作品一覧

  • あるじなしとて
    4.1
    1巻1,799円 (税込)
    律令体制の限界、財政破綻の危機……。この国を救う――。たとえ我が名が残らなくとも。“学問の神様”ではなく“政治家”としての菅原道真に光を当てた、第12回日経小説大賞受賞作家による感動の歴史長編。文人として名を成し、順調に出世していた菅原道真は、讃岐守という意に反した除目を受け、仁和2年(886)、自暴自棄となりながら海を渡って任国へ向かう。しかし、都にいては見えてこなかった律令体制の崩壊を悟った道真は、この地を“浄土”にしようと治水を行なった空海の想いを知ると共に、郡司の家の出でありながらその立場を捨てた男と出会うことで、真の政治家への道を歩み出す。「東風吹かば匂いおこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな」に込められた道真の熱き想いとは。菅原道真の知られざる姿を描いた傑作歴史小説。
  • 和らぎの国 小説・推古天皇
    4.8
    1巻1,980円 (税込)
    『利生の人 尊氏と正成』で日経小説大賞を受賞した天津佳之氏の受賞第一作は6世紀末に即位した史上初の女性天皇、第33代、推古天皇を主人公に、この国の精神のなりたちに迫る野心的な作品。神代から始まる『古事記』はこの推古天皇の時代で終わっており、まさに日本が神話から歴史に移る時代の物語です。「和を以て貴しと為す」初の成文法・十七条の憲法、「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す」との国書を中国の皇帝に捧げた初の遣隋使、氏姓によらない朝廷内の官僚の序列を初めて示した「冠位十二階」……朝廷が次々と国家体制を整える改革を断行したのは、推古天皇の御代でした。摂政・聖徳太子が主導し、政治を安定させるべく仏教の興隆を進めるなか、激動する東アジアとの関係を巡って生じた軋轢をも融和させる女帝の祈りに、人々は神代の昔から続く、この国に在る真心を見ました。和らぎの国とは、はたして――奇しくも昨年2021年は聖徳太子の1400年忌にあたり、この作品にも登場する聖徳太子創建の法隆寺はじめゆかりの寺院で盛大な法要が営まれ、大阪と東京の美術館・博物館では聖徳太子をめぐる特別展覧会が開かれたばかり。本作には、聖徳太子の伝説をめぐる、あっと驚く仕掛けも隠されています。
  • 利生の人 尊氏と正成
    3.9
    1巻1,760円 (税込)
    第12回日経小説大賞(選考委員:辻原登氏・髙樹のぶ子氏・伊集院静氏)受賞!  鎌倉幕府滅亡から建武の新政へ。人が生きる甲斐のある世をつくる――後醍醐帝と志を同じくする楠木正成と足利尊氏。三人はその志をかなえるためにともに戦い、志をゆがめぬために敵味方に分かれた。やがて南北朝の動乱を経て、室町幕府による武家政権に移る混沌とした世の人間ドラマを、最新の研究成果も取り込みながら描き、まったく新しい足利尊氏、楠木正成、そして後醍醐帝を造形。選考会では確かな歴史考察と文章の安定感、潔いまっすぐな作柄が評価された、歴史小説期待の新鋭の登場だ。  「利生」とは「《「利益衆生」の意》仏語。仏・菩薩が衆生に利益を与えること。また、その利益」(大辞苑)。本作では「上下の別なく、民が国を想う志を持ち寄って各々の本分を為せば、きっと日本は悟りの国になれる」と後醍醐帝と尊氏、正成は理想の世にかかげる。 <あらすじ>  時は鎌倉末期。討幕の動きが発覚し後醍醐天皇は隠岐に流されるが、幕政への不満から、治世の主体を朝廷に取り返すという近臣たちの討幕運動は幕府内にも広がっていく。幕府の重職にあった足利高氏(尊氏)が、帝方の楠木正成に呼応するように寝返り、鎌倉幕府は滅亡。後醍醐帝が京に戻り、建武の新政がはじまる。  しかし、武家も公家も私利私欲がうごめく腐敗した政治は変わらず、帝の志を実現しようと心をひとつにする尊氏と正成の運命は、陰謀に翻弄され、引き裂かれていく。
  • 和らぎの国 小説・推古天皇

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    奈良県特に盆地にすむ人には身近な地名の由来含めて非常に学びも多い。改めて橿原市、明日香村、斑鳩町(法隆寺)平群町、葛城市などなどの地を巡ってみたくもなる。
    磐余、久米、十市、高市、磯城などなど地元の人しか知らないような地名も多数出てくる。

    歴史としては、なぜこの時代の日本が朝鮮半島に影響を持てたのか、十七条の憲法、仏教信仰、遣隋使、日本書紀というものが必要だったのかなどが腑に落ちる。

    和をもって尊しと為す

    日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す

    この名フレーズに結びつけるストーリーも秀逸。
    著者のロマンチストが炸裂する一作。

    この時代の小説で飽きずに読めた初めての作品かもしれな

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    2024年10月18日
  • 利生の人 尊氏と正成

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    【「利生とはなんでしょうか」-「衆生に神仏の利益をもたらすことと申します」】(文中より引用)

    後醍醐天皇、楠木正成、足利尊氏の3名を軸としながら、動乱の世とそれぞれの身の処し方を描く歴史小説。著者は、本作で日経小説大賞を受賞した天津佳之。

    時代を切り開いた人物であるにもかかわらず、足利尊氏ってどこか明確なイメージを結びづらい人物だなと感じていたのですが、本書を読んでその理由が那辺にあるかつかめたような気がしました。

    後醍醐天皇ってやっぱり異能の人だったんだなと☆5つ

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    2023年04月03日
  • あるじなしとて

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    ネタバレ

    「本当に願うならば、現実に顕さねばならない。その願いがどんなに途方もないことでも、命懸けで為そうとすれば、ほんのわずかでも実現できるかもしれない」
    空海阿闍梨の為した事を目にして得た想いを、その後も悩みながら苦しみながら、一生をかけて自らのすべきことを見定め、成し遂げた。ただただ優れた人物というだけでない描写に人間らしさを感じられる、そんな菅原道真公が国を活かすために奔走する姿に感銘を受ける。
    恥ずかしながら、もともと歴史、古典に明るくなく、読み始める前は、帯にある"東風吹かば〜"の歌に対して思えることがなかったのですが、参章の終わり、何かがスッと胸に落ちてきました。

    0
    2022年07月18日
  • あるじなしとて

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    ネタバレ

    「学者で、漢詩の才能にも恵まれた人」「無実の罪で大宰府に左遷された悲劇の人」というイメージとは違った、政治家としての魅力溢れる菅原道真が描かれていました。特に前半の讃岐赴任時代は、左遷に泣いたり、図星をさされて怒ったりと、とても親近感が湧く菅原道真です。
    そんな菅原道真が左遷を経て都に戻り、細心に、大胆に税制改革を進めていくところは本当にカッコいいです。
    自らの地位も名誉も捨てる覚悟で、国を救うための税制改革を進めていく姿に、胸が熱くなります。

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    2022年06月18日
  • 和らぎの国 小説・推古天皇

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    ネタバレ

    歴史小説が好き、しかもこの時代!
    古代の歴史でまず思い出すのが永井路子さんの本、あれこれ。
    また別な角度からの本もあったし、コミックもあったし~
    とにかくワクワクが止まらない古代史。
    歴史小説。

    この本もまた、新解釈で小説として読むのでしたら、手に汗握る場面もあり、本の世界にどっぷり沈み込める!
    史実がどうのより、楽しい読書としておすすめです。

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    2022年03月17日

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