいえ、
札幌から6時間、7時間とかかる遠い場所。
大人になってからは自分で車を運転して、
なぜだか引き寄せられるように道東へ向かった。
重く垂れ込める霧。
夏でも肌寒いほどの冷たい空気。
潮の匂い。
そして、どこか哀しみをまとった異国めいた気配と、
不思議な拒絶感。
納沙布岬にも幾度となく足を運んでは、
海の向こうの異国の輪郭が見えないかと、
ずっと目を凝らしていた。
そんな馴染みのある空気感が、本作では
とても静かな時間の流れのなかで描かれていて、
何度も記憶を揺さぶられ、胸がいっぱいになりました。
✧
『貝殻航路』には、
さまざまなモチーフがごく自然に溶け込んでいます。
アイヌ、北方領土、静かに朽ちていく灯台、身近な人の死。
主人公・凪には夫がいるけれど、
その関係は、いわゆる普通の夫婦とは少し違う。
夫はふらりと出かけていき、しばらく戻ってこない。
そのどこか儚さをまとった描写が、とにかく美しいのだ。
「長い睫毛に縁取られて翳りを帯びたまなざしは、
鬱蒼と茂る笹藪の黒々と重なっていく影を思わせ……」(P47)
…美しすぎませんか。夫よ。
物語の底を流れているのは、
静かな哀しみなのか、諦観なのか。
この物語を、どう言葉にすればいいのだろう。
ひとつひとつ積み重ねられていく言葉は、
静かに降り積もる雪のようで、
何度も舌の上で転がしたくなるような儚さを帯びていました。
✧
実際に、道東のあの独特な空気を知っているのと
知らないのとでは、
受け取るものも少し変わってくる気がします。
物語を閉じたあとも、
道東の冷たい風がしばらく身体に残っているようでした。
Posted by ブクログ
貝殻島を教えてくれたのは父親。
灯台には船を導く大事な役割がある。
そう教えてくれたのも父親。
p15
〈いつからかわたしは、父さんの墓標だと思うようになった〉
北方領土にある灯台。
壊れても修理されることはない。
詩を読んでいるような感覚だった。
あるいは、静かなドラマを観ているような。
主演は奈緒さん。
父親は、リリー・フランキーさん。
あめみやは、生田斗真さん。
妹、夕希音は吉岡里帆さん。
灯台が見える海の風景を思い浮かべていると
父親のエピソードが飛び込んできて
青空が広がる中、急に空が翳っていくようだった。
不思議な小説。