律令国家の中核を成す太政官等二官八省の組織機構や位階制度について、制度史にはこれまであまり興味が持てず断片的な知識しかなかったので、一度きちんと勉強したいとの考えから、本書を手に取った。
日本では、官人個人にまず位階を与え、それに対応する官職に任命させる、官位相当というシステムであったが、律令制の
...続きを読む母国である隋唐とは異なるものであったこと、出土木簡によって明らかになってきた勤務評定の具体像、前代の氏族秩序と官人制との関係、功績や処分によるキャリアへの影響、ポスト不足のため位を持っていても官職にない「散位」の意味合い、位置付け、処遇、官人の地方における実態といった多岐のトピックが取り上げられている。
また、時代の推移に伴い、官位自体も無実化するものがあったり、業務遂行の方法の簡略化や大内裏の官司が縮小するといった実態も述べられている。
一部理解が難しいところはあるが、本書により、律令国家における官人の実相がだいぶ分かるようになった。
ただ、官人の待遇、給与に関して、身分給の食封や位禄、職務給の季禄に関する紹介はされているのだが、それによりどの程度の生活ができるものだったのか、その点についてイメージが持てるような項目が欲しかった。