力作! 後半から一気に重厚感がレベルアップする骨太本格ミステリ #あなたに聞いて貰いたい七つの殺人
■あらすじ
インターネットラジオを通して殺人のライブ配信をするという事件が発生、若い女性たちが次々と犠牲になっていた。駆け出し私立探偵の鶴舞のもとに、ジャーナリストであるライラが事件解決の依頼にやってくる。彼女は舞鶴に対して、犯人と同じようにインターネットライブ配信での捜査を提案する。
一方、警察内部でもこの事件に対して騒ぎになっており、本当に殺人が行われているか議論になっており…
■きっと読みたくなるレビュー
力作ですね、タイトルや装画からは想像できない骨太な作品でした。
新人先生ということもあってどんなもんかと思いながら読み進めますが、正直序盤から中盤あたりまでは大丈夫なのかこれは…と思ってました。劇場型犯罪や猟奇殺人といった設定は多少は考えられてるけど、筋や文体は月並みだし、ロジックもぱっとしない、登場人物も派手なのか地味なのかよくわからない。うーん、なんか心配だなぁと…
ところがどっこい中盤以降から、一気に面白味と重厚感が増してくるんです。なるほど、だから前半はありきたりに感じたのか、まさにこれが狙いなんですね! ミステリーにおける探偵や推理の不安定さを表現してる。技ありですね。
さらに終盤に至るまで事件は混沌としていて、真相がさっぱりわからないんですが、突然するするとロジック展開がされる。やり取りに会話も綿密だし理解しやすい、想像の斜め上をいく真相なんです。そしてこれまでの提示された情報が回収され、これぞミステリーって感じで解き明かれる様が気持ちいい!
キャラクターも実はしっかり考えられているんすよね~ 一見キャラ小説かと思いきや、当初は見えづらかった背景が明るみになってくると…ガッテンガッテン、納得ですよ。いやー策士でした。
鋭角な角度で切り込む策略が詰まった本格ミステリー、これからの作品も楽しみです。ちなみに先生は愛知県出身ですかね、登場人物の名前を見ればすぐにわかります。桜通、鶴舞、東山、名城、青波、犬山、飯田… ん~、聞いたことある。私も同じなのですぐにピンときましたよ。
■ぜっさん推しポイント
YouTube、スポティファイをはじめ、各種SNSがはびこる現代。誰でもどこでもいつでも、すぐに自身がメディアになれてしまう。音楽も文芸もお笑いもバラエティも、何でもかんでも世に出せるいい時代です。
でも…思い通りにならない人生、生きることの難しさを肌で感じましたね。どんな時代であっても、またどんな環境に身を置くことになっても、結局は自身の選択によって、それからの未来が決まるということを忘れずにいたいですね。