天津佳之のレビュー一覧

  • 利生の人 尊氏と正成
    【「利生とはなんでしょうか」-「衆生に神仏の利益をもたらすことと申します」】(文中より引用)

    後醍醐天皇、楠木正成、足利尊氏の3名を軸としながら、動乱の世とそれぞれの身の処し方を描く歴史小説。著者は、本作で日経小説大賞を受賞した天津佳之。

    時代を切り開いた人物であるにもかかわらず、足利尊氏ってど...続きを読む
  • あるじなしとて
    「本当に願うならば、現実に顕さねばならない。その願いがどんなに途方もないことでも、命懸けで為そうとすれば、ほんのわずかでも実現できるかもしれない」
    空海阿闍梨の為した事を目にして得た想いを、その後も悩みながら苦しみながら、一生をかけて自らのすべきことを見定め、成し遂げた。ただただ優れた人物というだけ...続きを読む
  • あるじなしとて
    「学者で、漢詩の才能にも恵まれた人」「無実の罪で大宰府に左遷された悲劇の人」というイメージとは違った、政治家としての魅力溢れる菅原道真が描かれていました。特に前半の讃岐赴任時代は、左遷に泣いたり、図星をさされて怒ったりと、とても親近感が湧く菅原道真です。
    そんな菅原道真が左遷を経て都に戻り、細心に、...続きを読む
  • 和らぎの国 小説・推古天皇
    歴史小説が好き、しかもこの時代!
    古代の歴史でまず思い出すのが永井路子さんの本、あれこれ。
    また別な角度からの本もあったし、コミックもあったし~
    とにかくワクワクが止まらない古代史。
    歴史小説。

    この本もまた、新解釈で小説として読むのでしたら、手に汗握る場面もあり、本の世界にどっぷり沈み込める!
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  • 和らぎの国 小説・推古天皇
    推古天皇が天真爛漫、よく笑う素敵な人。戦闘シーンの迫力が凄いです。
    小野妹子の皇帝謁見のシーンは緊迫しているのにコミカルで笑ってしまいました。
  • 利生の人 尊氏と正成
    太平記など南北朝時代を書いた名作は数多くありますが、この本はそれらに勝るとも劣らないと言えるでしょう。
    足利尊氏、楠木正成、後醍醐帝らをこれほどうまく的確に表現したのはありません。

    皆が明日の皆を生かすために役割を果たすのです。
  • あるじなしとて
    菅原道真は、私が最も尊敬する存在の一人。京から讃岐へ赴任後、様々な苦悩と経験を積みながら、真の政治家へと力強く羽化していく姿に、何度も目頭が熱くなった。学問だけじゃない、国を、世の中を、人を想い政に奮闘した道真が、ここに居ます。

    前半で癇癪玉を爆発させているところも人間臭くてかわいい……と思ってし...続きを読む
  • あるじなしとて
    菅原道真壮年時代の話。
    歴史小説にありがちの、結果を知ってるけどどうつなげるの?にしっかりとカタルシスがあるのが好みでした。
    讃岐左遷時の道真に”プライドの高い京貴族感”をもたせ過ぎなのが少し気になったけど、後の公卿とやりあう場面での”気持ちの伝わらなさ”に返ってくるあたりはなるほど上手いな、と。
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  • 利生の人 尊氏と正成
    足利尊氏と楠木正成は敵味方に分かれて戦ったが、共感し合うものを持っていた。南北朝の内乱で対立したが、元々は共に鎌倉幕府打倒に立ち上がった側であり、共感する点があることは当然である。皇国史観では尊氏は逆賊、正成は忠義の士となっているが、それは皇国史観の固定観念である。尊氏は鎌倉幕府御家人、正成は悪党と...続きを読む
  • あるじなしとて
    菅原道真の左遷されて行った讃岐国での出来事,彼に目を開かせたこの民を思う無私の男の死の場面は胸に迫ってきた.その後の道真のなりふり構わぬ改革への熱意,公家との駆け引きなど面白く,太宰府へ流された顛末もよくわかった.
    それにしても,藤原一族の血は恐ろしい.
  • あるじなしとて
    為政者の苦悩と喜び。千年後の今日、空海の目指す浄土に近づいているのか。疫病は、相変わらず、他国で戦争が起こり。
  • 和らぎの国 小説・推古天皇
    ■飛鳥時代を小説として読むことは難しい。文献が少なく、欠けた時間を想像で埋め合わせる。人の名前が現代から見るとかなり違っているし、平安時代以降の人名とも異なる。正確性を期すためだと思うが、「推古天皇」「聖徳太子」の名前で語られていない。更に文章が硬い。講談本のような気楽さで読むことはできない。
    ■「...続きを読む
  • 利生の人 尊氏と正成
    足利尊氏と楠木正成、後醍醐天皇の日本をよくするためにそれぞれ三者三様の行動が興味深く、思ったようにいかないなぁと思いながら読みました。簡単に主君を裏切る様が面白く、わずかながら3人の人物について理解が深まり勉強にもなりました。
  • 利生の人 尊氏と正成
     以前、こども版「日本の歴史」で、この時代のものは読んだことはあったのですが、改めて、楠木正成・足利尊氏の復習という思いもあって読んでみました。

     後醍醐天皇が隠岐から出てからとは言え、1冊にまとめるのは大変だっただろうと思います。後醍醐天皇が理想を追い、正成と尊氏も「利生」という点で一致して、気...続きを読む
  • あるじなしとて
    菅原道真といえば、学問の神様である。と同時に、死後、怨霊となり、自らを追い落とした者たちを祟り殺したという伝説の持ち主でもある。
    そんな伝説が生まれたのは、彼が、おそらく無実の罪を着せられて、大宰府に左遷され、彼の地で衣食住も満足でないまま、不遇の死を遂げたためだ。以後、都では道真の政敵の急死が相次...続きを読む
  • 利生の人 尊氏と正成
    物語の構造として、主従や善悪がわかりやすいものが普通は好まれる。そういう意味では非常に描きづらい時代を敢えて選んで描いていく筆者の技術は卓越している。また、起こったとされた史実を「利生」という一つのテーマで物語にしてしまう着眼点は見事である。混沌の世の中に、人は何故生きるのか?という問いに対する筆者...続きを読む
  • 利生の人 尊氏と正成
    足利尊氏•楠木正成•後醍醐天皇を「利生」をキーワードに史実とは少し異なる捉え方で描いた本。
    話はコンパクトにうまくまとめられていた。ただ、尊氏と正成が心を通わすシーン、大河ドラマでも同じような描かれ方をしており、真田裕之と武田鉄矢の顔が浮かんで本に入り込むことができなかった。