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内閣調査室は本当に謀略機関だったのか……謎のヴェールを剥がす第一級の歴史史料!
松本清張は、昭和36年に「文藝春秋」に連載した『深層海流』で、「内調の役目がその辺を逸脱して謀略性を帯びていたとなれば、見逃すわけにはいかない」と書いた。あれから60年たっても、内調については関連する公文書も公開されなければ、組織の正史も作られておらず、依然としてその実態は謎のままだ。
本書は、昭和27年に吉田茂首相が、旧内務官僚の村井順に命じて内閣調査室が発足したときの、4人のメンバーの1人、志垣民郎氏の手記である。この手記のポイントは、内調は日本を親米反共国家にするための謀略機関だったのか、という問いに明解に答えているところにある。
志垣氏の主な仕事とは、優秀な学者・研究者に委託費を渡して、レポートを書かせ、それを政策に反映させることだった。これは、結果的に彼らを現実主義者にし、空想的な左翼陣営に行くのを食い止めた。そして本書には、接触した学者・研究者全員の名前と渡した委託費、研究させた内容、さらには会合を開いた日時、場所、食べたもの、会合の後に出かけたバーやクラブの名前……すべてが明記されている。まさに驚きの手記だ。
100人を超えるリストの面々は豪華の一言に尽きる。時代を牽引した学者はすべて志垣氏の手の内にあった。とくに重要なのが藤原弘達。「時事放談」で知られる政治学者は、東大法学部で丸山真男ゼミに所属した俊才であった。「彼が左翼に行ったら、厄介なことになる」。そこで志垣氏は、彼を保守陣営に引っ張り込むために、あらゆる手立てを尽くす。戦後思想史を塗り替える爆弾的史料である。
Posted by ブクログ 2024年02月20日
日本版CIAを標榜して作られた内閣調査室。本書内にも「日本版CIAと買いかぶるひともいるが」ということで、実態は情報局といえるほどのものでもない。ちなみに本書の舞台は主に戦後から70年代くらいまでである。
反共産、核問題、学生運動などに対する情報工作、といえば大言壮語にも聞こえるし、陰謀論的な考え...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年01月31日
CIRO(内閣情報調査室)創生期メンバーであり、後に内調内で学者や知識人への工作を主導する立場となった志垣民郎氏の日記を基に、岸俊光が編著した作品。行動記録や会合記録をそのまま載せることに賛否はあろうが初期内調を知る超一級資料だ。内容も生々しい。
世論操作というと高度インテリジェンスっぽいが内調の...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年10月10日
作家の佐藤優氏が雑誌の連載で取り上げていたので、興味を持って手に取った。
「独立するからには、日本にもCIA(米中央情報局)のような情報機関が是非必要である」とのことで、第二次世界大戦後、「内閣総理大臣官房調査室」は発足。
著者は日記をもとに、その当時の記録をひもといていく。
テレビ番組「時事...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年01月17日
日本にもあるインテリジェンス機関の内閣調査室。謎に包まれた機関、創設メンバーが明かすその実態。
インテリジェンス部門が他国に比べ弱いと言われる日本。昭和27年に創設。メンバーの一人のにっきと手記、隠れた実態を明らかにする。
新書としてはやや厚い頁数。ただし日記のそのままの引用が非常に多く、貴重な...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年04月27日
内閣調査室(現在の内閣情報調査室)の秘密裡を著者が公開したもの。吉田茂と深い仲であった村井順が創設した組織で、進歩的文化人や日教組に対抗するために作られた。本書を読むと、内閣調査室のメンバーがCIAと関わりを持っていたことや政策の研究に委託された人物が載っており、著名人が複数名関わっていたことが判...続きを読む
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