神品芳夫の作品一覧
「神品芳夫」の「黄金の壺」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「神品芳夫」の「黄金の壺」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
Posted by ブクログ
初めてホフマンの『黄金の壺』を読んだとき、その不思議な魅力に取り付かれてしまいました。現実と幻想が溶け合う世界、そこに描かれる若き書生アンゼルムスの冒険は、200年以上の時を経た今でも、私たちの心を強く揺さぶります。
物語は、ドレスデンの街で始まります。聖昇天祭の日、不器用な書生アンゼルムスは林檎売りの老婆の籠を倒してしまい、その不幸な出来事から彼の奇妙な冒険が始まるのです。黒い門の前で見た三匹の金色の小蛇、特に青い瞳を持つ一匹への恋。そして、古文書の写字生として雇われた不思議な文書保管官リンドホルストの家での体験。これらの出来事は、現実なのか、それとも主人公の妄想なのか、読者にはその判断が委ねられます。
ホフマンの描く世界の特徴は、日常と幻想の境界の曖昧さにあります。金色の小蛇は実は文書保管官の娘セルペンティーナであり、林檎売りの老婆は魔女であり、リンドホルスト自身も実は大魔法使いであったと明かされますが、それらの設定は唐突に感じられません。むしろ、私たちの日常にも不思議な出来事や存在が潜んでいるのではないか、という感覚を呼び起こすのです。
この作品が書かれた19世紀初頭は、ドイツ・ロマン主義が花開いた時代でした。理性と合理主義への反動として、想像力と感性を重視する文学運動が起こっていました。『黄金の壺』は、そんな時代精神を見事に体現しています。しかし同時に、当時の市民社会への風刺も含まれています。「市民的な」生き方を象徴するヴェロニカとの恋、実務家になることへの期待など、社会的な価値観とアンゼルムスの詩的な魂との葛藤は、現代でも十分に共感できるものです。
特に印象的なのは、物語の中で重要な役割を果たす「書くこと」のモチーフです。アンゼルムスは写字生として古い原稿を写す仕事を任されますが、それは単なる機械的な作業ではなく、魔法的な文字との対話として描かれます。この設定には、芸術創造の本質についてのホフマンの考えが反映されているように思えます。
私がこの作品に魅了されるのは、その多層的な読み方ができる点です。メルヒェンとして読めば不思議な冒険物語として楽しめますし、より深く読み込めば、芸術と現実、想像力と理性、個人の自由と社会的制約といった普遍的なテーマについての考察を見出すことができます。
原文はドイツ語ですが、日本語の優れた翻訳がいくつかあり、比較的読みやすい作品だと思います。ファンタジー文学に興味がある方はもちろん、現代社会に生きる私たちの抱える葛藤について考えてみたい方にもお薦めしたい一冊です。200年前に書かれた物語が、こんなにも現代的な響きを持ちうることに、あらためて文学の力を感じさせられます。
Posted by ブクログ
ポー、カフカ、そして日本の作家への系譜
ドイツの作家ホフマンの1814年の作品。
とにかく不思議なお話で、とても詩的である。だいたい、ドレスデンの大学生アンゼルムスの恋の相手は緑の小蛇。でもおどろおどろしいような感じはなく、あくまでもおとぎ話風に幻想的である。人間が突然はげたかになって飛び去ったり、ドアのノブがおばあさんの顔になったりするような不思議なことが数多く起こる。また、パーティでかつらが飛び交うようなコミカルな場面や、火の精と悪魔の死闘の場面など、おもしろいエピソード満載である。
それでいて、作者がいつごろを想定して書いたかはわからないが、少なくとも1814年よりは前の、ドレスデンの街やエルベ川の風景、大学生や大学の先生やその家族の生活の様子、大学の教授の娘の考え方などが、リアルに生き生きと描かれている。
解説によると、ホフマンは、ドイツロマン派の流れと、怪奇・奇想文学の二つの系譜に属しているらしい。「彼の文学のロマン派的怪奇性はさらにポーへ、その超現実構成はカフカへと受け継がれ、現代に脈々と生きているのである。」(解説より)
もちろん、日本の作家にも影響を与えているだろう。
最後まで読むと、哲学的でもあり(特に最後の数行)、ページをめくるのが楽しい、新鮮な読書体験だった。