作品一覧

  • 乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟
    5.0
    乃木坂46は、現代のアイドルシーンのなかでグループ全体としても個々人としても絶大な人気を獲得している。彼女たちが支持される背景には、どのような社会的な価値観の変化を見いだすことができるのか。 乃木坂46の舞台演劇への傾倒に着目して、アイドルが「演じる」ことの意味を解きほぐす。そのうえで、ミュージックビデオやドキュメンタリー、ライブパフォーマンスなどを読み解き、2010年代のアイドルシーンが築いた代表的な特徴である「選抜」「事件」「戦場」にためらいを示すことで、乃木坂46が独自の魅力を手にしたことを明らかにする。 アイドルという職能と専門性、〈少女〉とエイジズム、選抜と序列化、個々人のパーソナリティを消費対象にすることで生じる抑圧、理不尽な慣習――。アイドル文化が抱える課題も指摘しながら、乃木坂46がそれらと対峙して獲得した「静かな成熟」、それを可能にする社会的なコンテクストを浮き彫りにする文化評論。
  • アイドルについて葛藤しながら考えてみた ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉
    3.6
    今日、アイドルは広く普遍的な人気を獲得し、多様なスタイルや可能性をもつジャンルとしても注目されている。しかし、同時に多くの難点を抱え込んでいることも見過ごせない。 暗黙の「恋愛禁止」ルールとその背景にある異性愛主義、「年齢いじり」や一定の年齢での「卒業」という慣習に表れるエイジズム、あからさまに可視化されるルッキズム、SNSを通じて四六時中切り売りされるパーソナリティ……。アイドルというジャンルは、現実にアイドルとして生きる人に抑圧を強いる構造的な問題を抱え続けている。スキャンダルやトラブルが発生して、旧態依然ともいえるアイドル界の「常識」のあり方が浮き彫りになるたび、ファンの間では答えが出ない議論が繰り返されている。 その一方で、自らの表現を模索しながら主体的にステージに立ち、ときに演者同士で連帯して目標を達成しようとするアイドルたちの実践は、人々をエンパワーメントするものでもある。そして、ファンのなかでも、アイドル本人に身勝手な欲望や規範を押し付けることと裏表でもある「推す」(≒消費する)ことに対して、後ろめたさを抱く人が増えている。 本書では、「推している」がゆえにジャンルが抱える問題から目をそらすのではなく、かといって、現に日々活動を続ける一人ひとりのアイドルの存在を無視して「アイドル」そのものを「悪しき文化」として非難するのでもなく、「アイドルを好きでいること」と問題点の批判的な検討との両立を目指す。 乃木坂46やAKB48、ハロー!プロジェクト、二丁目の魁カミングアウトなどの具体的なアイドルの実践を取り上げる批評から、「推す」という行為のもつ功罪を問い直す論考、近年K-POPアイドルシーンで盛んな「女性が憧れる女性像」である「ガールクラッシュ」コンセプトの内実を検討するレビューまで、様々な視点から「葛藤しながらアイドルを語る」ことの可能性を浮き彫りにする。
  • 「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う
    3.8
    1巻1,760円 (税込)
    アイドルが一過性のブームではなく文化として根づきつつあるいま、アイドルという芸能ジャンルの特性を、「SNSや現場の重視」「アイドルのパーソナリティの開示」「ファンの承認欲求」という観点から分析して、アイドルを語る言葉をバージョンアップする。

ユーザーレビュー

  • 乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟

    Posted by ブクログ

    これまで「推す」ということがなかった自分が乃木坂にハマって、
    なぜ自分はアイドルに惹かれるんだろうと知りたくなって読み始めた。
    乃木坂がAKBと比べてある意味AKBへのアンチテーゼであることがなるほどと思った。
    AKBは、「会いに行けるアイドル」で物理的に近かったけど、乃木坂は心理的に近い感じがする。
    「私たちと一緒だ(等身大)」と思えるのが乃木坂の魅力なのかなと思った。

    アイドル論についてさらに知りたくなるきっかけになった。
    使っている言葉は難しくてついていくのに必死だったけど、勉強になった。

    0
    2024年01月01日
  • 乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟

    Posted by ブクログ

    乃木坂46は本書でも触れられているAKB48との(一種の)混同や世間の秋元康アレルギーもあって精度の高い批評を受ける機会が限られてきたグループだと思う。要は女性アイドル史における転換点でありながら、その事に気付かれてすらいない。その点において非常に貴重かつ有益な論考が記された一冊。乃木坂46に限らないアイドル論としても読むことが出来、特にジェンダー論やエイジズムに足を踏み入れる第6章が興味深かった。

    0
    2020年09月20日
  • 「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う

    Posted by ブクログ

    昨今、熱狂の渦の中心とも、批判の対象ともなることも言及されることが多くなった「アイドル」。アイドルについてされがちな言説についての交通整理を行い、それぞれの言説をフラットな立ち位置に立たせ、「アイドル」(特に女性アイドル)の現状を冷静に見ることができるようになれる本。

    「アイドルの歴史はこうだった」とか「アイドルはこういう解釈だ」「アイドルとはこういうものだ」という本や文章は多いけれども、それらの言説を整理するという意味では、この本はアイドルについての論壇の中で非常にレアであり、かつ重要な位置づけができるはず。

    ただ、香月さんのように非常に丁寧な交通整理をもってしても、いやむしろ丁寧な手法

    0
    2014年04月18日
  • 「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う

    Posted by ブクログ

    「『アイドル』自体が日本の社会のなかで、一見非常にわかりやすそうで、実際にはものすごくつかみどころがない言葉なのだ。アイドルについて語るとき、我々はアイドルとは何なのか、あまりわかっていない。」(「あとがき」より)

    アイドルと言われてそれぞれの人が頭に思い浮かべるイメージは大きく異なり、こうした認識の食い違いがアイドルに関する議論をややこしくしている。本書は女性アイドルを対象に、「アイドル」という言葉が意味するもの、アイドルの歴史とアイドル観の変遷、アイドルの音楽的特徴、SNS時代のアイドルとファンのコミュニケーションなどを眺めることによって、「アイドル」という言葉のわかりにくさを整理する。

    0
    2024年06月11日
  • アイドルについて葛藤しながら考えてみた ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉

    Posted by ブクログ

    アイドルというものを、ジェンダーやセクシュアリティという観点から語る論考集。アイドルを「疑似恋愛」の対象と見るのではなく、パフォーマンス重視で見ている自分としては、アイドルを見る切り口が違って違和感はあったが、どの論者もアイドルへの愛ゆえに葛藤しながら思考しているので、不快感はない。参考になる一書だった。

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    2022年12月22日

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