シベリウスの交響詩には「レンミンカイネン」「タピオラ」「クッレルヴォ」などフィンランドの神話を題材にしたものが多いです、それらが登場するのが、フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」です。
フィンランドは西暦1000年頃からスウェーデンに占領され、1809年からはロシアの支配下になっていました。そんな中、医師のエリアス・リョンロートが、フィンランドの東にあるカレリア地方の農村を訪ね歩いて、優れた伝承詩人から叙事詩を直接聞き取り、まとめたのが「カレワラ」です。「カレワラ」とは「カレワという部族の勇士たちの国」という意味だそうです。この「カレワラ」の出版がフィンランド人の間に自分たちの国の文化遺産への意識を高め、独立の機運が高まり、ついに1917年にロシアからの自主独立を勝ち取ったのだそうです。
フィンランド語はスラブ系のロシア語ともゲルマン系のスウェーデン語とも全然異なるウラル語系の言葉だそうです。カレワラ、ポポヨラ、ヨーカハイネン、イルマリネン、ワイナミョイネン、ウッコ、レンミンカイネン…など、柔らかな響きの(カタカナで見るのとは違うかもしれませんが)固有名詞がでてきます。
一番中心的に活躍するのは永遠の賢人で呪術の大家で歌の名手で水の主と考えられるワイナミョイネンでしょうか。彼はあらゆる事物を「歌い出し」、呪術によって変形させることが出来るのです。海で仕留めた魚の“かます”の骨で“カンテレ”という楽器を作り、それで音楽を奏でると自分の命を狙う敵までうっとりと酔わせて眠らせてしまいました。
もう一人の重要人物はイルマリネンという鍛冶の名人で、天空を鍛造した宇宙神として尊敬されています。彼はポポヨラの乙女と結婚させてもらうために、“サンポ”という富の源泉となる凄い装置を作ってポポヨラの女主人に捧げます。実際にはそれだけでは結婚させてもらえず、ワイナミョイネンとイルマリネンが争奪戦をしてイルマリネンが勝って、ポポヨラの乙女を妻にします。(後に妻はクッレルヴォの殺されます
)
ポポヨラという国の名前はきれいですが、暗黒の国です。後に、ワイナミョイネンとイルマリネンは協力してポポヨラから“サンポ”取り返したのでポポヨラは貧乏になりました。けれどポポヨラの兵士に追いかけられ、結局サンポを海に落とし、破片が海に砕け散ったので、アハトラ(海の主のすみか)の人の宝となりました。
森と海と太陽の出ない冬と白夜の夏とオーロラの国で出来た国らしい神話だと思いました。