森下弓子の作品一覧
「森下弓子」の「フランケンシュタイン」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
「森下弓子」の「フランケンシュタイン」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
ヴィクターの人間らしい憎しみ、憎悪こそがホラー。
ヴィクターの亡霊(ドッペルゲンガー)「怪物」の孤独からくる憎しみ、苦しみとの対比が読者をぞっとさせる。なぜか?
この物語の怖さの本質は「怪物」の見た目の恐ろしさでもなければ、主人公の愛する肉身の数々の非業の死でもない。自分が生み出した生命に対する人間らしいエモーショナルな感情の熱情が怖いのである。明らかに自分に帰ってくる許すべき存在である「怪物」に復讐することに取り憑かれた「哀れな」マッドサイエンティスト、それがフランケンシュタインであり、人間とはそうでしかあり得ない臨場感に恐怖する。
「怪物」の視点でこの原作を読むと、その眼差しの奥にアニミズムが宿っていることにも驚いた。そう、「怪物」は常に森に逃げ込み、闇夜から現れる。鳥の囀りや自然の蠢きに癒され、なんと「怪物」自身が「どこから来てどこへ行くのか」と、あのゴーギャンの絵画のタイトルを口にするのだ。そう、人間に造り出された「人造人間」も、孤独に苛まれて人類全てを憎むその感情も理不尽も全て、コントロールできない混沌の外から「やってきた」アニミズム=存在論そのものなのだ。ヴィクターは最後までそのことに気付けなかった物語とも言える。ヴィクター自身の絶望と恐怖と憤怒の感情も同じく混沌からやってきた何かだと。
「スパイラル 推理の絆」が描くものは「フランケンシュタイン」のアニミズムの本質に気付いた「怪物」が自らの寿命も絶望も受け入れ、世界を祝福する物語だ。「フランケンシュタイン」を題材にした物語の中で最も希望に満ちたドラマだが、やはりポイントは結崎ひよのだ。
もしかしたらひよのは、「フランケンシュタイン」では作られなかった「フランケンシュタインの花嫁」だったのかもしれない。そしてひよのというキャラクターは作られた偽物に過ぎないところも素晴らしく、ただ創造主によって造り出された「怪物」にとって都合の良い伴侶役としてのキャラクターをメタ的に破壊してしまう。ある意味「フランケンシュタイン」よりもイジガワルイ。
創造主たる鳴海清隆は自身のクローンである歩に問う
「その底なしの混沌と暗闇でお前を今支えているのは何だ?」
それは偶然(!)歩はひよの(を演じる誰か)を信じる(コーリング)ことができたからだ。そしてひよの(を演じる誰か)は密かに涙でそれに応える(レスポンス)。二人は(そしてブレードチルドレン達は)世界を救うエートスを共有し、別々の道を歩む(responsibility)。
二人の出会いと絆こそが、世界の祝福だ。原作「フランケンシュタイン」はそれに気付けなかった男の末路を描くことで逆説的に世界の祝福の存在を浮かび上がらせる。
Posted by ブクログ
「タイトルは有名だけど中身知らないよね」
となる典型的な作品の一つ。
長らく積ん読状態だったけど、
とあるブログのレビューが興味深かったのでこの度呼んでみた次第。
語り手が交代しながらモノローグを行うように展開されていて、
解説よろしくこれが後生の『嵐が丘』等へ派生していくというのは個人的に胸がアツくなる部分ではある。
フランケンシュタインと聞くと一般的には怪物をイメージしがちだけれども、
怪物には固有名詞はなくフランケンシュタインとは怪物を生み出した天才科学者(ヴィクター・フランケンシュタイン、主人公)の姓である。
物語の原題は正式には『フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス』。
プロメテウスとはギリシャ神話に登場する神の一人。
寒さに凍える人間を想い火を与えることでその生活を助けようとしたが、
火を与えられた人間がそれを争いに用いたことにより刑に処せられる。
ヴィクターば人間を作ったこどにより、
怪物ば言葉を理解してしまったこどにより、
自らが抱える愛を遥かに超越した絶望の淵に置かれ身を滅ぼす。
-現代のプロメテウス-はその隠喩にあたる。
人間と怪物を比較することで人間の定義について問いを投げ掛けていて、
そのような意味ではSFの先駆的な作品としても位置付けられているようである。
…というように何の気なしに呼んではみたものの
幅広いジャンルに影響を与えたようだ。
圧巻なのはやはり終盤。
ヴィクターが息を引き取ったのを観た怪物がウォルトンに自らが抱える想いを吐露する場面。
目を合わせられなかったとはいえ、
怪物がまともに会話したのはヴィクター以外ではウォルトンが初めてであり、
それゆえに怪物がとても人間らしく見える。
別の機会に是非映画も観てみたい。