富山クラーソン陽子の作品一覧
「富山クラーソン陽子」の「奇術師の幻影」「犠牲者の犠牲者」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「富山クラーソン陽子」の「奇術師の幻影」「犠牲者の犠牲者」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
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Posted by ブクログ
最初は翻訳が固くて読みにくいスタートとなったが、徐々にこなれてきたのと物語が面白すぎて、ページを繰る手が止まらなくなった。
全体が三部構成となっている。第一部では、ろくでもない犯罪者たちが、世にも残酷な方法で殺されてゆく連続殺人事件という派手なスタート。追跡し始める捜査陣のヒーローと癖のありそうな男女の刑事、報道陣のヒロインとその経歴などの独特な個性を、通り一遍ではなく語ってゆく丁寧な章で、実に良い感じ。第二部は、事件を犯罪者側の一人称で語ったものなので、いきなり犯人がわかってしまうから、間違えても巻半ばを開いて飛ばし読みしてはいけない! そして第一部と第二部を合わせて、さらにひと捩じりした驚愕の結末に雪崩れ込むサプライズ終章。
まずは人間関係のあれこれを仕込んでおいて、それを丁寧に解きほぐしてゆく、という手法で描かれた犯罪絵図。徹底しているのは、悪玉たちはいずれも情け容赦ない100%完璧な悪党であるということ。それが、タイトルにも絡む要素であり、本書を成り立たせている基本図式であるように思う。誰が読んでもこいつは生きててはいけないという悪玉が多いが、中には巻き込まれて泣きを見る半端者悪玉もいたりして、その者たちにとっては辛すぎる仕打ちかな、と思われる面もあり。司法側に捕まっておけばこれほどの刑に処されずに済んだろうにとの疑問は残る。
勧善懲悪に見えて、どこかその隙間を縫う中庸のキャラも多いように思えるところは、この作品の空気抜きだろうか。それとも単純な人間だけを描きたくないという作者の趣向だろうか? 面白さや過激さを目指し過ぎたゆえに、リアリズムから遠のく感のある物語だから、そこに少しだけ現実らしさを求めて人間の個性という調味料を加えた感じもある。それもこれも北欧ミステリーのサービス精神と割り切れば、本書は全体でよくできたエンターテインメントであり、精巧な玩具であると言える。
本書の主軸となる第二部、即ち殺人者による独白は、ここにページをかなり費やしているために第一部の疾走感にブレーキをかけ過ぎという中弛み感を覚えないでもない。でもそれが最終章のどんでん返しに生きてくるとも言えるので、全体像を読後に俯瞰するとそこも納得。読んでいるうちは第二部は少し辛いです。
新人作家だが、元は新聞記者であったそうである。作家の勤めていた新聞社がそのまま、作中に実名で出てくるというのも一興であり遊び心であり作者にとってのノスタルジーなのか。
最後に、本書を血なまぐさいだけの面白ミステリーに終わらせなかったのは、キャラクターたちが抱える背景として重要となる家族ドラマの一面なのだろう。この新人作家はシリーズ二作目、三作目と書き継いでいるらしく、そちらの家族ドラマとしての今後も捨て置けない気がする。ミステリーのアイディアのみならず、この辺りの微妙な人間描写にも相応に重心を置いている作風には大変好感が持てる。続編の翻訳が切に待たれる。
Posted by ブクログ
凶悪犯罪者が次々と惨殺されるという連続殺人事件を、スウェーデン警察のカール警部と新聞記者アレクサンドラがそれぞれの立場から追いかける、というミステリ。
三部構成で、第一部の終盤に連続殺人事件の犯人が突然明かされ、第二部は犯人を主人公にした倒叙モノになる。そして第三部は後日談。
オチも含めて面白かったが、ストーリーの着地点を考えると続編とかシリーズ化は難しそうだ。シーモン警部補は反抗的だし、ラーシュ=エーリック鑑識官は偏屈だし、法医学者セシリアや新聞記者アレクサンドラは言わずもがな。
凶悪犯罪者たちへ行われた拷問の数々は、対象が凶悪犯罪者だからなのか、個人的には読んでいて辛くはなかったが、カールやアレクサンドラの拗れた親子関係には心が痛んだ。
Posted by ブクログ
とうとう読み終わっちゃった
なるほどな〜……そうしてオメガに到達した彼はアルファへ帰るのかあ。
解説で言及のあったシックスセンスは観たことがないので比較できないんだけど、シャッターアイランドを思い出した。罪の重さに耐えきれなくて認知を自己改竄する話。
骨の盗難は防犯カメラの描写的にも内部犯しか考えられないしローケの自作自演なのでは?とは思ってたけどヴィンセントも無自覚の自作自演だったか…。
"家族"のそれぞれが彼だったと思うと、彼と"家族"/"家族"同士のこれまでの関係の動きも色々考えさせられるなあ。
最初に冷笑(達観)をそばに置き、それから社会(社交)性と思考(論理)性を得て、冷笑から離れて信心を携え、信心から彼が封じた記憶に最も近い幼い姿で感情を得た?
冷笑(ウルリーカ)と信心(マリア)が仲悪いのは当然な気もするし、論理性(ベンヤミン)と話すと脳内の整理や新たな発見があるのも納得だし、社交性(レベッカ)と感情(アストン)が急に仲良くなったのも彼がミーナをきっかけに心を開いて現実を見つめ直し始めた兆しと考えてよかったのかも。
はじまりのアルファへ帰ったあと、彼はやっと"人生"をはじめることができるのかなぁ。世を儚むことはないとは思うけどしないでほしいなあ。
ミーナに辿られないように現金だけ使ってたりミーナのことを考えないように意識したり、ほんとうの"人生"を始めてからやっと彼はミーナのことを考える自分を許せるのかな。
前作のラストの様子から心配だったけどミーナとナタリーと二クラスの関係が想像以上に良好でよかった。
クリスマスって日本では恋人のほうが重視されるけど欧州側では家族で過ごすことに重きを置く行事なんだっけ?それを三人で一緒に過ごすってすごい進歩な気がする。
事件後もナタリーの存在はミーナの潔癖症の改善にものすごくいい方向に働いてるし関係は良好なままみたいで安心した。しかしヴィンセントは彼女の一生消えない後悔のひとつになってしまったんだな……。
ルーベンがボロカスに悪口言ってたアマンダが最後の最後に急に出てきてびっくりした。警官御用達カウンセラーなの?
あと虫風呂に入るのはミーナほどの潔癖症じゃなくても気絶するからミーナは本当によくがんばったと思う。すごいよ……
特捜班のメンバーのその後もちょこっと見れてよかった。
ユーリアが結局トルケルともアーダムとも別れることになったのは因果応報感が強かったけど彼女にはハリーがいるから大丈夫でしょう……。
ペーデルはやっぱり死んでいいひとじゃなかったよ〜〜〜………………アネットと三つ子ちゃんもちょこっと出てきてくれたけど、今もクリステルとラッセが訪れてくれていたらいいなあ。
ルーベンがサーラにぞっこんになるのは予想外だったけど、彼のこれまでの素行をみてると婚約までに一年かけてるのは『それだけ本気』なんだろうな。
1巻からは考えられないけどクリステルが孤独から犬とパートナーを得て1番まっとうに幸せになった気がする。
また時間できたら魔術師の匣から読み直したいな。
ヴィンセントにとってミーナとの出会いがどれだけ劇的だったのかがわかるだろうし、逆もしかりだろうし。
価値(貞操)観わかんないな〜ってなることもかなりあったけど、それだけキャラクターたちがそれぞれの価値観でそれぞれの人生を生きていたからなのかもなあ。
読めてよかった!
Posted by ブクログ
嘘だといって………………ペーデル……………………………。
魔術師の匣で、ヴィンセントもミーナも日本人的感覚からしたら行動がちぐはぐでイマイチよくわからないし不信感もあるな〜と思いつつも、なんで最後までするする読めたかよくわかった。
もちろん結末が気になる気持ちが中心にあるんだけども、解説にあった通り、『特捜班メンバーへの愛着』が生まれてたんだろうな……。
前作では今作がキーになるミーナには特別大きな動きはなかったけど、彼女以外のメンバーはそれぞれ私生活において悩みつつも事件が進むのと並行してちょっとずつ私生活や意識に変化があって、事件が終わった後にはそれぞれが明るい未来への兆しを見せてくれるのが好きだったんだなって、失って気付きました。
ペーデル……どうして………………。
ミーナが気付いてしまったシーンで本1回閉じちゃったよ……最悪だ………………
魔術師の匣でも班員(特にルーベン)からわりと冷たくされがちだったヴィンセントに初期からあたりがやわらかい人だった印象もあって、『良い人』と思ってたけど本当に善人だった。
自慢の三つ子たちの動画をあと何万回でもみたい、戻ってきて…。
ルーベン、クリステル、ユーリアはちょっと良い未来になりそうな終わりだったけど新メンバーのアーダムは母親の状態がよくなさそうな終わりで心配。
結局犠牲になった子どもたちの選定基準って何?行きずりにしてはヴィルマを待ち構えてたりするのは変だしなーと思ってたらラストがイヤミスすぎる。罪人たちの暗号ってダブルミーニングだったんだ。
ノーヴァの「一番大事なものを壊してやる」って憎しみの対象が本人ではなく、その子どもたちに向かったのが前作のイェーンを思い出した。
前作の3人は悪気もなんにもなくてただ友だちを遊びに連れてっただけで、全然かわいいものだったけど今回はシンプルに悪意があって最悪〜〜…。
亡くなった子どもたちには本当に罪がないのでノーヴァはやはり罪人だけど、被害者であるノーヴァを罪人に仕立てあげたのは彼らであり彼らもまた罪人であり…………。
罪人であり被害者である人の人数が多い。故人のノーヴァはともかく残りのメンバーは永遠に口を噤み罪を重ね続けるんだろうな……。
5歳の可愛い盛りの娘を置いて、家庭と絶縁して離れることにしたミーナの当時の判断が正解だったかどうかはわからないけど、『自分が依存症の母親で苦労したから愛する子どもを同じ目に合わせたくない』という意思そのものは間違ってなかったと思いたい。
ナタリーがミーナを拒絶するのと、アストリッドがルーベンを受容したのが対照的だなあ。どちらもいないと思ってた片親が急に現れた子ども。
子どもの意思の差異はあるけど、エリノールもナタリー父も変化を受け入れる姿勢があるので次巻でどう変わってるか気になる。
次巻で終わり?らしいので、ラストまでヴィンセントに忍び寄り続けた謎の影との全面対決になるのかな?
今作が原文2022年発行の2024翻訳出版だったから、1年以上は待つだろうなって覚悟したらあと1週間くらいで最終巻が出るらしいのでベストタイミングで読めたかも。予約した!
ペーデルがいない次巻が悲しくて楽しみ。
Posted by ブクログ
アイスランドの伝承文学サーガの簡潔な文章を目指している作家、アーナルデュル・インドリダソンを意識しているのだろうか、短文で書かれている。そのため、登場人物の多さや上・下巻のボリュームが気にならずにサクサク読み進められた。
共に生きづらさを抱えたミーナとヴィンセントが出会い、お互いをいたわりあいながら、特捜班の個性的なメンバーと共に連続殺人事件解決に挑む。
ミーナは潔癖症で薬物乱用から抜け出すために苦しんでいる。熱いシャワーで身体が真っ赤になるほど流し続ける。手は消毒液でガサガサ。コットンショーツは使い捨て。
社交面で苦労しているヴィンセントは、目に入る物全てに対しての秩序と構造と偶数に振り回されている。
二人の精神世界は読んでいて、く、る、し、くなるほどだ。しかし、犯人側ではない主人公の持つ心の闇の部分が書かれているのが、話に深みを持たせていて、私の好きなスタイルだ。
著者はここ数年、難民問題に取り組んでおり、右翼に対しては厳しい姿勢で臨んでいるらしい。が、安全な国とされていたスウェーデンが、現在は大量の移民受け入れのため、先進国で最悪の「強姦大国」になってしまった。だからだろうか、本作の中での
「そんな浅はかな考えだから、この国はこんなになってしまったんですよ。」「残念なことに、人種差別主義者でさえ正しいこともある。」とのボヤキに、作者の嘆きが重なる。ミステリーでその国の社会が垣間見られるのも興味深い。
こんまりメソッドに麻原彰晃、スバル・レガシー、ハチ公映画の「HACHI 約束の犬」、手袋にマスクで堂々と街を歩ける日本が潔癖症ミーナの理想。日本に対する記述が随所にあり笑ってしまう。
二作目から一作目に戻って読んだので、なるほどと納得できてスッキリした。
殺人に関しては大掛かりな仕掛け有りで、かなり刺激的だった。
三作目発刊が待ちきれない。