農学部生たるもの、中尾佐助大先生の著作ぐらいは読んどかなきゃ、ということで大学3回生のときに読みました。
イネ、ムギ、マメ、イモ、その他雑穀、茶などの私たちの食生活に欠かせない栽培植物について、現地調査や遺伝学的な解析から民俗学、文化的な考察を交えながらその起源を追求した傑作。
中学や高校の地
...続きを読む図帳に載っている、根菜農耕文化(南アジア熱帯;イモ、バナナ)、サバンナ農耕文化(アフリカ・北部インド;雑穀、ゴマ、マメ)、地中海農耕文化(トルコ東部;ムギ、えんどう豆等)、新大陸農耕文化(メキシコ;トウモロコシ、カボチャ、ジャガイモ)という4つの独立した起源から農耕が伝わっていく中で形成されたそれぞれの文化(農耕文化複合)があるという説を初めて説いた本です。
そして、根菜、サバンナ、地中海の3つの農耕文化複合とイネ(稲作)や茶といったアジア特有の作物と風土がフレンドされて「照葉樹林文化」(東アジア;イネ、茶、桑(絹))が形成されていると説明しています。
単に農耕の起源を追うのではなく、栽培作物を栽培したり利用する中で衣食住の文化的な面にも多く触れられてるのでいろんな視点から楽しめます。生物学的な部分は、出版されてから技術が進歩しているので専門的な方には不満かもしれません。また、生物学に疎い人でも、その部分を読み飛ばせば十分読めます。
意外にも栄養バランスがいいのはサバンナ農耕文化だったり、日本などの照葉樹林文化に人々はイネが伝わるまでは山岳民族だったなどが面白い発見でした。