ケンミンショーやポツンと一軒家など人気テレビ番組で地方の良さをアピールしているが、本書を読むと地域コミュニティの衰退がよく分かる。
中でも面白かったのは、土木業と介護労働者の話。自治体が公共事業を土木業者へ発注する際には、事業者を資本規模に合わせてランク付けする。同じく、案件もランク付けされており、
...続きを読む事業者は自社のランクに合った案件しか受注できない。例えば、海峡大橋の建設はランクAの業者しか受注出来ないが、河川の堤防工事はランクCの業者しか受注出来ない。このランク付けにより、地元業者の受注機会が保証され、ひいては地元経済の活性化と雇用創出に寄与してきた。しかし、高齢化が加速化する中では自治体の予算は公共事業から民生費へシフトしており、地元の土木業も立ち行かなくなっている。土木業以外の基盤産業が無ければ、労働者は雇用機会を求めて地域外へ行くため、地域経済はますます弱体化する。
一方で、高齢化により介護・福祉関係の有効求人倍率は増加傾向にある。つまり、今の日本の地域は、基盤産業が無く働き手がますます減少すると同時に、高齢化に対応するため介護労働者の需要は増大している。もちろん、高齢者の介護は重要ではあるが、介護は基盤産業にはなり得ず、地域の弱体化を食い止めることが出来ない。
地域における産業創出の重要性について、上記の様な背景も踏まえて理解でき、非常に興味深い本だった。