作品一覧

  • 内調 ――内閣情報機構に見る日本型インテリジェンス
    4.3
    1巻1,430円 (税込)
    日本の内閣情報機構は公的情報が少なく、内部証言も断片的だったため、これまで実態が未解明だった。本書は一九三六年に情報委員会が設置される前夜から、動揺する国際秩序への対応を迫られた一九七二年頃までの実態を、この間の情報機関に深く関わった三人のキーパーソン、横溝光暉、吉原公一郎、志垣民郎が残した資料と証言をもとに描く。政府寄りの世論形成に取り組み、時には他省庁の取り組みにくい政策課題に自らの存在価値を見いだした内閣情報機構の実像に初めて迫る。
  • 内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男
    3.9
    1巻1,223円 (税込)
    内閣調査室は本当に謀略機関だったのか……謎のヴェールを剥がす第一級の歴史史料! 松本清張は、昭和36年に「文藝春秋」に連載した『深層海流』で、「内調の役目がその辺を逸脱して謀略性を帯びていたとなれば、見逃すわけにはいかない」と書いた。あれから60年たっても、内調については関連する公文書も公開されなければ、組織の正史も作られておらず、依然としてその実態は謎のままだ。 本書は、昭和27年に吉田茂首相が、旧内務官僚の村井順に命じて内閣調査室が発足したときの、4人のメンバーの1人、志垣民郎氏の手記である。この手記のポイントは、内調は日本を親米反共国家にするための謀略機関だったのか、という問いに明解に答えているところにある。 志垣氏の主な仕事とは、優秀な学者・研究者に委託費を渡して、レポートを書かせ、それを政策に反映させることだった。これは、結果的に彼らを現実主義者にし、空想的な左翼陣営に行くのを食い止めた。そして本書には、接触した学者・研究者全員の名前と渡した委託費、研究させた内容、さらには会合を開いた日時、場所、食べたもの、会合の後に出かけたバーやクラブの名前……すべてが明記されている。まさに驚きの手記だ。 100人を超えるリストの面々は豪華の一言に尽きる。時代を牽引した学者はすべて志垣氏の手の内にあった。とくに重要なのが藤原弘達。「時事放談」で知られる政治学者は、東大法学部で丸山真男ゼミに所属した俊才であった。「彼が左翼に行ったら、厄介なことになる」。そこで志垣氏は、彼を保守陣営に引っ張り込むために、あらゆる手立てを尽くす。戦後思想史を塗り替える爆弾的史料である。

ユーザーレビュー

  • 内調 ――内閣情報機構に見る日本型インテリジェンス

    Posted by ブクログ

    新書509ページ!しかしまったく冗長にはならず濃密な読書でした。たまたま内閣情報機関の歴史についての問題意識を持った著者が2020年に亡くなった元内閣調査室主幹、志垣民郎が自宅に残した資料の整理の手伝いをしたことで生まれた戦前と戦後の日本のインテリジェンス組織の連続性を指摘するに至るドキュメンタリーでもあります。いわば戦前の内閣情報機関の設計者である横溝光暉、戦後「内閣調査室を調査する」という雑誌論文などでその組織を批判したジャーナリスト吉野公一郎、吉田茂が1952年に内閣総理大臣官房調査室を新設してから一貫関わってきた志垣民郎、この3つの視点からの「アナザーストーリー」です。労作であり力作で

    0
    2025年08月08日
  • 内調 ――内閣情報機構に見る日本型インテリジェンス

    Posted by ブクログ

    戦前から戦後にかけての日本の内閣情報機構の歴史をまとめた本。戦後、吉田茂と緒方竹虎を中心に日本の情報機関を作ったといわれるが、著者は戦前の情報委員会から戦後の内閣情報機構にかけての歴史を見ると、広田内閣が日本の行政史上初めて内閣情報機構を設けた政権だという。内閣に直属の情報委員会を設置するきっかけとしては満州事変であった。

    0
    2025年06月21日
  • 内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男

    Posted by ブクログ

    日本版CIAを標榜して作られた内閣調査室。本書内にも「日本版CIAと買いかぶるひともいるが」ということで、実態は情報局といえるほどのものでもない。ちなみに本書の舞台は主に戦後から70年代くらいまでである。

    反共産、核問題、学生運動などに対する情報工作、といえば大言壮語にも聞こえるし、陰謀論的な考えが想起させられるひともいるかもしれない。(実際、本書に絡んだネット上の言葉にはそのようなものも少なからずあった)
    しかし、いざ細かく読んでみると、どこまでそれが成功していたかは甚だ怪しい。委託費といっても、受け取らない者も多かったようで、堤清二に至っては「委託費は必要なかった」と書いてある。そりゃそ

    0
    2024年02月20日
  • 内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男

    Posted by ブクログ

    情報提供者の志垣さんに感動した本。
    大きな仕事に関わった人は、後世に残そうとする人と隠そうとする人がいるのかなと思っていたが、この本で残していただいた記録は、非常に貴重だと感じます。

    行ってきた事の是非は分かりませんが、記録を取り残し続けた志垣さんの実直さはとても素晴らしいと思いました。

    0
    2021年09月13日
  • 内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男

    Posted by ブクログ

    CIRO(内閣情報調査室)創生期メンバーであり、後に内調内で学者や知識人への工作を主導する立場となった志垣民郎氏の日記を基に、岸俊光が編著した作品。行動記録や会合記録をそのまま載せることに賛否はあろうが初期内調を知る超一級資料だ。内容も生々しい。

    世論操作というと高度インテリジェンスっぽいが内調の工作活動は資金援助したり接待漬けにしたり地道に人間関係を築いて時の政権が望む方向に大勢を向ける泥臭い活動だ。藤原弘達氏とのエピソードなんかは一筋縄ではいかない学者と、相互に影響を受けつ与えつつの関係性が興味深い。

    「国民は政府に操られている!」と声高に叫ぶ人もいるが、志垣氏がやった『学者先生戦前戦

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    2021年01月31日

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