上原直子の作品一覧
「上原直子」の「ゲノム裁判――ヒト遺伝子は誰のものか」「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで203万冊以上配信中!
「上原直子」の「ゲノム裁判――ヒト遺伝子は誰のものか」「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
ビジネス・実用
Posted by ブクログ
社会神経学者の著者は、人間が「データや論理」ではなく、「感情・欲望・既に持っている信念」によって意思決定や動機付けを行っていることを論証する。
人に影響を与え、行動を促すには、脳の仕組みに逆らうのではなく、脳の認知特性に沿ったアプローチをとるべきだ。そのためには、他者の考えを変えたいときは、「自分が伝えたい事実(何が正しいか)」を出発点にするのではなく、「相手の脳がどのように情報を受け入れ、動かされるか」を出発点にすることが不可欠である
■「先入観」の罠(確証バイアス)
・内容:自分の信念に反する事実を示されると、人はそれを否定するための反論を考え出し、かえって元の意見を強固にしてしまう(ブーメラン効果)
・対策:相手の既存の意見を直接否定して論破しようとするのではなく、双方が合意できる共通のゴール(共通の基盤)を見つけ、そこに新しい視点を結びつける
■「感情」の同期(感情の伝播)
・内容:人の行動を強く動かすのは感情(共感)。話者の感情は他者の脳へと同期し、伝播する
・対策:事実の羅列(数字やデータ)で説得するのではなく、感情に訴えかけるストーリーやビジュアルを活用する
■「報酬」と「恐怖」の使い分け
・内容:「~すると良いことがある(報酬)」はすぐの行動を促し、「~しないと危険だ(恐怖/脅迫)」は行動のフリーズ(停止・警戒)を引き起こす
・対策:人に行動を起こさせたい時は、恐怖で脅す(「タバコを吸うとがんになる」)のではなく、前向きなインセンティブや即時の報酬(「禁煙すると肌や健康にすぐ良い影響が出る」)を提示する
■「主体性(コントロール感)」の保障
・内容:人は誰かにコントロールされたり命令されたりすると強い抵抗感を抱き、自分の選択肢を守ろうとする
・対策:一方的な命令ではなく、相手に「選択肢」を与えて自ら選ばせることで、主体性と納得感を持たせる
■「好奇心」の喚起
・内容:人は「自分には知らされていない情報がある(情報ギャップ)」と感じると、それを埋めたいという強い欲求(好奇心)を抱く
・対策:知識を押し付けるのではなく、問いを投げかけて相手の中に「知りたい」という空白を作る
■「状態(ストレスと安全感)」の影響
・内容:人は高ストレス下では脅威に対し敏感になり、過度に保守的になる。安心・安全を感じている時ほど、新しい情報や変化を受け入れやすくなる
・対策:重要な提案や交渉を行う際は、まず相手に安心感とリラックスできる環境を与える
■「社会的学習(他者の存在)」の力
・内容:人は他人の行動や選択に強く影響を受ける(社会的証明)。特に他者が「自分と似ている」と感じる場合にその影響は大きくなる
・対策:「多くの人が正しく行っている」という周囲の肯定的な行動(ソーシャル・プルーフ)を示すことで、自然な行動変化を促す
*********************************
8
多くの人が「こうすれば他人の考えや行動を変えることができる」と信じている方法が、実は間違っていた
20
データが人の意見を変える役に立つとは限らない
21
人間がどんなにデータ好きであろうと、脳がそのデータを評価して判断を下すときに用いている価値基準は、私たちの多くが脳はこれを使っているに違いないと信じている価値基準とまったく別物だ。情報や論理を優先したアプローチは、意欲、恐怖、希望、欲望など、私たち日本減の中核にあるものを蔑ろにしている。
23
自分がもっていた世界観に合う情報を得たときだけ、人々は意見を変えた。
24
新しいデータを提供すると、相手は自分の先入観(「事前の信念」と呼ばれる)を裏づける証拠なら即座に受入、反対の証拠は冷ややかな目で評価する。私たちはしょっちゅう相反する情報にさらされているため、この傾向は両極化の状況を生み出し、それは時を経て情報が増えるたびに広がっていく。
実のところ、自分の意見を否定するような情報を提供されると、私たちはまったく新しい反論を思いつき、さらに頑なになることもある。これを「ブーメラン効果」という。
27
矛盾しているようだが、豊富な情報が得られるようになると、人は自分の意見にもっと固執するようになる。なぜなら、自分の考えを裏づけるデータを簡単に見つけ出せるからだ。(……)だがこれは問題の半分にすぎない――もう半分は、水面下で情報の「いいとこ取り」が行われていることに、私たちが気づかないでいる点だ。
30
自分の意見を裏づけるデータばかり求めてしまう傾向は、「確証バイアス」と呼ばれている。
37
人間は社会的影響を非常に受けやすい。私たちはほぼ無意識のうちに流行を追い、他人をまねる(……)その一方で、いったん決断したり意志を固めたりすると、違う考え方を取り入れるのは難しい。事前の決断や信念の前では、社会的影響も役に立たないのかもしれない
39
ある信念や活動にすでに傾倒している場合、それが間違いだと示す証拠は無視されがちである
44
変化をうまく導くには、ゆえに共通の動機を見出せばいい。(……)次に必要なのはメッセージが伝わるよう感情に働きかけることだ。
49
力強い演説は人々の関心をとらえただけではなく(……)、各個人の性格や過去の経験を問わず、似通った反応を導き出した。(……)演説が引き起こした広範囲の神経活動をMRIで調べると、まったく違う二人の脳がそっくりに機能しているのがわかる
51
すべての脳は感情を誘発する刺激に対して概ね同じような反応をするよう、前もってプログラムされているのだ。
52
感情は、無意識のうちに全員の注意を同じ方向に向けさせ、似たような心理状態をもたらしながら、脳の同期を助長する。このようにして、人々は似通った行動や世界観に駆り立てられるのだ。
59
感情の伝達はどのような仕組みになっているのだろう?(……)そこには主に二つの経路がある。一つ目は無意識の模倣によるものだ。(……)二つ目の経路は、模倣ではなく単に感情が刺激されたことに対する反応である。
67
アイデアを伝える最も効果的な方法の一つは、気持ちを共有することだ。
74
・行動を導くことに関して言えば、即時の報酬は、将来の罰よりも有効なことが多い。
76
私たちは自分のプラスになると信じる人間、もの、出来事に接近し、マイナスになると信じる人間、もの、出来事を回避する。(……)人間は快楽へ向かって進み、苦痛から遠ざかるのだ。
79
報酬を予測すると、人間の脳は接近を促すのみならず、行動を起こしやすくなるよう設計されている。反対に、喪失への不安は、何もしない状態を引き起こすことが多い。
81
人間の脳が「前向きな」行為を、「避けるべき害」ではなく「ご褒美」と結びつけているのは、それが最も有用な反応であることが多いからだ。(……)何か素敵なものが得られそうな可能性に直面したとき、私たちの脳は一連の生物学的事象を引き起こし、それによって素早い行動が促進される。これは脳の「ゴー反応」と呼ばれ、脳深部の中脳から送られたゴー信号が、脳のほぼ中央にある線条体へと伝わり、最終的には行動反応をコントロールする前頭葉の領域へ到達する。
一方、何か悪いことを予測したとき、私たちは直感的にあとずさりする。脳が「ノー・ゴー反応」を引き起こすからだ。ノー・ゴー反応も、中脳の深部から線条体へと伝わり、前頭葉へ送られる。ゴー信号と違うのは、ノー・ゴー信号が反応を抑止する点である。その結果、人は悪いことよりも良いことを予測したときの方が、行動を起こす可能性が高くなる
86
ご褒美を約束するよりも、報いを受けるかもしれないと警告する方が有効だということだ。事実、差し迫った脅威は私たちを凍りつかせる。
96
人間の脳は悲惨な状態をイメージし、不吉な予感を共有しようとする。でもこれは間違ったやり方なのかもしれない。私たちは意識して本能に打ち勝ち、事態を好転させるために必要なことを強調すべきなのだ。
105
「コントロールすること」と「影響を与えること」は密接に関連している。誰かの信念唖行動に変化を与えるとき、あなたはある程度その人をコントロールしている。逆に影響を及ぼされるとき、あなたは相手のコントロールを許している。だから「人間」と「コントロール」の繊細な関係を理解することは、「影響力」を理解するための基礎となる。
108
他人の行動を変えたければ、コントロール感を与えるべきだ。主体性を奪われたら、人は怒り、失望し、抵抗するだろう。社会に影響を与えることができるという感覚が、意欲や順守率を高めるのだ。(……)選択肢を与えられたら、たとえそれが仮定の話でも、コントロール感は増大し、それによって人々の意欲は高まるのだ。
110
複雑で骨の折れる問題に遭遇したら、決断を望まないこともある。たとえば、選択肢を与えすぎると、人は圧倒されて何も選べなくなる。
117
人は決断を押しつけられるよりも、それを他人に委ねることを選ぶ権限をもちたいと望んでいる。
121
公私それぞれにおいて人々の生活を向上させるためには、コントロール感の増大を図るのが効率の良い方法なのだ。
125
人々に責任や選択肢を与えるだけでは十分ではないかもしれない(……)。つまり、その人が自分でコントロールしているということを、折に触れて思い出させてあげなくてはならない。(……)他人に何かを重視させたいときは、自分が関与したと感じさせることが必要なのだ。
132
相手がどうしたら聞きたい気持ちになるかを考え直し、それに応じてメッセージを再構成することが必要
136
知らないことを指摘されたら、知りたくなる
140-1
情報が気持ちに影響を及ぼすことや、情報を利用して感情の調整ができることを、身をもって知っている。結果として人は選択的になり、心地よい信念を形成してくれる情報で心を満たし、不快な考えをもたらす情報を避けようとする。
149
他のすべての条件が同じなら、人は気分を害するネガティブな知らせを無視し、気分を良くするポジティブな知らせを求める傾向にある
153
その情報が相手の知識のギャップを満たせそうなら、そのギャップを強調すればいい。また、相手の世界をより良くするのに役立ちそうなら、その方法をわかりやすく示せばいい。そして最終的には、あなたの発した情報が恐怖ではなく希望を導き出すよう、メッセージを再構成することだ。
156
ただし一つ重要なことがある。私たちは、目の前にいる人の心の状態を考慮しなくてはならない。なぜなら(……)ストレスと脅威にさらされている場合、脳が情報を処理するやり方は劇的に変わってくるからだ。
161
ストレスが忍び寄ってくるのを感じるたび、(……)考え方、決断の仕方、ふるまい方が一瞬のうちに変わってしまうほか、周囲からの影響の受け方まで変わってくる
163
ストレス下ではリラックスしているときよりもずっと、ネガティブな情報(……)を取り入れる傾向が強い
165
ストレスを受けると、私たちは危険感知に固執するようになり、うまくいかない可能性に目を向ける。それによって極度に悲観的な見解が生まれ、結果として過度に保守的になってしまう。
170
いったん脅威を感じると人は否定的な面に着目するようになり、起こり得る問題ばかり考える傾向がある。その結果、リスクを冒すことのほうが実際は優れたアプローチである場合でさえ、無難な行動をとる決断を下してしまう
174
私たちは自分の心の状態を意識的に変えて、本能的なパターンを打開することができる。
188
自分は人とは違うと考えたいのに、すぐに周囲の人々の意見や好みを取り入れてしまう
189
望ましい行動を示すだけで、周囲の人々にポジティブな影響を与えることができる
192
他者の選択を認識すると、ものの価値を伝えるのに重要な脳の領域では、選択されたオプションの有用性が自動的に記憶に取り込まれる。そして、いざ自分が選択するときになると、価値を伝える信号を無意識に呼び出して、それを利用して決断する
199
扁桃体が他人の意見に強力な反応を示すと、生物学的反応が引き起こされて、前頭葉がのちに誤った思い込みを正すことができなくなる
201
周囲はあなたが選択したものだけでなく、選択の末にあなたが経験した結果を観察しているのだ。だからこそ、良い行いには報酬を、悪い行いには罰を与える行為が、広範囲にわたって浸透している
207
集団の中にあっても、たった一つの異なる意見が存在すれば、他人に自主的な行動を取らせることができる
228
多数意見に依存しすぎると、最適ではない選択、おかしな信念、好機の逸失につながっていく。(……)それでも多数派にしたがってしまうのが、人間の本能だ。このとき意思決定に使われるのが「ヒューリスティック」という方法で、洲早s区単純でちょかん的なこの方法は「思考の近道」とも呼ばれる。
239
欲望、意志、恐れは、現代を生きる私たちをも方向づけているし、他人の心に影響を与えるときの生物学的な基本原理は、いまでも色濃く残っている。
247
相手の行動を変えるには、その人の神経細胞の発火パターンを変化させる必要がある
249
脳は心を作り出しているから、脳に変化が起これば心にも変化が生じるだろう。
249
すべての思考は、本質的には脳内における電気的・科学的信号である。それらの信号を記録し、伝達し、解析することが可能ならば、その技術を用いて他人の思考に影響を及ぼすことも、原理としては可能と言えるのではないか
Posted by ブクログ
説得の鍵は「共感」。勉強のために再読したい
The Influential Mind が原題。直訳すると「影響される心」。読後、しっくり来る題だと思った。邦題の「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」は意訳にしても手ぬるく感じる。ちょっと古くないか。それはさておき、本の内容は非常に面白い。人間は自分で思っている以上に共感を重視して生きている。目の前に数字や事実を突きつけられても、案外と心を動かさない。脳がそういう構造になっている。人を説得するのは共感が鍵である。「皮肉な話だが、人間はより正確な結論を導き出すためではなく、都合の悪いデータに誤りを見つけるために知性を使っているのではないだろうか。だからこそ、誰かと議論するときに、相手に不利で自分に有利な事実や数字を突き付けたくなる衝動は、最適なアプローチではないかもしれない」 こう指摘するくだりには、肯かずにはいられなかった。議論が建設的な方向に向かわず反論のための反論が繰り返されるのは、まさに人間らしい行為の表れなのだな。我が身を振り返る。子供が妻に叱られている。でも、もう大きいので、聞いてもいない。ははあ妻に対して共感していないのだなと思う。妻はブチ切れている。想像する。私が妻にこう言ってみるところを。「あんた、人間は共感が大事なんだよ。ただ叱るんじゃなくて、この本を読んでみたら」と。でも、こんどは妻がこちらの言うことを聞かないだろう。言葉が耳に入ったとしても、従うことはない。日頃から共感してくれていないのは、まさに私に対する妻の姿勢である。かくして、反省するのは私だと気づかされる。本書を再読して勉強を深めたい。