★5 ミス研メンバーが孤島に誘われる定番ミステリ、ありがちな題材を品良くオマージュ #未館成の殺人
■あらすじ
X大学の推理小説研究会のメンバーは、夏合宿で孤島でキャンプをすることになった。そこは著名な建築家が所有する島で、奇妙な館を建築中ながら、未だ基礎工事までしか進んでいないらしいのだ。
ミス研のメンバーが島に到着すると、突然船が爆発炎上! 残された水や食料は少なく、連絡手段も破壊されてしまう。生き残るべくサバイバルを始めるのだが、ひとり… またひとりと…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 おもろい! 本格ミステリーファンには堪えられない作品すね。そうそう、こういうのを待ってたんだよ!ってヤツ。
信国遥先生はデビュー作『あなたに聞いて貰いたい七つの殺人』で光るものを感じてたんですが、やっぱり花開きましたね。いまのところ本作が今年の本格ミステリーの筆頭じゃないかな。
本作は大学ミステリ研究会のメンバーが孤島に誘われ、脱出&連絡が不可能になるという古からの基本設定。『未館成の殺人』とあるから館ものかなーと思いきや、そうであるような、ないような… ちなみに平面図は用意されてません。ただクローズドサークルではあり、やっぱり予定調和どおりに殺人事件が発生して――という筋立て。
定番っぽさを強めでご紹介しているんですが、これには訳があるのです。本作は本格ミステリーあるあるを上手にパロディにしており、ファンであればあるほどニヤニヤがとまらない仕掛け。
有名な建築家が奇妙な建物を建て続ける&行方不明なんて設定、綾辻行人先生の「館シリーズ」そのまんま。さらにはミステリー批評なんかも「人物か描けてない」とか、書いてる側の苦労も知らずに好き勝手いわれたりさ。あと他にも、事件に関わる重要な部分においても、「ありがちな題材」がでてくるんすよね~
また進行についてもあれこれ展開が多い訳ではなく、比較的にはスタンダード。サバイバルシーン以外は、ずーっと事件について議論してるんだよね。ひとつずつ疑問提示、考察、理解、再検討…って感じで、丁寧に謎解きを楽しませてくれます。なので、結構パワフルな本格ミステリーだと思いますよ。
キャラクターもミステリーのキャラって感じで魅力たっぷり! 涌井の嫌われっぷり、三雲との不仲っぷりなどなど、もはや想像通りで大好き。舌戦からイガミ合いまで、めいっぱい味わいました。
謎解きも練られていましたね~。当然ロジックはしっかりしてるし、シンプルには終わりません。犯人が想像以上というか、ある作品と比べちゃうこともあって「この人を使っちゃうのねー、意外」という感想。
そして一番唸ったのは、クローズドサークルで水も食料も少ない状況なのに、なぜ殺害しなければいけないのか? という真相部分。ちゃーんと伏線も書かれているし、なるほど感が高い。参りました。
これ以上は楽しみを奪っちゃうので、ぜひ読んてみて下さい。本格ミステリーファンは必読の一冊ですよ!
■ぜっさん推しポイント
本格ミステリーって、動機が比較的シンプルなことが多いんだけど、本作は拘りを感じました。元々どんな出来事があって、こんな大きな事件に発展してしまったのか。そして過去これまで誰が、何を想って、どんな行動をしてきたのでしょうか…
物語を振り返ってみると、現代ならではの業が渦巻いてることに気づかされるんすよね。生きることに必死な感じがして、ちとしんどくなりましたね。
■人物表
人物表がついておらず、序盤は混乱しがちかもしれません。書いておくのでご参考までに。
●X大学の推理小説研究会
涌井正義 四年 男性
三雲清世 四年 女性
遠藤恭平 三年 男性
北見律 二年 男性
西京晴希 一年 男性
白波瀬真緒 一年 女性
名瀬朝日 OG 女性(故人)
●黒澤家
黒澤泰洋 建築家(行方不明?)
泰明 長男
洋高 次男
日和子 長女
●その他
雨鷺 船長