作品一覧 2024/04/12更新 最低賃金1500円がつくる仕事と暮らし 「雇用崩壊」を乗り越える 試し読み フォロー POSSE 試し読み フォロー 労働組合とは何か 試し読み フォロー 1~3件目 / 3件<<<1・・・・・・・・・>>> 木下武男の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 労働組合とは何か 木下武男 労働組合について調べるため、手に取る。 どちらかと言うと専門書であり、読んでいると眠くなる。 しかし、今まで特に考えなかった分野の知識・歴史を知り、以後何かに役に立つ事は確実に思う。 ブラック企業やワーキングプアへの対策。そして、なんとなく会社に従っている自分に気がついた。 著者の木下武男さんの...続きを読む言っている事が正しいのか判断する知識を備えていないので、今後もこの分野の書籍は気が向く事に手に取りたい。 Posted by ブクログ 労働組合とは何か 木下武男 書名の通り「労働組合とは何か」について、歴史の丁寧な記述と分析を交えて説明し、現代日本への提言で締める本である。 歴史の記述は、前近代の西洋の労働者の生活の解説から始まる。正直なところ最初は冗長に感じたが、本書を読み終えた後に振り返れば、労働者の組織運動の発展のあり方を解説し、前時代的な日本の労働...続きを読む環境を批判する上で必要な記述であったことがわかる。 そして舞台は近現代に移る。欧州のユニオニズムの発展と、弾圧を目的に生まれた会社組合を経て育った米国のユニオニズムの形態について解説される。 最後に、本書の半分近いボリュームを以って、日本の労働環境とユニオニズムの歴史の解説と分析、今後への提言が示される。 日本の労働環境の特徴は、概して言えば、前世紀の年功制と、今世紀の非正規労働の拡大である。 徒弟制技能養成が不十分だったため、企業内技能養成制度が生まれた結果、企業は養成した労働者の離脱を防ぐため、年功制を生みだした。年功賃金は、企業ごとに属人的で、年齢や勤続が重視され、また企業の介入の余地が大きい。欧米の同一労働同一賃金の仕組みとかけ離れたこの制度が、労働者の貧困とユニオニズムの不在を招いた。また、左派労働運動が自らの政治主義により自壊し、産業別労働組合を創る機会が失われてしまった。日本の労働組合は衰退し、労使協調を是とする総評、そして連合が支配的地位に立つに至った。 そして今世紀に入り、経済が悪化し年功性が継続できなくなると、企業は非正規雇用を拡大させ、深刻な貧困が広がった。これはまさに、同一労働同一賃金の原則もユニオニズムもない現状により悪化しているものである。日本の労働組合は、各産業の上層のみに存在し、下層労働者である非年功型のためのゼネラル・ユニオンが発達していない。 筆者は、ここにこそ、急務であるユニオニズムの創造の機会があると説く。関西生コン支部を中心とする、国内のいくつかの労働組合の成功例を紹介し、労働者一人一人の主体性を以って、産業別団体交渉・政策制度闘争による産業構造改革を行う労働運動を提唱する。 以上が本書の要旨である。現代の日本の過酷な労働問題 (年功制、非正規雇用) については多くの人が知るところだと思うが、労働組合とは何か、どのような歴史を持ち、どのような役割を担うべきなのかは、てんでわからないのが実情ではないだろうか。 日本において労働組合があまり知られておらず、あるいは単なる左派運動と解されているなかで、著者もあとがきで述べている通り、こうした解説を得る手段はほとんどない。 少しわかりにくい文章構成があったり、文献不足と感じた部分があったりはしたものの、素人でも読める、歴史と現況を俯瞰する丁寧な解説と分析がある点で本書は有用であり、労働問題に関心のある人にお薦めできる。 Posted by ブクログ 労働組合とは何か 木下武男 労働組合とは何か 木下武男 ヨーロッパ中世から日本の労働組合史までを概観し、日本におけるユニオニズムの発展を希求する本。 労働組合における前史は中世におけるギルドであり、ギルドの相互扶助機能は現代の労働組合におけるそれの源流となる。さらに、ギルド内で親方の数を制限していることも、今でいえば既得権益...続きを読むでこそあるが、ある種の働きすぎない、需給により収入が落ちないための仕組みであった。産業化後のイギリスでは、このようなギルドをベースとした自発的・約縁的結社が友愛団体として労働者の相互扶助機能を取り持つことになる。これは、近代化による身分や社団の破壊への対応策として、新たに都市の中で、約束により結びついた人々のセーフティネットである。パブリック・ハウスに集まるこうした友愛団体はそれぞれの収入から基金を設立し、寡婦や失業者の生活を保障した。さらにこのような生活保障を労働組合という視点で見ると、極めて重要なことは自分の労働力を安売りしないために、団体内で生活保障を行うことが、資本主義への強力なアンチテーゼとなる。仕事や生活面での不安は、労働力の安売りに繋がる。労働力の安売りを始めるとジリ貧となるため、あらかじめ一定以下の生活水準を作らないという団体の意志が重要になる。西洋における約縁の概念は、『日本人の法意識』でも強く感じたのだが、絶対的である。なぜなら、地縁や血縁が破壊された後に、人々が生き延びるために集まったものが約縁団体であり、彼らをつなぐ唯一のものが約束だからである。そして、こうした約束を守らせるために、生活不安への対抗策を団体内で所有することが非常に有用であると感じた。 こうしたオルタナティブプランは、キング牧師のバスボイコットの際に、今でいうUberのようなP2Pの黒人用タクシーを流通させていた部分でも見ることができるが、不条理と闘うために、運動を継続させることにしっかりと施策を打つというポイントが、日本の社会運動には抜けているようにも思える。 さらに、こうした友愛団体はクラフト・ユニオンの母体となる。クラフト・ユニオンの特筆すべき点は、職業紹介窓口をもっていることである。このような職業紹介窓口を持つことにより、労働者の地域的な流動性を担保することは、常に賃金を下げることを考えている資本家への対抗策として有効である。 このような前史において、労働組合の特徴や意義の輪郭が見えてくる。労働組合の根本は競争規制である。そして、その競争規制の方法として、生活保障、集合取引、最低賃金などの労働関連法案の制定がある。生活保障は、労働力の安売りを防止し、集合取引は労働者が団結することで最低限の賃金を交渉による資本家から獲得する。さらに、政治に積極的に関与することで、競争を規制するというものである。 マルクスの資本論では、剰余価値の源泉として労働力を挙げている。だからこそ、資本家は資本を最大化するために、労働力の操作を目標とする。より安く、生産性高く労働をさせることで、剰余価値は増えるからである。資本家は労働によって生み出される価値と労働力の価値の差分によって生き永らえ、その差分たる剰余価値を最大化することを目標とする。こうした場合、労働力の価値≒労働者が生き永らえ、次の日も会社に来るために必要なコストを最小化することを資本家は目論む。だからこそ、団結して労働力の価値の低下圧力に対して対抗しなければならない。イギリスの職業別労働組合のモットーである「働きすぎない、怠けない」という文言は、剰余価値の観点からみると、資本主義の核心を突いている。 現在、Uberなど、ギグエコノミーが盛んになっている。しかし、ギグエコノミーは、弱い個人を対象に、資本家が搾取を試みるには最適な環境である。だからこそ、生活を守るためにユニオニズムを学ばなければならないのである。なお、ここまで資本家、資本家と書いてきたが、これは具体的な人間を指しているのではない。私も会社員である限り、価値を最大化するというシステムを理解し、そして株の取引等で価値を最大化することのゲーム的な愉しさも知っている。だからこそ、人間は資本家という立場になることにより、価値の最大化をゲーム的に(自分の意図とは関係なく、システマティックに)望むようになる。こうしたシステム内での役割を担うものを、資本家と呼んでいる。 最後になるが、アメリカの労働組合史を読み解くと面白い部分が、アメリカはレッド・パージ然り、極めて労働運動へのバッシングが強い。そして労働組合へのバッシングが強い上に、労働者を長く働かせる機能を、内部に構築している。それが福利厚生である。企業が福利厚生を提供する形で、労働者を懐柔することで、ストライキや労働者の転職を未然に防いでいる。 私自身、労働運動はダイナミズムでなければならないと思っている。労働運動の根本概念である競争規制はややもすれば、人間を官僚的にし、既得権益を作り出す。日本の大企業で解雇されないことを良いことに官僚的で既得権益に胡坐をかいている人を多く見てきた。競争が人間を高めることはスポーツをやってきた個人的実感である。しかし、その競争が金銭的に搾取されることは許されることではない。だから、労働運動は常にアンチテーゼとしてダイナミズムでなければならない。競争規制だけが自立することは、良い状態ではない。しかし、私たちは人間性の向上に有用な「競争」が搾取され、劇薬になるという力には対抗しなければならない。そうした場合にのみ、ダイナミズムとしての競争規制は認められるべきである。 Posted by ブクログ 労働組合とは何か 木下武男 労働組合というものを胡散臭く思って育った世代としては、歴史に興味があった。どうして労働組合は力がなく、組織率が低いのか。できれば関わりたくないと若い頃は思っていたが、海外の事例を見ると、労働組合が労働者にとっていかに大切かわかってきた。 そんな時に、ちょうど出会った本。なぜ日本の労組は組織率が低いの...続きを読むか、どうすれば労働者は守られるのか、ヒントになる。労働組合はやはり労働者を守るものとしてしっかりと機能させなくてはならない。そのためにはみんながその意識を共有する必要がある。 Posted by ブクログ 労働組合とは何か 木下武男 労働組合の歴史と意義がよくわかった。 労働組合の本質は、企業を超えて業界横断的に同一の労働環境と賃金水準を設定し、それを下回る条件の企業が必要な人員を雇えなくするという共通規則と集団交渉にあり、年功賃金と企業内の養成制度と終身雇用を特徴とする日本では、企業別の組合しか育たず、真のユニオニズムに基づく...続きを読む産業別組合は発展して来なかったが、終身雇用制度が破綻し、非正規社員が溢れる現状において、遂に、ユニオニズムの覚醒と産業別組合・一般組合の発展が求められているということ。 個人の幸福は、個人の努力と変化する勇気にかかっているという考えに縛られていたが、ジョブ型雇用、同一価値労働同一賃金、産業別組合(または一般組合)のセットによってこれを実現するアプローチもあることが知れた(非生産的な既得権益層が生まれて跋扈するような嫌な予感もするが) Posted by ブクログ 木下武男のレビューをもっと見る