ユーザーレビュー 常人仮面 1 一路一 / 鶴吉繪理 ストーリーもおもしろいし、絵もうまい。何よりすごくオリジナリティのある世界観設定。 敵を殺すとその姿になってしまうので、敵が雑魚でも簡単に殺してはならない。また、強い姿になってしまうと強い姿を欲しがる輩に逆に狙われやすくなる。ちなみに強いと言ってもあくまでただの人間よりは強いというレベルなので、食物...続きを読む連鎖の頂点はヒグマである。 人間の心理描写もちゃんと描けていて、最初こそ常識人だった一般人たちが、次第に生きるためならなんでもするようになっていく。また、相手を倒すと相手の姿になれるので、外見が仲間でも中身が違う場合があり安心はできない。 個人的にはすごく好きなので連載が続いて欲しいが、こういうオリジナティのある凝った作品ほど短期終了してしまう傾向がある現在の日本のマンガ界では、このまま続けられるかどうかがちょっと心配。 exelance 常人仮面 2 一路一 / 鶴吉繪理 私だけかも知れないし、漫画読み全員に言える事かもしれないが、(1)でその面白さにKOされた漫画の(2)が、(1)よりも面白い、と歓喜で震えてきてしまうな、身体が。 きっと、(1)より面白くなるだろう、と期待していたが、それを圧倒的に凌駕していた(2)だった。ありがとうございます、一路先生、鶴吉先生。...続きを読む (1)の時点で、双子の姉・克己への愛が、尋常ではないレベルに達し、その愛を貫くための行動を実行に移す事に何ら躊躇わない、既に、線の向こう側に立っていた克人。 この(2)では、そんな克人の姉愛ゆえの怖さが、より際立っている訳だが、克己はその克人の姉なんだよな、と実感もさせられた。 双子だから、って理由じゃ納得できないレベルの、似た者同士だ。そりゃ、他の生徒らも、二人のズレっぷりにドン引きしちゃうわ。 でも、その人並みの幸せを掴むために必要な「普通の感覚」からズレている所が、この『常人仮面』の面白さを強め、作品としての質を上げている訳だから、私としちゃ、何の文句もない。 聴覚が特化している兎と蝙蝠のごちゃ混ぜ怪人との戦いは、一時こそ、克人が心臓の発作を起こし、また、相手のえげつない怪音波で窮地に陥りかけたが、腐り果てた体で迫田君が助太刀に入ってくれたおかげで助かった。 そんな迫田くんのために、まぁ、克己を必要以上に怯えさせたくない、嫌われたくないってのが第一にしろ、克人は女怪人を殺さず、瀕死の迫田くんを救うために生け捕りにする。そして、迫田くんの姿を変貌させるために、その手で殺させる・・・・・・うーん、怖い。 しかし、怪人はまだ蔓延っており、残酷な事に、既に身内の血が流れてしまっていた。克人にとって、一番に大事なのは克己だが、ポンコツである自分を受け入れてくれた祖父に対しては、ちゃんと恩義を感じていた。そんな祖父を殺した相手を、彼は許さない。外見は人から遠ざかり、中身は外見が変わる前から常人のそれから逸脱していて、変貌してから、克己愛がより増してるが、まだ、克人の中にも人間らしい部分は残っていたようだ。 自分の身が一番に可愛いからこそ、文字通り、人並み外れた戦闘力を持っている克人の側が最も安全だ、と合理的な判断を下し、大高家を訪れた吉家さん。別に、彼女の考え方を罵る気はないが、この環境は、ちょっと狡猾なくらいじゃ生きていけんのだろうな・・・さて、命に届きかねないダメージを負わされた彼女は、生きるために、どんな判断を下し、実行に移せるのかな? この台詞を引用に選んだのは、ゾッとさせられながらも、自分の信念が宿る言葉を裏切っていない人間は、やはり、圧が違うぜ、と感じたので。 人間、越えちゃいけない一線は、確かにある。 ただ、一番、大切な誰かを守るために、その一線を越えられる人間が、越えられない人間以上に強いのは事実じゃないだろうか。 愛を貫くってのは、実は結構、茨の道なんだぜ。 さすがに、私も、誰かを守るために他人を殺せ、とまでは言わないにしろ、死んでも守りたい相手がいるなら、死なずに生きろ、とは言いたい。 (ひとごろしはいやだ) 「何、寝ぼけたことを言ってるんだ?」 「変身の時点で既に殺してるし、何より、俺たち、かなりまずい状況にいる」 「ツミ、スマホで・・・」 「あ、あたしがする!」 「田中君は殺された。化け物だって、もっと襲ってくるだろうし、この先、何が起きるか、わからない。大麻さんを放り出すのか?一人でさっさと死んでいく気か?愛してるなら、限界までやれよ」(by迫田、克人、克己、大麻) Posted by ブクログ 常人仮面 1 一路一 / 鶴吉繪理 ダークだが重苦しくなく読み易い ジャンル的には「ある日突然日常が崩壊しサバイバルする」系の話です。 それだけ聞くとよくある話。 しかも作中に登場する怪人達の多くは生身の人間よりも弱い。 なんだヌルゲーじゃないか。 ……なんてワケには当然いきません。 とある理由により安易に敵を殺害する事ができず、加えて中途半端に強い人物は却って...続きを読む狙われやすく危険というバランスになっているのが画期的です。 また、主人公は持病により元から死と隣り合わせの生活を送っていた為、この手の日常崩壊系にありがちな「主人公が狼狽えるだけで2〜3話くらい終わった」なんて事もなく速やかに順応してくれます。 ただキャラが増えて話が本格的に面白くなってくるのは3話目あたりからだと思いますが。 Yama-Yama 常人仮面 1 一路一 / 鶴吉繪理 絵柄、ストーリーのテンポや展開性、キャラクターの個性や、それに則った言動、アクション描写、それらを混ぜ込んだ総合的なバランス。どれもが、私の琴線にガンガン触れてくる。 これほどまでに、ドンピシャだったのは、それこそ、ともつか治臣先生の『令和のダラさん』だな。作品のジャンルは、若干(?)違うにしろ、質...続きを読むの高さは匹敵している。 仮に、この『常人仮面』が、週刊少年サンデーで連載されていたら、その回のクオリティや、他の作品の展開にも左右されるだろうが、それでも、私は、読者アンケートで、ベスト5、少なくとも、「最近面白くなってきた作品」の欄に、この『常人仮面』のナンバーを書いていただろうな。 主人公・克人は、心臓に爆弾を抱えており、激しい運動をすると、すぐに倒れてしまう虚弱体質なイケメン男子高校生。けれど、彼が患っている病は、心臓を蝕んでいるモノより、ある意味、厄介なモノ。そう、克人は「ど」が付くほどのシスコンだったのである。 いや、別に、双子の姉・克己を性的な目で見ている訳じゃない。それなら、まだマシな方で(マシか?)、克己をクズ男から守るためなら自分の命を捨てようとし、同時に、敵の命を殺す事も厭わないタイプのシスコンだ、彼は。 こう書くと、病弱な弟が姉の為に殺人を犯し、その罪を隠し、また、重ね続けるタイプのストーリーか、と勘違いさせてしまいそうだが、この『常人仮面』はどちらかと言えば、ホラーバイオレンスアクション系だ。 突然、謎の場所へ入り込んでしまい、怪人からの襲撃を受けた克人は、克己を守るために、限界を迎えていた肉体を根性と殺意、そして、克己への純粋な愛で屠った。 本来であれば、心臓が限界を迎えかけていた克人は、そのまま死んでいただろうが、この場所の“ルール”によって、人ならざる者に変貌してしまう。自分の手で殺した相手の外見や特殊能力を取り込む、その“ルール”を理解した克人は、美しい克己を狙う者が現れるかもしれない、と警戒する。 取り込むのは、あくまで外見や特殊能力のみで、克人は克人のまま。闘争衝動は激しくなっているが、本質は同じだ。だからこそ、彼は基本的かつ徹底して、克己を守るためだけに行動する。常識は持っているし、友情は大事だ、と思う感性も持っているが、「克己第一」のスタンスは揺るがず、いざと言う時は、他人を見捨てる気満々。 そんな「ど」シスコンの克人が、どこまで、人の心を持った、ある意味、最悪な怪人に到っていくのか、期待が出来る良い作品だ、この『常人仮面』は。 この台詞を引用に選んだのは、好きだな、そういう物の考え方、問題との向き合い方は、と感じたので。 実際、世の中、トラブルや不幸は、いきなり降りかかってくる。 程度や個性にもよるだろうが、精神的に動けなくなる事態もあるだろう。 しかし、悲嘆に暮れていたって、自分の殻に閉じこもっていたって、トラブルは何一つ解決しない、好転しない、改善できない。 であれば、半ば強引にでも、前向きになって、我武者羅に突っ走り出した方が、いくらか、事態はマシになったりするもんだ。 追い詰められた時に、ニッコリと笑えるからこそ、人間は強く、気高く、そして、美しいのである。 ただ、このレベルの状況になっても、こうやって考えられる克人は、見た目以前に、メンタルがモンスター級だわ、と戦慄もする。同時に、そんな危なっかしいバカな弟の心配をせにゃらなん克己にも同情してしまうな。 「・・・どうして、そんな姿になったのに、冷静なの?」 「うーん・・・・・・冷静っていうか、落ち込んだら、境遇に屈したみたいで腹立つし、笑い飛ばした方が前向きだろ?」(by大橋克己、大橋克人) Posted by ブクログ 一路一のレビューをもっと見る