チョン・ソヨンの作品一覧
「チョン・ソヨン」の「となりのヨンヒさん」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「チョン・ソヨン」の「となりのヨンヒさん」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
Posted by ブクログ
短編作品集なので、一つずつ簡単に感想を書いていく。
第一部
「デザート」
最初はよく分からず、『付き合った男性がデザートに見える』という世界なのかな……と思いながら読み進めると、ラストで実は『全ての人がデザートに見える世界』という事だった。単純に面白いし、お腹が減る。デザートが食べたくなる作品。
「宇宙流」
囲碁の話は半分も判らないし、読んでいてもイマイチ頭には入って来ない。そこから宇宙飛行士を目指す主人公が絡み合う。主人公が事故で宇宙飛行士を諦めた後、どんでん返しで『障がい者を宇宙へ』となるのは、すごいと思えた。囲碁の部分はやっぱりわからないままだったけど、世界が反転するとはこういう事かと思えた。
「アリスとのティータイム」
この話好き――。と思えた。多次元世界の話。フェミニズム文学と言う言葉をこの作品で知った。なにそれ、すごい気になると思ってネットで調べた。物語は特にフェミニズムは関係なく、こちらと少しだけ違う世界の人との交流の話。
「養子縁組」
この辺りから、なんだかがっつりと異世界気分になった。地球に紛れて暮らしている異星人の話。
「馬山沖」
死者に会える海の話にほんのりとした同性愛も相まって、せつない。
「帰宅」
幼いころに別れた家族と会う話。幼すぎて覚えていないでも、他人とも思えない不思議な感覚と何とも言えない奇妙さ。これもせつないけど、それだけではない感覚に襲われる。
「となりのヨンヒさん」
宇宙人が隣に住んでいる話。最初は分からなかった。いや。読み終わっても理解できているのか自信がないが、『言語を越えた交流』というシーンがとても印象的だった。言葉がないから伝わるものがある。それを文字だけの小説で表現できてしまうんだ。と思った。
「最初ではないことを」
死に逝く友を見守る話。他の話と違ってこれはなんだかすごく身近な気がした。死の原因の病はファンタジーなのだけど、死を前にして何かしてやれなかったかと思う気持ちは普遍的な気がする。そして、「誰かにとっての最初の死」にならないようにと願う気持ちも。
「雨上がり」
存在が薄い子の話。存在が薄い理由が『世界が違うから』というのは面白かった。いや。面白いといっていいのか分からないケド。でも、女の子の「注目されたくない」という気持ちはすごく分かる。私もそっちの人だなぁと思った。
「開花」
姉が逮捕された妹の独白。自由に情報を得られない世界の話。ちょっと淡々としすぎていて、読み辛かった。姉が自由に情報を取るために政府に逆らって活動したために逮捕されたというのは読み進めないと分からない。さらに、妹はその『自由』についてよく分かっていない。私はたぶん、戦う姉の方かもしれないなと思いながら、妹にも姉にもなれずただひとり『悶々』する部外者がいいところかもしれない。
「跳躍」
人に触覚が生え、全ての情報がだだ漏れになり、世界が変わっていく話。読み進めていくだけで次はどんな変化が起きるのかワクワクした。
第二部
「引っ越し」
妹の病気を治すために宇宙飛行士の夢が遠ざかった兄の話。兄弟児といわれる病気の子が兄弟にいる健康な子は我慢するというものかな……と思ったら、すごくしっかりと親は何を優先したのかを書かれていて驚いた。
親の前で「僕にとって大切なものは、父さんや母さんには、チエ(妹)ほど大切ではない」と言い切ってしまうのがかっこいい。さらにここに「お前にとって大切なものは何なのか知らないけど、それが何であれ、僕にとっては大切ではないだろうと思う」と続く。ドキドキ。え。この後、喧嘩腰になるの?と読み進めると
『お前にとって大切なものが何なのか分かるなら、それもいいような気がする。僕にとってお前は、それくらいには大切なものだから』
お互いに大切なものを大切には出来ないケド、大切なものの話をしあう事は出来る。それは素敵だなと思える話。
「再会」
人を助けたために大切な試験に落ち、夢を叶えられなかった話。
単純に『助けて良かった』と言う話ではない。助けたけれども、相手が本当に無事だったかどうかは確認ができず長い間、自分は無駄な事をしたのではないかと思い悩む話。最後の最後に「助かっていたよ」と知るのだが、それが二十年後。何が最適だったのかが分からないままというのは苦しい。
「一度の飛行」
正直よく分からなかった。チャンスを不意にした人の話。恐怖は人によって違うのかもしれない。
「秋風」
人の力に頼らず自然のままに作物を育てたいという反乱のお話し。
私もお天気に苦しめられるのは分かると同時に人が全て天気を支配するのは違和感を覚えると思う。そして、『人よりも長く生きてしまう宇宙飛行士』たちの話も絡んでいる。これは対比なのだろうか?と思いながら読んだ。
一瞬にして変わっていく自然の苦悩と、長く変わらない姿の宇宙飛行士の苦悩。
そんな感じの話だった。
どれも、挫折や苦悩が混じっているだけではなくて、同性愛・障がい者・異種族などいろんな要素が混ざっている。読んでいて、気持ちが良かった。
ごちそうさまでした。
Posted by ブクログ
・星新一的SF世界観と小川洋子的な静けさが同居した、読んでいて非常に心地の良い短編集であった。
・架空の舞台を用意することで、現実世界を舞台にしていては表現することができないもの、もしくは表現することが許されないものを描き出すことができるというのがSFの特徴であり、強みである。しかしその特徴ゆえにSF小説は私にとってあまりに強すぎるメッセージ性をはらんでいることがあり、私はSF小説というだけである程度身構えてしまう。しかしこの小説は私の先入観を良い意味で裏切ってくれた。
著者チョン・ソヨンは、誰もが持ちうる、私達を取り囲む世界に対する希望や絶望といったようなものを寄り添う筆致で描いている。SFにしないと描く事ができなかったのではなく、偶然彼女にとってのキャンパスがSFであったということなのであろう。
・各ストーリーの舞台装置は現実離れしたSFそのものであるが、具体的な場面場面は私達の生きる日常から遠く離れることはない描写であり、状況が自然とイメージされるように設計されている。自然と彼女の世界に入り込んでいく事ができるのである。この点もこの小説の魅力の一つであると思う。
・特に「アリスとのティータイム」というタイトルが好きでした。
SFの枠を超えた美しい短編集
宇宙人や未来技術をテーマにしたSFでありながら、新潮クレストで出ていても違和感がないような、美しく静謐な短編集。(逆にハヤカワではなさそう)
SFの説明は極限までミニマルにそぎ落とされ、SF要素に相対した(多くは複雑な過去を持つ)主人公たちの気持ちを推し量らせる形でそのリアリティを醸している。
表題作の「となりのヨンヒさん」はやはり秀逸
凡百の「ハートフルな」異星人交流物とは全然違う、新しい形の絆。最後にヨンヒさんが主人公にかけた「言葉」は、彼女(彼?)の故郷の衛星の美しい火山のように、私の心にも煌きを残していきました
Posted by ブクログ
宇宙流、馬山沖、帰宅、となりのヨンヒさんが特に好き。宇宙とSF、ファンタジーを軸に描かれる短編集。LGBTを扱ったものもあり、密やかで軽やかな甘酸っぱさに微笑んでしまう。かと思えば宇宙飛行士を夢見た主人公が事故で下半身不随になってしまったり、友人が未知の伝染病に罹患してしまう重い話もある。でも表現がとても綺麗だし、一つ一つの話が短編とは思えないほど広がりがあり考えさせられる。すごいものを読んだなと思う。弁護士としても活躍しておられる作家さんとのことで、言葉の奥深さに少し納得した。訳者さんのあとがき"自分の居場所を見つけられないまま一生懸命生きている現代の人たちに向けて作者が送るひそやかな共感のメッセージ"