貝殻航路

貝殻航路

小説・文芸
1,800円 (税込)

9pt

3.5

霧深い道東の街で淡く光を放つ希望の航路

北方領土を間近に望む土地に生まれ、漁師の父に育てられた主人公は、アイヌにルーツを持つ夫と結婚し釧路の街に移り住む。

アラスカからの豪華客船が釧路に寄港するというニュースの一方で、ミュージシャンの夫は行き先も告げずに家を出た。
倦んだ孤独をひとり抱えるわたしは、幼いころに父と見た貝殻島のことを思い出す。

「カイカライ。波の上面低いもの、という意味で、満潮になれば水没してしまうちっぽけな島だよ、日本では貝殻島、カイカライはアイヌ語ね」

北方領土という戦後史にひっそり佇む貝殻島の灯台、かつて海上の国境を越えロシア船に拿捕された父、静かに民族の記憶をつなぐ夫とその妹――いくつものかすかな光が敷きつめられた貝殻島への航路とは。

北海道東部、道東と呼ばれる土地の風土を細やかに描き、そこに暮らす人間の内奥に迫る野心作。

選考委員から高い評価を得た第174回芥川賞候補作。

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内文学
  • 出版社
    :
    文藝春秋
  • 掲載誌・レーベル
    :
    文春e-book
  • タイトル
    :
    貝殻航路
  • タイトルID
    :
    2203645
  • ページ数
    :
    120ページ
  • 電子版発売日
    :
    2026年03月12日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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貝殻航路 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    『貝殻航路』久栖博季

    私は生まれも育ちも札幌だけれど、
    釧路や根室には子どもの頃から何度も足を運んできた。

    同じ北海道とはいえ、
    札幌から6時間、7時間とかかる遠い場所。
    大人になってからは自分で車を運転して、
    なぜだか引き寄せられるように道東へ向かった。

    重く垂れ込める霧。
    夏でも肌寒いほどの冷たい空気。
    潮の匂い。
    そして、どこか哀しみをまとった異国めいた気配と、
    不思議な拒絶感。

    納沙布岬にも幾度となく足を運んでは、
    海の向こうの異国の輪郭が見えないかと、
    ずっと目を凝らしていた。

    そんな馴染みのある空気感が、本作では
    とても静かな時間の流れのなかで描かれていて、
    何度も記憶を揺さぶられ、胸がいっぱいになりました。

    ✧

    『貝殻航路』には、
    さまざまなモチーフがごく自然に溶け込んでいます。
    アイヌ、北方領土、静かに朽ちていく灯台、身近な人の死。

    主人公・凪には夫がいるけれど、
    その関係は、いわゆる普通の夫婦とは少し違う。
    夫はふらりと出かけていき、しばらく戻ってこない。
    そのどこか儚さをまとった描写が、とにかく美しいのだ。

    「長い睫毛に縁取られて翳りを帯びたまなざしは、
    鬱蒼と茂る笹藪の黒々と重なっていく影を思わせ……」(P47)

    …美しすぎませんか。夫よ。

    物語の底を流れているのは、
    静かな哀しみなのか、諦観なのか。
    この物語を、どう言葉にすればいいのだろう。

    ひとつひとつ積み重ねられていく言葉は、
    静かに降り積もる雪のようで、
    何度も舌の上で転がしたくなるような儚さを帯びていました。

    ✧

    実際に、道東のあの独特な空気を知っているのと
    知らないのとでは、
    受け取るものも少し変わってくる気がします。

    物語を閉じたあとも、
    道東の冷たい風がしばらく身体に残っているようでした。

    0
    2026年04月04日

    Posted by ブクログ

    北方領土のことは、折に触れ話題になるが、経済的に漁業のために必要、と考えるくらい。そこに住んでいて、追い出された人たちの気持ちは、何となくわかるような…が、若い世代には、取り返したとして、ここで生活できるの?インフラは?と考える向きもあることを知る。
    孤独、苦しみ、悲しさ、そんな感情が静かに流れていて、不思議と心は穏やかになっていく。

    0
    2026年08月24日

    Posted by ブクログ

    第174回芥川賞候補作
    あっと言うまに読み終えました
    物語はゆっくり進みますが、なんとなく物悲し思いが残ります…

    0
    2026年07月28日

    Posted by ブクログ

    ロシアに拿捕された過去を持つ父との確執。アイヌの血を引く夫の不在。北方領土を望む道東の霧深い街で、国境や民族という歴史の重みと、個人の孤独が静かに交差する。

    終盤、北海道の果てしない道を車でひた走り、自己を解放する主人公の姿がとても良かった(やってみたい)。
    貝殻島の灯台の光が象徴的。喪失から希望をすくい上げ、人生の航路を照らすような物語でした。

    0
    2026年06月27日

    Posted by ブクログ

    北の地で生まれ、漁師の父はロシアの沿岸警備船に拿捕されて以来、海に出ることはなくなった。

    アイヌの血を引く夫は行く先も告げずに家を空けることが多い。

    孤独なのか、不安なのか…心の内がわからぬまま義妹とは会う。

    淡々と進んでいくのに取り残された感がしないのは、情景が目に浮かぶからだろうか。
    孤独さと寂しさが風景に溶け込んでいて、声は届いてこない。
    それは推し量るしかないのかと…。


    0
    2026年04月22日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    貝殻島を教えてくれたのは父親。
    灯台には船を導く大事な役割がある。
    そう教えてくれたのも父親。
    p15
    〈いつからかわたしは、父さんの墓標だと思うようになった〉

    北方領土にある灯台。
    壊れても修理されることはない。

    詩を読んでいるような感覚だった。
    あるいは、静かなドラマを観ているような。
    主演は奈緒さん。
    父親は、リリー・フランキーさん。
    あめみやは、生田斗真さん。
    妹、夕希音は吉岡里帆さん。

    灯台が見える海の風景を思い浮かべていると
    父親のエピソードが飛び込んできて
    青空が広がる中、急に空が翳っていくようだった。
    不思議な小説。

    0
    2026年07月30日

貝殻航路 の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内文学
  • 出版社
    :
    文藝春秋
  • 掲載誌・レーベル
    :
    文春e-book
  • タイトル
    :
    貝殻航路
  • タイトルID
    :
    2203645
  • ページ数
    :
    120ページ
  • 電子版発売日
    :
    2026年03月12日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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