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「游珮芸」の「台湾の少年」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「游珮芸」の「台湾の少年」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
蔡焜霖の人生、緑島から出所後、台北で家族のもとに住みながら仕事探し。前科があるからなかなか仕事に就けなかったが、中日翻訳の能力で出版社に就職。その後、出版社は潰れるが、漫画雑誌を出してる会社に編集として再就職。その後、子供向けの漫画出版社を立ち上げ。広告代理店に転職するが、出版社に戻る。雑誌の仕事は成功していたが、利益は出ておらず、方々に借金を重ね、台湾を襲った台風のために会社も印刷所も打撃を受け、立て直す資金が尽きて無一文になり破産するまでの話。
蔡焜霖がパワフルで、働きながら大学に行き仕事も掛け持ちし、24時間働けますか状態なのがすごい。
そして、台中の学生時代から好きだった相手が台北で教師をしてるのに再会し、結婚し子供も産まれている。
経済成長する、ネオンの煌めく台湾だけど、戒厳令の時代の中、前科者に対する警察の目は厳しく、蔡焜霖はホーソンの「緋文字」に自らの境遇を重ねる。
台湾の漫画界の初期は著作権の概念がなく、日本の売れてる漫画を買ってきて、それを台湾で模写したりちょっと手を加えたりしたものを出版してた、って言うのが今じゃ考えられない時代で面白い。そして、台湾の漫画が日本の漫画の影響を受けてるのって、こう言う時代の影響が強いんだなと思った。鬼太郎を訳してるシーンが出てきて、まさに水木しげるや手塚治虫の時代の漫画が、台湾でも強い文化的影響を与えてたんだなと興味深かった。台湾オリジナル漫画としては武侠ものが人気だった。
この時代の若者はもう日本語が読めない、ジェネレーションギャップというには大きい世代間の隔たり。
日本の「少年倶楽部」みたいな雑誌を作ろう!という文昌出版の始まり。
蔡焜霖が国華広告代理店で働くことになったというコマで大写しになってた、台北の松下電器のネオン、映画「台北ストーリー」でも印象的に使われてたやつだ!1960年代台北のアイコン的存在だったんだろうな(今もあるのかな?)
蔡焜霖は日本語能力を買われて、松下電器の専門室主任になる(日本の影響の大きさをこういうとこでも感じる)
台湾の漫画は、1966年に、編印連環図画補導法で検閲されるようになり失速。路頭に迷った文昌出版の人たちを集める形で、雑誌「王子」を創刊。
子供の教育に関わりたいという蔡焜霖の夢は、教師になる道は前科のせいで閉ざされたけど、児童向けの教育娯楽雑誌を出すという形で報われる。
台湾野球ブームに火をつけた、紅葉小学校野球チームの優勝。台北の大会に参加できるように、車を出して協力したのは雑誌「王子」だった。紅葉小学校は、ブヌン族の山の学校。他民族社会台湾ぽい。
(「台北ストーリー」でも野球が大きな意味を持つものとして描かれてたのはこういう時代背景があったんだな)
Posted by ブクログ
蔡焜霖の半生、白色テロ時代に投獄され、政治犯として十年の刑期をくらい、緑島の収容所に送られてから出獄するまで。
この辺りは映画「返校」でみた時代と同じだけど、この本の方が時代背景がわかりやすく説明されてるので、あの時の映画の話はこのことだったのか、と繋がるところが多かった。いつかみたいと思ってる映画「流麻溝十五号」もまさにこの緑島収容所のはなし。2016年の蔡英文政権後、「移行期正義」つまり独裁体制から民主制度に移行する過程において行われた人権侵害を糾弾し真実を明らかにする試みが進められていて、この「移行期正義」を語る台湾社会の中で、「返校」も「流麻溝十五号」も「台湾の少年」も作られている。
第二次世界大戦後、中国国民党政府が中華民国として台湾を回復したけど、その後、共産党との戦いに敗れて中国本土を失い、中国=中国共産党、台湾=中華民国になる。
中華民国政府は台湾で、アカのスパイや反乱分子を逮捕する、四十年の長きにわたる白色テロ時代がはじまる。
蔡焜霖は鎮役場で働いていたのに、高校時代に一時期読書会に入っていたせいで反乱分子として密告されて捕まり、収容所へ。
会ったこともない思想犯と共犯扱いにされ、やってもないことを自白させられて政治犯になる密告社会、恐ろしいし、誰が密告したか分からない疑心暗鬼の時代は人々の心が荒んだろうな…。
逆にそこで共産主義思想を知ることになる。
台北の保安所は、日本統治時代に東本願寺だった場所。作中に出てくる建築の感じが築地本願寺にそっくり…。
収容所で名前を呼ばれた人は連れてかれて銃殺される。鐘校長が呼ばれて連れてかれる時に、「幌馬車の歌」という日本語の歌を囚人たちが歌って見送る。このくだり、「悲情城市」でもあった気がする。
鐘校長のエピソードは創作ではなく、実際に伝わる有名な逸話みたい。
緑島の景色が美しくて、ゴーギャンの描くタヒチのよう。月桃やユリの花が咲き、珊瑚に囲まれた島は、沖縄や奄美大島を思わせる美しさに満ちてるけど、そこでの収容生活は過酷…。
しかしその中でも希望を失わない蔡焜霖は強かったなと思う。
「
だけど、時間の推移はぼくに身をもってエマーソンの言っていたことを感じさせてくれた。温室で育った「盆栽」は、生涯十分な日の光を浴びて温かく細やかな世話を受けることができるけど、終生鑑賞物であることから逃れられない。
だけど一旦何らかのアクシデント、例えばそれは壁が倒れたり、屋根が崩れたり、あるいは庭師の不注意なんかがあった場合、それは盆栽にとって一つの契機にもなり得るんだ。根を深く大地に張って大いに生い茂り、人々に幸福をもたらすことだってある。
ある人が病気になったり、障害を持ったり、あるいは愛する人との別れや死別を経験することは、その人に二度と立ち上がることのできないほど大きなダメージを与えてしまう。けれど、実際にはぼくたち自身の惰弱やある種の不幸を除けば、しばらく時間が経ってさえしまえば、そこに革命的な作用を
もたらすものなんだ。
幸福でのんびりとしたそれまでの囲いから抜け出して、生活のために奮闘しながら幼き日々に別れを告げて、より成熟して豊かな人生を創り出せるものなんだ。」
「君、振り返るんじゃないぞ!振り返っちゃダメだ」
十年経ったのち、家族の住む台北に引き取られる。ここで政治犯から距離取るために、引き取ってくれなかった親族もいたという他の囚人のエピソードが悲しい。
そして、出所後に、自分が捕まった一年後、父が自殺していたことを知るのだった…
緑島収容所で、「反共抗俄」の入れ墨を入れないかと言われて断るシーン。
「「孝経」には、「身体髪膚、之を父母に受く。敢て毀傷せざるは、孝の始めなり」とあり、我々は毎日中国の伝統美徳を称揚してるのに、これは孝行の道から外れてるのでは?」と断る。
この「身体髪膚、之を父母に受く。敢て毀傷せざるは、孝の始めなり」って台詞は、戦時中女学生だった祖母が学校で覚えたって言ってた。(私がピアス開けるって言うたびに、祖母はこの文言を引用して苦言を呈してたのが懐かしく思い出される…。祖母は蔡焜霖の姉くらいの年代のはず)
こういうのがパッと出てくるのは、戦後の国民党による教育というよりむしろ、戦時中の日本の教育とある程度繋がってるのかもと思った。孝経は儒教思想で、儒教を重んじるのは戦前の日本の教育でも中国でも共通してるので、どっちがどっちという問題ではないかも知れないけど。
Posted by ブクログ
これは名作…!!版画調の漫画が芸術的。
台中生まれの蔡焜霖の半生記、日本統治時代編。3歳の頃〜第二次世界大戦後、白色テロ時代に政治犯として投獄されるまで。
個人の人生を通して激動の台湾現代史が理解できて勉強になる。台湾語、日本語、国語(台湾華語)の三つの言葉が入り混じり、漫画の中でもフォントの違いと口調の違いとして表現されてる。それぞれの言葉が、アイデンティティの形成にそれぞれ影響してる世界観が伝わってくる。
兄の蔡焜燦は、奈良の飛行学校に合格して日本へ。司馬遼太郎の「街道をゆく 台湾紀行」に登場してる。
蔡焜霖のトレードマークはメガネ。最初に買った場所は台中の宮原眼科!
時代柄、「悲情城市」の映画を思い出すシーンも多々あった。(この本は台中が舞台だから、空襲や二二八事件の余波は台北の方が大きかったのかも知れないけど)
第二次世界大戦後、日本の植民統治から中国に復帰するんだ!と期待していたのに、中国国民党政権は、共産党との戦いの中で、台湾の人たちに弾圧を加えるようになりインフレがおこり、密告が蔓延り、日本統治下よりも悪い時代が来てしまった。そして、日本語と台湾語で学んでいた生徒たちは、国語(中国語)を新たに勉強しないと自分の名前も発音できないし、偉い人の講和も通訳官がいないと何言ってるかわからない。すごい時代の転換点だ…
Posted by ブクログ
決して他人事で言ってるわけではないですが、台湾の歴史はすごい。とても複雑に絡まり合ってるし、親子でも言葉通じないくらい変化が激しい。
そんな大変な社会に生きながら、悲しいことも乗り越えながら、タフでエネルギッシュで明るく暮らしている台湾の人たちを心底尊敬します。
主人公の蔡焜霖さん、調べたら一昨年92歳でお亡くなりでした。もっと早く知りたかったな。お疲れ様でした。
自分と40年近くも人生がオーバーラップしている方がこんなに大変な人生を送ってたなんて。親とか祖父母とか同じ時代を生きたどなたかの目線で社会を振り返るって、教科書的な歴史の勉強とまた違う。知ってるつもりで知らなかったことがいろいろ出てくるし、自分のいる社会を理解する上でも大事だなと実感した。
あとなにげに、絵柄とか装丁の色使いとかが台湾っぽいおしゃれさで本棚映えする漫画なのが気に入った。