塩谷歩波の作品一覧
「塩谷歩波」の「塩谷歩波作品集」「お茶の先生が伝える 季節をめぐる暮らしのたのしみ帖」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
銭湯は日本人にとって身近な存在でありながら、その歴史や文化について詳しく知る機会は意外と少ない。銭湯は高度経済成長期には全国に1万8000軒以上あったとされるが、家庭風呂の普及などによって現在では大きく数を減らしている。それでも近年はサウナブームやレトロブームを背景に再び注目を集めており、若い世代が銭湯を訪れる姿も珍しくなくなった。私自身も銭湯好きで、休みの日や出張先の仕事終に銭湯れ足を運んでいるが、のんびりとお湯につかりながら湯気が立ち上る天井を見上げるのが大好きだ。
塩谷歩波さんが書かれた「銭湯図解」は、そんな銭湯の魅力を存分に味わえる一冊であり、塩屋さんが全国各地の銭湯を訪ね歩き、その構造や特徴、歴史をイラストと文章で丁寧に紹介した一冊だ。
そもそも銭湯という言葉は、入浴料金である「銭」を払って利用する湯屋を意味する。江戸時代には庶民の重要な交流の場として機能しており、現在の銭湯に通じる文化がすでに形成されていた。富士山のペンキ絵や高い天井、煙突といった特徴的な設備も、日本独自の銭湯文化が育んだものなのである。
本書の魅力は、何と言ってもタイトルにもなっている「図解」にある。浴場や脱衣所の構造が細やかなイラストで描かれており、建物の特徴やこだわりが一目で理解できる。普段何気なく見過ごしていた部分にも発見があり、「なるほど、銭湯にはこんな意味や工夫があったのか」と何度もページを戻しながら読んでしまった。また、本書を語るうえで欠かせないのが、著者の塩谷歩波さんの存在だ。塩谷さんは1990年生まれのイラストレーター。もともとは建築設計事務所に勤務していた経験を持ち、その後、体調を崩したことがきっかけで銭湯に通い始め、銭湯の魅力に惹かれてイラストを描くようになったという。建築を学んだ経験と観察力があるからこそ、本書に掲載されている図解は単なるスケッチではなく、建物としての銭湯の面白さまで伝えてくれるのだろう。本書を読んでいると、著者の銭湯に対する愛情がページの随所から伝わってくる。
設備の説明や歴史の紹介に終始するのではなく、その銭湯を訪れた際の驚きや感動が素直な言葉で綴られており、読者も一緒に湯巡りをしているような気分になる。図解も細部まで描き込まれているが、決して専門書のような堅苦しさはなく、親しい友人から「この銭湯が面白かったよ」と紹介されているような読みやすさがある。
私自身、これまでは浴槽の大きさや湯の熱さくらいしか気にしていなかったが、天井を高く見せる工夫や浴場全体のレイアウト、煙突の存在理由など、さまざまな視点から銭湯を眺める楽しさを教えてもらった。また、銭湯での過ごし方についても著者なりの想いがあり、例えば熱いお湯に浸かったあとに冷水風呂に入ることによる気持ち良さを語るだけではなく、冷水から出たらしばらくそのまま座り、血管が徐々に膨張する際の心地よさなど、銭湯が好きな著者だからこそのおすすめも書かれている。
銭湯はお湯に浸かるための施設であると同時に、地域の歴史や人々の暮らしを映し出す文化遺産でもある。本書はその魅力を難しい専門用語ではなく、親しみやすいイラストと文章で伝えてくれるので、読み終えた頃には著者がなぜここまで銭湯に魅了されたのか、その理由を少し理解できたような気持ちになった。次の休日には、タオルを片手に近所の銭湯を訪ねてみたくなる一冊だ。
Posted by ブクログ
「銭湯図解」の著者が図解を中心に2017~2024年までに
描いた136作品を納めた初の作品集。
・はじめに
1 銭湯図解 2 建築図解 ・インタビュー
3 建築ノート 4 空想の建物 ・図解メイキング
まず全体のディテールを眺め、それからルーペを片手に
細部を愉しむ。何枚か拡大があるのがありがたい。
日本の居心地の良い雰囲気が漂う銭湯と元・銭湯。
フィンランドのサウナと日本のサウナ。
勤務していた小杉湯は、思い出を込めてか詳細に。
建築図解は、パン屋、喫茶店、ワーキングスペース、
レストラン、茶室、シアターなど。
水族館図解や高円寺図解もあるし、本になった純喫茶図解も。
インタビューは著者の人柄が現れているし、
何より図解メイキングの制作の様子がすごい。
空想の図解は、三ツ矢の湯がステキ。
隅々まで眺めるのが楽しい魅力溢れる作品集でした。
Posted by ブクログ
『銭湯図解』の著者による喫茶店18軒の魅力満載の図解。
・はじめに
第1章 ノスタルジックな純喫茶
第2章 豪華絢爛な純喫茶
第3章 音を楽しむ純喫茶
第4章 ひとクセ光る純喫茶
Column1~4
・おわりに
行ったことのある店がある。
古書店街で疲れた足の癒しの場所。
行ってみたい店がある。
入りにくいイメージを消す図解が誘ってくれる場所。
描いて欲しかった店がある。
かつて足しげく通った思い出は
今でも心の片隅にある場所だから。
アイソメトリックという建築図法で描いた純喫茶の
個性的な店内の様子が詳細で、更に、描き込まれた人たちの
姿が生き生きとしています。その雰囲気が温かい。
そして、店主から得た店の成り立ちや拘りが文や写真、
絵にこめられていて、これらの純喫茶でお勧めのメニューを
味わいながら過ごしたくなってしまいます。
楽しい図解シリーズの続編、お願いします。
Posted by ブクログ
有名な喫茶店を図解した本。作者の方が建築学部を出て建築関係のお仕事をされていたからこそ、上から見た喫茶店を覗き見ることが出来る。細かい、とにかく細かく丁寧にお店の図解が描かれている。ここが入口か、この棚にはこんなものが飾られているのか、ここがこだわりなんだなとじっくり見ていると本の中に迷い込むよう。お茶をしている人たちも丁寧に描かれていて架空の人や、店主から話を聞いた特徴的な人や作者本人などがこれまた細かく描いてあって、ウォーリーを探せみたい。
こんなに丁寧な本がたったの1500円、感謝しかない。上から描くなんて間取りとか家具の大きさとかバランスが難しく普通の人なら出来ないけど、建築学科の方だから出来るんだろうな。それでも本当に大変な作業だったと思う。ありがたい。大切に何度も読もうと思う。
喫茶店の歴史やエピソードも丁寧にまとめられていて、読み応えがあるし、より身近に感じることができる。写真もあるので絵のイメージを実際に確認できたりするのも良い。訪れたことのある喫茶店も何軒かあり、またこの本を持って訪れたくなる。重厚な扉の向こうがどんなものか想像できずに躊躇してしまいそうな名店も、この本のおかげで思い切って扉を開くことができると思う。素晴らしい本だった。
Posted by ブクログ
『銭湯図解』の著者による図解第二弾のテーマは都内の純喫茶。
前作に続いて、アイソメトリックという建築図法で描かれています。斜め上方からの離れた視点で、天井を透過して建物の内部がこと細かに描かれているわけです。そこには架空のお客さん、著者の身近な人、実際にいるお客さんなどの人物がやわらかく水彩で描きこまれもしていて、絵のタッチといい、とてもやさしくて落ち着くような、安らげる空間として感じられるのでした。
図(絵)という形で純喫茶店に触れているのに、空疎さがなくて豊かな気分になれるんですよね。親しみが持ててしまう。
この図解のなかに、どんな音がしていてどんな匂いがしているか。それが知りたくなります。渇望するみたいにつよく。もしもなんらかの魔法によって、音も匂いも揃って感じることができたとしたなら、もうこの仮想の絵世界には錯覚しきってしまい、身を置いている現実のほうが負けてしまいそう。それほどに、魅力を感じる世界ができあがっています。ばりばりのリアリティーがそこにあるわけではないんです。それに、もしも実際に図解の喫茶店へと足を運んでみたとして、そのときの印象やその体験とはまた別種だったとしても、この図解の世界はおそらく、本物からうまく大切な部分が抽出されて描かれていて、読者は端的にその場所を知れるようなつくりになっているのではないか、という気がしました。ただの案内図ではないですからね。
また、考現学(考古学ではなく考現学。現在を考える学問)という学問的見地から、現在の世界の色合いを残す意味合いがあるそうです。
本書のコラムで、「ケの日のハレ」という項があり、それを最後に紹介して終わります。
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民俗学で日常をケ、非日常をハレという。私は家風呂よりは非日常でスーパー銭湯よりは日常的な銭湯のことを“ケの日のハレ”と表現していた。それは純喫茶も同じ。(p92)
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→本書に掲載されている純喫茶の店構え、そして内装にはお店それぞれにつよい独自性がありました。調度品、小物、柱の造り、シャンデリアなどなど、工夫を凝らし、それぞれの店主による趣味やセンスが堂々とあらわれています。そうやって作られた雰囲気・空気感のなかにお客さんはくつろぎにいく。店側も全力でつくりあげた店内(世界)であるでしょうし、出すコーヒーにもこだわりがあったり、当たり前なのだろうけれど食事にも手を抜いていなかったり。そのような場所で時間を使うことは、やっぱり非日常に近い日常なのだろうな、という感覚は、本書を興味深く眺めていても感じられました。銭湯に続いて純喫茶は、愛着や親しみを感じられた上に、「ケの日のハレ」を体験できる場所のようだなあ、とあんまり喫茶店に入ったことの無い僕は、夜空の星座を見上げたような気分になって本書を閉じました。